「中国は欧米向けの輸出が多く、先進国につられて景気が減速する懸念がある」(ニッセイ基礎研究所の高山武士研究員)。市場ではこんな見方が強まっている。
8月以降の世界株安に巻き込まれた日本株。下げの局面はざっと3段階に分かれる。
ヨーロッパ不安に動揺した海外投資家はまず、トヨタ自動車など知名度の高いグローバル企業や金融機関の株を売った。次いで欧州事業の比重が高い電機や精密などの企業へ。売りは今も続き、14日もキヤノンが半年ぶりの安値を付けた。これに最近、中国など新興国関連株が加わった。
コマツやオークマはこの一週間だけでみると約1割下落。下げは日経平均(3%)を上回る。
アジア株自体の下落も加速している。同日は台湾やマレーシアの株価が年初来安値を付けた。欧州が最大の貿易相手である中国の景気が冷え、周辺もその影響を受ける――。下げの構図は日本の機械株などと似る。
アジア諸国の景気はこれまで内需を中心に底堅いとの見方が優勢だったが、株価は変調を懸念。同じくこの一週間でみると、一部のアジア株は世界的に下げが突出する欧州株並みの下落率だ。
足元の実体経済はどうか。日本企業にはすでに事業面の影響が出始めたところもある。中国でのコマツの油圧ショベル販売台数は4カ月連続の減少。8月は38%減った。日立建機も33%減。減少は5カ月連続だ。
中国では金融引き締めを受け、上海など沿岸部で不動産工事が減少。これに欧州不安の波及懸念が加わり、「中国需要は10月には持ち直すとみ ていたが回復時期は読めなくなった」と日立建機の木川理二郎社長は話す。工作機械も「中国で受注の成約が鈍っている」(ツガミ)という。
「新興国は先進国と比べ財政など政策発動余地が残り、景気が急減速する可能性はいまのところ低い」(野村証券の木内登英チーフエコノミスト)との見方もある。海運業界ではここへきて中国向け鉄鉱石の荷動きが復調。中国景気はまだ、まだら模様の面もある。
アジア開発銀行(ADB)は14日、ヨーロッパなど先進国への輸出が鈍る懸念から今年のアジア大洋州の45カ国・地域(日本など域内先進国除く)の今年の成長率を7.5%と従来見通しより0.3ポイント引き下げた。
事業面での影響は出ていないが「(米欧に加え中国でも)閉塞感が出てきた」(NTNの鈴木泰信会長)と変調をかぎ取る経営者もある。市場も産業界も、ヨーロッパ不安がアジアなど世界景気にどこまで波及するか、警戒を強めている。