◆2014年7月某誌で発表した原稿「今からのムスリムフレンドリーサービス」 | 異端のTourism Doctrine

◆2014年7月某誌で発表した原稿「今からのムスリムフレンドリーサービス」

この記事は2014/07に、私どもが某所で発表した記事を全文オリジナルのまま転載したものです。



◆今からのムスリムフレンドリーサービス



 ハラール~このところ賑やかですね~

201112月の半ば、私がはじめてイスラーム教という信仰をお持ちの方をゲストとして迎え入れるためのプラットフォーム造成の必要性を講演した日でした。


この時の会場は「判るけどまだ早い。」という空気が支配的だったことを思い出します。あれから僅か3年たらず。

ここで、インバウンド市場における当該市場への取組の経緯を眺めておきましょう。

◆インバウンド政策とイスラーム市場

観光立国推進基本法制定から10年を迎える節目の年を目前にした観光庁が号令を発したことは記憶に新しいでしょう。

ASEAN友好協力40周年事業の一つとして、イスラーム教の信仰を持たれた皆さんを市場化するとした2013年ビジットジャパンアクションプランが2012年秋、発表されました。インバウンドです。


明けて201321日、観光庁とJNTO共催の第1回ジャパンムスリムツーリズムセミナーが開催され、これを契機ににわかに存在がクローズアップされることになったのがこの処の「ムスリム」と「ハラール」と言えるでしょう。


今日では、これら訪日ムスリム観光客の利便性と安心感を向上させるため「ハラール」関連サービスの充実が不可欠との空気が広まりつつあります。同時にこれらのハラール性を担保可視化するために「ハラール認証」への取り組みも加速し、インバウンド招致勉強会やセミナーなどではハラールとは何か?、ハラールを通じた「おもてなし」まで、バラエティー豊かな勉強会などが催されています。


私自身も201112月を皮切りに、各方面でハラールとムスリムフレンドリーへの取り組みを題材としたお話しをさせて頂く機会が増えました。

2013年春以来、当該市場への取組はスピード感を伴って加速し今にちに至っています。

◆求められる慎重さと大胆さ

私の持論でもあるのですが、「ハラール」への取り組みは、「現実的」なアウトとインの制度設計をもって慎重かつ大胆に、と申しあげて参りました。


ある時、目にした観光業界誌に「ハラールにはインもアウトも無い」という趣旨の論説が紹介されていました。書かれたのは認証団体の役員さまでした。当然でしょう。個人、家族、地域、社会、国、教育、金融、経済とあまねく一切の存在を包括的に導く教えであるところのイスラームである以上、「ハラール」にインもアウトも無いというのは至極当然な話なのです。


しかし「現実」を見た時、この小さな島国日本でさえ、今日では10指を超えるハラール認証団体が存在し、輸出市場向けに耐えうる認証があり、かたや輸出市場からは門前払いを受ける認証が存在するのです。

この現実はハラールそのものを理解しがたくしているのではないでしょうか。


アウトは輸出先、進出先のルールにのっとり、郷に入れば郷に従うを旨とし、インはインの制度設計をもって馴染みやすく大胆に進める。そのために必要なのは、ハラール認証機関や被認証事業者の大同団結であり、業界団体の設立を視野に入れた取組であるべきだろうと申しあげて来ました。さもなくば、インを中心に取り組むサービス事業現場の皆さんは、何を頼りに、何を担保としてハラールに向き合えば良いのでしょう。


同時に、訪日ムスリム観光客の皆さんは何を拠り所として日本のハラールマークを信頼すれば良いのでしょう。

さまざまなハラールマークがあふれ、言葉だけが独り歩きをしている現状は、基づくべき処が置去りにされ、トレンドへ流されている様に見えてなりません。


今年の2月、HCJ国際ホテルレストランショーのトレンドセミナーでの講演を拝命した際、所長は慎重派ですね~と声をかけられたことがありました。私はむしろ急進派を自認しています。本来、基づくべき「ゲストの利益」と「事業者の利益」が置き去りにされている現状に慎重になっているに過ぎないのです。


消費者庁ですら消費者保護事業に乗り出すべき事案ではない、と声を曇らせる案件。取り組む事業者自らが、消費者保護、事業者保護、「業界」の繁栄に結びつける働きを持たせることが必要になります。


◆何に基づくべきか

サービス業事業現場(宿泊施設・飲食施設)の皆さんにお尋ねしてみましょう。皆さんの施設がハラール認証やハラールキッチン認証、ムスリムフレンドリーハラール認証、ムスリムウエルカム認証(ここに記載した認証は実際に存在するものです。)を取得した時、外国人向けの自社サイトにこれを表記しますか?と申しあげるより、表記すべきなのでしょうか。


本質的にパブリシティーの中に広く訴求すべきサービス業が、特定宗教をプレミアム化することは避けるべきなのは当然のことです。

誤解の無いように申しあげるとすれば、取組にブレーキをかけるつもりはないのです。かたよることによる機会損出を招くべきではないだろうということに過ぎません。


例えば、オートラリア、ゴールドコーストのとあるホテルの様に、パーフェクトハラールホテルをうたい、男女別プール、男女別プライベートビーチを設けた、完全にイスラーム教徒専用ホテルと化すのであればなんら問題はないでしょう。


ではここで、ハラールやムスリムフレンドリーに対しどの様に取り組むことがベストなのか~という「一つの考え方」について触れておきましょう。


Faithfully & Faithという基幹コンテンツの可視化と、派生するサブカテゴリーの可視化


Universal Standard Menu Authorize Control(USMAC)への取り組みと可視化に努め、ゲストの選択機会の利便性の向上と「担保性」の向上。

ここに紹介した考え方に基づくなら、ハラールにとどまらず、コーシャ、ヴィーガン、ソフトヴィーガン、ベジタリアンと様々な取り組みの可視化が可能になり、機会損出を抑止することにもつながるでしょう。本来的には業界団体全体において取り組んで頂きたいモデルではありますが、単一事業体においても取り組むことは容易であり、社内に「USMAC(アスマック)判定委員会」を設置することによってクオリティーコントロールを機能させることも可能です。


この場合、さまざまな認証事業者のポジションは「トレーナー」という位置づけで協力を仰ぐことから始めれば良いでしょう。

国際社会に存在する「食文化」にまつわるさまざまなトレーニングを受け、ユニバーサルスタンダードメニューへの取組を進めることが肝要ではないでしょうか。


イギリスに本社を置く、クレッセントレーティングのアジア拠点が「シンガポール」に存在します。この会社はムスリム宿泊施設の「格付け」をする会社です。いよいよ日本に参入するという話も漏れ伝わっています。


TPP交渉も大詰め、2020年にはオリンピック・パラリンピックも控え、受入れプラットフォームの構築は待ったなしです。


観光庁もこの617日観光立国実現に向けたアクションプログラム2014を発表しました。その中では「ムスリムおもてなしプロジェクト」なる「施策」も見ることが出来ます。随分と特定宗教に配慮した国だなぁ~と映るのは不本意でしょう。


 国連憲章、オリンピック憲章然りです。国際社会における「人権」は宗教・信仰も重要なファクターです。

即ち、おもてなしの基本中の基本なのです。


今のうちに無理のない、蓋然性の高いグランドデザインと汎用プラットフォームを作り込み、ジャパンスタンダードを世界に見せつける胆力が必要な局面を迎えていると言えるでしょう。


2014/07/25掲載分


今日に至るも、状況はなにも変わっておらず。。。