この10年間、景気低迷に伴う企業の経費削減が進んだ。リーマン・ショックなども相まって、オフィスビル賃料も長期下落基調が続いたが、東京、名古屋や札幌、仙台などでは賃料が上がったケースもある。
今年秋のオフィスビル賃貸料調査の数値を10年前(2001年秋)のオフィスビル賃料と比べると、仙台(仙台駅周辺)は19%、札幌(札幌 駅南口周辺)は8.3%それぞれ上昇。広島(八丁堀など)も5.3%上がった。福岡(天神周辺)を除き、地方の中心都市はこの10年で値上がりしている。 神戸は阪神大震災の影響が残っていた10年前から大きく上昇した。
大阪は10年前に比べて賃料が下落したが、中心部の北区梅田でこの数年で大型物件が相次いで完工し、需要が喚起されつつある。現在は大型の 成約が相次ぎ、空室率は大幅低下している。三鬼商事(東京・中央)によると梅田地区の空室率は11月末が8.25%で、半年前に比べ2.74ポイント改善 した。
一方、その他の地方都市では賃料が大きく下がっている。新潟が19%、金沢が17.2%、岡山が17.1%、それぞれ下落した。関東でも千葉や宇都宮の賃料が下がっている。
二極化の背景には、リーマン・ショックなどを経て企業のオフィス集約が進んだことがある。「業務効率化を狙い、企業は地方の中核都市にオフィスを集中させている」(三幸エステート=東京・中央)
県庁所在地クラスの都市から各地方の中心都市、そして東京などの大都市へ。オフィスを統合・集約する大きな流れはこの10年で加速した。「特に金融機関などで支店をより大きな都市に集約する動きが目立つ」
仙台、札幌など地方の中心都市では、人材が比較的集めやすく、東京に比べて人件費が安い点に着目し、企業が顧客対応の窓口となるコールセンター を置く事例が多く、オフィス需要につながっている。
交通インフラの整備も、大都市や地方の中心都市へのオフィス需要集中につながる。熊本市役所周辺では、10年間で賃料が14.3%下落 しているが、この1年でも5.3%下がった。今年3月の九州新幹線の全線開通で、熊本―博多間は最短33分で結ばれた。熊本から福岡へのテナントのシフト を加速させる要因となっている。福岡では新幹線開通の影響もあり天神周辺から博多駅周辺にテナントが移る例がみられる。