エイリアン、NYに現る! | Black Swan - 国際人養成所

Black Swan - 国際人養成所

日本が嫌になってきているあなた、当養成所に入所して国際人に生まれ変わりましょう!

みんなと同じ生き方に飽きてるなら、Black Swanに突然変異して一緒に世界を飛び回りませんか?

洋楽の英文フレーズ解説、英語上達のヒミツなど、国際人になるための情報満載!

以前アメンバーのJennieさんに僕も大好きなPoliceのリクエストをもらっていたんですが、なかなか歌詞解説できる曲がなかったので、Police活動停止後のStingにしてみました。

今日の曲はアメリカでもイギリスでもチャート上全くヒットした形跡はないんですが、なぜか日本も含めて世界中で多くの人が耳にしているStingの代表曲になっています。

Englishman In New York by Sting (1987)

この曲はStingが友人であるQuentin Crispというイングランド人のゲイ作家に捧げた曲です。1960年代までゲイに理解のなかった英国からアメリカに移住したCrispの「イングランド人である誇り」「ゲイである誇り」「作家としての誇り」など、自分を貫き通したことへの称賛が主題です。

実は、上で「イングランド人」と書いたのは理由があります。
この曲のタイトルには「Englishman」と入っていますが、もしイギリス(英国)という国籍を言うだけであれば通常は「British」という言葉を使います。敢えて「English」と言う場合は、かなり厳密にイングランド地方を指すことがほとんどです。
イギリスにはこの他にWales(形容詞・国籍はWelsh)、ScottlandScots/Scottish)、Northern IrelandNorthern Irish)があり、ご存知の方も多いと思いますがフットボール(サッカー)やラグビーなどはそれぞれが別の「国」としてナショナルチームを持っています。それくらいどの地域も自治・独立精神が強く、自分達の出身地にプライドを持っているんです。


それでは、英語のフレーズです。というか、今日は「イングランド男の生き方について」を英語で解説、という方が正しいかな?(笑

最初の出だしのAメロ繰り返し部分で自分がいかにイングランド人かを説明しています。

I don't drink coffee I take tea my dear
I like my toast done on one side
And you can hear it in my accent when I talk
I'm an Englishman in New York

See me walking down Fifth Avenue
A walking cane here at my side
I take it everywhere I walk
I'm an Englishman in New York

初っ端が「I don't drink coffee, I take tea」という典型的なイギリスの風習ですね。
以前一緒に仕事をした英人が日本に来て一緒に外回りをしてた時、「お、あそこにスタバ発見!ロンドンでも結構スタバ増えてきてて、俺も好きなんだ。」というので入ったらレジカウンターで速攻「A cuppa tea, please.」と注文しててぶったまげました。それ、スタバじゃなくて(逆にスタバじゃない方が)いいじゃん・・・
( ̄ー ̄;

あと、「my dear」をつけるのもイギリスっぽいところですよね?アメリカ英語だとちょっとゲイっぽく聞こえますが、イギリスでは男の人でも頻繁に「Oh, dear!」とか使います。

ここまではまー分かります。問題はここからで、次の青字部分二つがはたしてイギリス風なのかどうか全くの疑問です。
トーストを片面だけ焼くのってトースターじゃ無理ですよね?グリルやフライパンで焼かないといけませんが、English Breakfastでもそんなトースト見たことありません。あと、walking cane(ステッキ)はとっても紳士っぽいですが、これも今ではすっかり見ることはないでしょう。

思うに、この歌はCrispに捧げた歌だったので、Crispという人物がこういう人だったんだと捉える方が正解でしょう。アメリカに渡った時点でもうかなりご年配だったので、その当時はステッキを持っててトースターも普及してなくて、というのは十分あり得るからです。


次はサビの部分です。

Whoa I'm an alien
I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York

出た、エイリアン騒動。(笑
このはっきり聞こえるサビを聴いて、多くの日本人が「なんてカミングアウトしやがる!」って思ったと予想します。もうMen in Blackいたら駆除される勢いです。

この「alien」という単語は『在留外国人』とか『よそ者』という意味です。日本では仕事などで長期滞在する外国人は「Alien Registration Card(外国人登録証明書)」なるものを登録して保持しなければなりません。サンプルはこちら

今の会社のインド人達はこの「Alien」という単語に対してひどく憤りを覚えてました。やっぱり映画のイメージが定着してしまっているので、頭では分かっていても「なんでForeignerって代わりになる単語があるのにあえてAlienなんだ!」という怒りが込み上げてくるそうです。


最後に2番のAメロと、サビ・ブリッジを挟んだ3番のAメロです。

If "manners maketh man" as someone said
Then he's the hero of the day
It takes a man to suffer ignorance and smile
Be yourself no matter what they say

Takes more than combat gear to make a man
Takes more than license for a gun
Confront your enemies, avoid them when you can
A gentleman will walk but never run

最初の「manners maketh man」は『礼節が人を作る』という諺なんですが、「maketh」はtypoじゃありませんよ。この諺くらいでしか見たことありませんが、これは「makes」の古語です。
ブリッジのところでも実は同じ内容が出てきますが、個人主義のアメリカにあって謙遜や礼節を重んじるというイングランドの紳士は「浮いちゃう」んです。

それでも
It takes a man to suffer ignorance and smile
本物の男は皆に無視されたって笑っていられるのさ)
というところに、Crispのプライドと自分を貫き通す心の強さにStingが敬意を表していることが伺えます。Crispが受けた「ignorance」という仕打ちは、英国人気質というだけではなく「ゲイへの偏見」や「作品への批判」も含めたものであったことは容易に想像できます。

そして、最後に
Takes more than combat gear / license for a gun to make a man.
(戦闘用の装備や銃のライセンスがあるだけじゃ本物の男にはなれない)
というところが、武力や暴力に頼るアメリカへの強烈なアンチテーゼになっています。

It takes a man to ~」や「It takes more than ~ to make a man」という表現で「man」という単語をやたらと強調していますが、これはStingによる皮肉なんじゃないかと思います。ゲイのCrispが毅然として「男らしかった」のに、本当の男達は彼がもっていたようなプライドを持って生きているのか?という問いかけです。

これが最後のメッセージである
Be yourself no matter what they say
(他人に何を言われようと、自分は自分たれ)
に繋がっているように感じます。


またランキングが大変なことに・・・Help!
右矢印ブログランキング

こちらも引き続きよろしくお願いします。
右矢印にほんブログ村 英語ブログ 英語学習法へ にほんブログ村