米国の雇用統計(8月)をどうみる?
9月7日に発表された8月の米国雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比4,000人のマイナスとなり、市場関係者の予想(+11万人程度)と大きく乖離、証券・金融市場・外国為替市場に大きなインパクトを与えました。
ここで、雇用統計の直近の推移を確認しておきましょう。
下記は失業率(軍人を除く)の推移を示したチャートです。8月は4.6%と前月比変わらず、でした。このチャートをみると失業率の低下トレンドが終わったことがうかがえます。
下記は、非農業部門の雇用者数の前月比の伸び率を示したチャートです。目盛の関係で8月の数値(マイナス4000人)が明確に読み取れないことに注意が必要です。なお、今回の発表で、6月分、7月分も下方修正されています。
筆者は米国の実質GDPをよく示す指標として、非農業雇用者数の前年比伸び率の3ヶ月平均の数値に注目しています。8月は+1.30%まで低下しており、米国経済が減速していることを示唆しています。
下記は失業保険給付件数のチャートです。直近のデータは8月31日の週まで発表されていますが、今のところ明確に増加傾向に入ったとはいえません。
今回の雇用統計だけをみて、米国経済が景気後退に陥る可能性が高まったと即断するのは危険といえるでしょう。しかし、市場関係者の多くは景気後退入りを織り込む行動をとり始めたようです。
実際に金融市場をみると、すでに0.50%以上の利下げを織り込んだ水準となっています。
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