円キャリートレードが再開? | COTレポートの読み方

円キャリートレードが再開?

 外国為替市場においては、8月21日までに「円キャリートレード(円借り取引)」の解消が終了しました。


 ポジション調整後の状況をみると、先進各国の中央銀行は短期金融市場に大量の資金供給を行い、いわゆる“流動性危機”を防止する行動をとっています。日本銀行も22日、23日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました(1カ月前までは利上げ実施が大方の予想でしたが…)。


 世界各国の金融・証券・商品・外国為替市場はいずれも落ち着きを取り戻しているようにみえます。


 先週後半の外国為替市場は、キャリートレード解消が一巡したことから、主要通貨に対して再び円安が進行しました。


 足元の状況を確認するために、8月21日時点のIMM通貨先物取引・円先物取引の投機筋(ヘッジファンドやCTAなど)のポジション動向をみてみましょう。


 8月21日時点では、1,516枚の円買い越しとなっています(前週は21,889枚の円売り越し)。円買い越しに転じたのは、2006年6月6日以来、実に63週間振りのことです。投機筋のスタンスは中立となっています。


0827シカゴ通貨先物(円)


 ドル円レートは6月22日の高値(1ドル=124.14円)から8月17日までの安値(1ドル=111.62円)までの下落幅(12.52円)に対して、24日の終値(1ドル=116.45円)は38.6%の戻り率となっています。


0827ドル円の一目均衡


 ちなみに、ユーロ、英ポンドと豪ドルの対円でのチャートをみてみましょう。


 ユーロ円相場については、7月13日の高値(1ユーロ=168.95円)から8月17日の安値(1ユーロ=149.28円)までの下落幅(19.67円)に対して、24日の終値(1ユーロ=159.26円)は50.7%の戻り率となっています。


0827ユーロ円の一目均衡表


 ポンド円相場については、7月20日の高値(1ポン=251.11円)から8月17日の安値(1ポンド=219.39円)までの下落幅(31.72円)に対して、24日の終値(1ポンド=234.54円)は47.8%の戻り率となっています。


0827英ポンド円の一目均衡表


 豪ドル円相場については、7月20日の高値(1豪ドル=107.73円)から8月17日の安値(1豪ドル=86.04円)までの下落幅(21.69円)に対して、24日の終値(1豪ドル=96.33円)は47.4%の戻り率になっています。


0827豪ドル円の一目均衡表


 クロス円通貨については概ね半値戻し達成となっています。「円キャリートレード」の解消によるパニック売りが終わった今、ヘッジファンドやCTAなどの投機筋が今後どのような行動をとるかが注目されます。




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