米国経済の現状は? | COTレポートの読み方

米国経済の現状は?

 米国株式市場は史上最高値を更新中ですが、ここで景気先行指標(コンファレンスボード)やISM景気指標などをみながら、足元の米国経済の動きを確認しておきましょう。


 まずは、米国の実質GDP統計から。4~6月期(確定値)については、前期比年率+3.8%となり、1~3月期に比べて伸び率が高くなっています。サブプライムローン問題が実態経済にどのように影響しているか、7~9月期の数値が注目されます。


1009米国実質GDPの推移


 米国の非金融部門の企業収益(税引利益)の推移をみると、4~6月期まで2期連続で増加していますが、前年同月比でみれば3四半期連続でマイナスとなっています。企業収益の増加基調に陰りがみられることがわかります。


1009米国企業収益の推移


 次にコンファレンスボードが算出する景気先行指標をみてみましょう。


  景気の動きに一致して変動する一致指数をみると、8月まで7カ月連続で上昇しており、足元の景気が拡大していることを示唆しています。一方で、景気の動きに先行して変動する先行指数をみると、このところ一進一退が続いており、先行きの景気については足踏みを示唆しています。


1009米国の景気総合指数


 ちなみに、先行指数に先行して動くとして注目される一致・遅行指数をみると低下トレンドが続いています。景気の先行きについては、必ずしも楽観できないと思われます。
 
1009米国の一致/遅行比率と株価


 下記はISM(全米供給管理協会)の製造業および非製造業の総合指数の推移を示したチャートです。製造業・総合指数は9月まで3カ月連続で低下しており、非製造業の総合指数も9月は低下しています。


1009ISM総合指数の推移


 ISMの製造業・総合指数は、コンファレンスボードの景気一致指数に先行して動くことが知られています。ISM製造業指数の動きから判断すれば、米国経済はさらに減速することが示唆されます。


1009ISM製造業指数と景気一致指数


 次に長短金利の動きをみてみましょう。長短金利格差の縮小が終了し、今後金利格差が拡大する可能性が高まっています。これは景気が天井をつけ、すでに景気後退局面に入った可能性を示唆しています。


1009米国の長短金利

1009米国の長短金格差の推移


 米国経済の個別の経済指標をみてみましょう。


  まず、鉱工業生産指数のチャートです。8月まで3カ月連続で上昇しており、生産活動は拡大局面が続いていることを示しています。


1009米国 鉱工業生産指数


 最後に住宅着工関連のチャートをみてみましょう。住宅投資関連の数値はいずれも低迷しています。サブプライムローン問題の影響が大きく、短期金利が低下しても、まだしばらくは減少局面が続くと思われます。


1009米国 住宅着工件数


 以上の概観からいえることは、米国経済の先行きについては必ずしも楽観できないということです。少なくとも、史上最高値を更新する米国株式市場を正当化するには、FRBによる金融緩和と世界的な金余りだけでは不十分だと筆者は感じています。




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