米国の連邦債務の上限引き上げに向けた与野党交渉が難航し、世界で最高の信用を誇る米国債の格下げなどに対し、市場が警戒態勢に入った。小康を保っていた世界の株価が大幅に下落。デリバティブ(金融派生商品)市場では米国債の信用保証料率が過去最高水準に上昇(信用度が低下)した。金融機関や企業には米国債離れの兆しなども出始めた。
8月2日の期限までに米議会が債務上限の上げで折り合えば緊張は和らぐ。しかし7月28日以降の採決を前に与野党は財政赤字削減の修正案など大詰めの調整を続けるが、なお予断を許さない。
27日から28日にかけ、世界株安の様相が強まった。市場推計では前週末から27日までの3日間で世界の株式時価総額は1兆ドル強減った。
米国では27日、ダウ平均が198ドル下落し、約2カ月ぶりの下げ幅を記録。底堅かった日経平均株価も28日は下げ幅が一時190円を超え、心理的な節目の1万円を大きく割り込んだ。続く欧州株も軟調に推移した。
投資家心理の不安定さを示すシカゴ・オプション取引所算出の「恐怖指数(VIX指数)」は急上昇。東日本震災後すぐの3月18日以来の高水準になった。
市場は米国債の格下げや元利払い停止の可能性を意識。特に、金融システムへの影響を懸念する。国際的な株価指数であるMSCIの業種別指数で「金融」は前週末比2.9%下落した。
代替の投資先が見あたらないことなどから、いまのところ米国債の金利に明確な影響は出ていない。ただ米国債の信用力は刻一刻と低下しつつある。信用リスクを映すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では指標性の高い米5年物国債の保証料率が28日に0.62%と2009年4月以来の高水準。目先の混乱を懸念し1年物は過去最高を更新した。
機関投資家らも万が一に備え始めた。日本の財務省の統計によると5月は米国の公債(国債、地方債、政府機関債)全体で2兆2194億円を売り越しており、単月の売越額としては過去最大となった。このうち大半が米国債とみられる。
対応は足元で加速。大手の金融機関からは米国債の値下がりに備え、「7月に入り残高を減らした」「短期での運用に切り替え始めている」などの声が強まる。
お膝元の米国も同様だ。米バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのロバート・ケリー最高経営責任者(CEO)は28日、「債務上限引き上げで合意できず市場が荒れるようなら米国債の担保としての割引率を拡大するかもしれない。現在の2%程度から例えば3%くらいに広げる」と語った。
米国では、預金のような性格を持ち元本の保護を重視するマネー・マーケット・ファンド(MMF)も、損失が発生する可能性がある米国債での運用を減らし、現金の比率を高める動きが強まっている。企業の間では金融市場の混乱で資金調達が難しくなるとの見方も増えている。