オフィスビル賃貸やマンション売買などの不動産取引市場で、新築志向が鮮明になってきた。東日本大震災を契機に耐震設備や電源などを備え る築年数の浅い物件への引き合いが強まっている。欧州債務問題が不動産市場の心理的な弱材料として浮上しているが、企業や消費者に定着した新築志向は、市況の下支え要因となっている。
東京都千代田区の霞が関東急ビル。2010年11月のオープン直後の入居率は約5割だったが、現在は9割近くまで上がった。震災以降に「高 台」「耐震性」やセキュリティーが評価された。「人気地区の霞が関に立地していることや新築である点が人気を集めている」
リーマン・ショック以降の賃料の長期下落で値ごろ感が生じ、移転需要が盛り上がった。ビルに高い耐震性を求める動きが拠点統合の流れと相 まって、完成から間もない大規模ビルへの引き合いにつながっている。「合併やグループ統合などに伴い、まとまった面積が必要になり、新築の大規模ビルが移 転先の候補になることが多い」
アメリカの不動産サービス会社シービー・リチャードエリス(東京・港)によると、東京で各地区を代表する大型ビルの賃貸料(成約ベース)は11年 3月末を100とした場合、9月末は築年数の浅いビルが100.4、古いビルが99.1だった。同社は「年間3ポイントの勢いで差が拡大している」と驚 く。
マンションでも「新築人気」は鮮明だ。震災以降に売り出されたマンションは、災害用物品の備蓄に加え、非常用電源、太陽光発電などが装備される場合が多く、ユーザーのニーズを取り込んでいる。
13年11月に東京都中央区晴海に完成予定の超高層マンション「ザ・パークハウス晴海タワーズ」。販売する三菱地所レジデンスは免震構造や居住者用の防災備蓄倉庫などに加え、震災後に非常用電源の能力を高めるなど災害対応力を上積みした。
災害対応の設備は現在は新築マンションの多くで標準装備となっている。このため「災害対応の設備を持った新築物件でも、設備のない震災前に建てられた同グレードの物件と価格は変わらず、お買い得感がある」
同社によると首都圏の新築マンション価格に対する中古マンション価格の比率は9月に69.2%と8月比で6.4ポイント下がり、1月と比べると18.9ポイント下がった。価格をみる限り、「新築高・中古安」はマンションでも確実に進んでいるようだ。