「あたりまえ」なんてない
地元の病院で、母マミーは子宮頸ガンと診断された。
マミー58歳、娘のあたしは26歳だった。
離婚してから女手ひとつであたしを育ててくれた。
我慢強くて、頑張り屋さんで、誰よりもやさしかった。
そのやさしさゆえに文句ひとつ言わなかったマミー。
あたしは、そのやさしさに甘えてばかりいたと思う。
マミーが入院して「ただいま」を言う相手がいなくなった。
部屋が暗くて、寒かった。
お風呂も沸いてないし、温かいご飯もない。
すべて、マミーがしてくれてたこと。
あたりまえだと思っていたこと、あたりまえなんかじゃなかった。
放射線と抗がん剤治療でつらいはずなのに、
それでもあたしのことを気遣ってくれたマミー。
入退院を繰り返しているうちに、一緒に買い物に行けるとか、
外食して残さず食べられるとか、
そんな些細なことがうれしいと、思えるようになっていた。
そして、およそ2年の闘病の末、マミーはこの世を去った……。
いま、家族と疎遠になってしまっている同年代の人達に伝えたい。
お父さん、お母さんがいることはあたりまえじゃないから。
病気になってからじゃ、やれること減ってしまうから。
亡くなってからじゃ、できること、ほとんどないから。
いまある「しあわせ」を大切にして。
いつ、別れても悔いの残らない毎日を過ごして欲しい。
(こころの辞典より)
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