「あの時、お母さんが倒れた時は側に

いたの?Mちゃんが居ない時

だったの?


お母さんと少しでも話が出来たの?

お父さんとは?

その夜は何処に泊まったの?



どうしてウチに来なかったの?

どうして電話して来なかったの?

ここにはいつ誰と来たの?

それまで何処に居たの?」



でも、でも、どれも聞いてはいけない

事だと私には分かっていた。

聞かない事がしかるべき事だと理解

していた。



ほんの僅かな面会時間で Mちゃんと

別れる事になりエントランスまで

送ってくれたMちゃんが 

「お菓子ありがとう!」と言い

「うん!」と私が言った。

Mちゃんが再び胸元で小さく手を振り

私もそうした。



それ以来ただの一度も Mちゃんに

会っていない。



帰りのタクシー内で今、見て来た

修道院の佇まいを思い出した。

今、会って来たMちゃんの事を思い出した。


顔を見るまで会ったらお互いに泣くの

ではないかと思っていたがそんな事は

無かった。涙は出なかった。

もしかしたらMちゃんは事件から

一度も泣いていないのかも知れないと

思った。

それは泣くよりも辛い経験をしている

という事なのかも知れないと思った。


たわい無く直ぐ泣く子もいるけど

何故か泣けない時もある。




翌月曜日、クラスの誰ひとりとして

私が Mちゃんに会いに行った事を

知らされていないのが分かった。


1時間目が終わり廊下に出た時、

先生が近寄って来た。

「元気だった?"」と聞かれ

「ハイ!」と

答えただけで会話は終わった。

そして暫くの沈黙があった。



先生は「Mちゃんは元気だった?」

とは言わず、

「元気だった?」

とだけ問い掛けて来た。


きっと先生も私と同じように聞きたい

事が山程あったと思う。



「何を話したの?お友達は出来た

みたい?不安そうだった?

お母さんの事、お父さんの事は何か

言っていた?」



でも先生は何も聞かなかった。何も...

Mちゃんに会った事で私も又、

悲しかっただろうと、辛かっただろう

と、分かってくれたのだと思う。

先生も聞かない事がしかるべき事だと

理解していたのだと思う。



「先生と行きたかった!」と言うと、

「うん!、ごめんね!」 と言い、

そう言いながら頭をポンポンと

された時、突然涙が溢れた。

次々と溢れた。




母よりずっと若い、

お姉さんのような先生が

泣き崩れそうになるのを

必死に堪えているように見えた。


先生の目に涙がユラユラしていた。