すごーく今更ですが、トランプの議会演説について。

メディアの反応をまとめると、

The speech was "presidential" and "nationalistic”

でした。

 

Presidential は 大統領らしい という意味です。

いつも原稿から外れて、変な話をしてしまうのに、今回は原稿をしっかり、大統領らしく読めた!

とても大統領らしかった! 

という反応です。

 

私のいつも聞いている保守派ラジオは

Yes, this is our president! Did you see Democrats? This is our President!

民主党よ、みたかい?これが俺らの大統領だぜ!ちゃんとできるんだぜ!

という感じでした。

 

ちゃんと原稿読めただけで、こんなに褒められるなんて。。

 

でも、確かに今までで一番大統領っぽかったかもしれないですね。

 

もう一つの反応は

Nationalistic 国家主義的な、愛国的な

 

今回の議会演説で一番注目を集めたシーンは

トランプ就任後の10日後にイエメンで行われた軍事作戦で命を落とした兵士の死をたたえるシーン。兵士の妻が出席し、Standing Ovationを受けました。

 

Ryan's legacy is etched into eternity.  For as the Bible teaches us, there is no greater act of love than to lay down one's life for one's friends.  Ryan laid down his life for his friends, for his country, and for our freedom — we will never forget him.

ライアン(死んでしまった兵士)のレガシーは永遠に刻まれるでしょう。聖書が教えるように、この世に、友のために命を投げ出すほどの愛の行為はない。ライアンは彼の命を、友人に、国に、そして我々の自由のために捧げたー我々は彼を忘れることはありません。

 

 

複雑ですよね。

 

Navy SEALという特殊部隊に属していたのですから、エリート隊員だったのでしょう。

 

彼の父親は、就任わずか10日でこの作戦を強行したトランプを批判していました。

でも、この奥さんの気持ちもよくわかる。

せめて、彼の死が称えられ、国民の記憶に残ってくれれば、彼の死も報われるのではないかと。

でも、こんな風に称えられるより、普通に家に帰ってきてくれた方が、どれほどよかったことか。。

 

わずかですが、この議会演説に出席し、彼の死をトランプに「利用させた」として、出席した奥さんを非難する人もいました。

この場で立って拍手をしなかった民主党議員が二人ほどいたらしいのですが、

この未亡人に敬意を表さないなんて、人間として終わっている!として、激しい批判にさらされました。

この奥さんのことを、ツイッターで「Idiot おバカ」と批判したヒラリーサポーターの男性は、身元を突き止められ、解雇されました。

 

アメリカはVeteransと呼ばれる退役軍人がとても多いですし、軍人を称えずば人に非ず、的空気があります。

Veteran's Dayという日もありますし、Venteransをサポートしましょう、という寄付イベントなどもよくあります。

このシーンは退役軍人や遺族(Gold Star Familyと呼ばれます)には評判がよかったWell receivedようです。

 

もう一つ、トランプが議会演説に招いた人たち。

不法移民によって殺された人たち。

ギャングメンバーの不法移民に息子を殺された父親。

勤務中に不法移民に殺された警察官の家族。

 

国に命をささげる人たち。

軍人、警察官 Man in uniform, law enforcement

彼らに敬意を表しましょう。

そして、彼らを危険にさらす敵(テロリスト、不法移民)を憎みましょう。

私は大統領として、それらの敵から国民を守ります。

 

 

これに反対できる人はいないでしょう。

 

トランプはこの線で国をまとめようとしているUnite the country around this lineと感じました。

 

いざとなれば国に命をささげることになる軍人や警察官を批判することなんてできません。

国の命令を遂行することは彼らの任務 Duty ですから。

 

でも、国民の彼らへの敬意、感謝の念を、

彼らに命令を下す行政の責任者への敬意にすり替える、ことには注意が必要です。

海兵隊員の死には敬意を表するべきですが、彼に死をもたらした作戦の是非、そもそもの戦争の意義は問われるべきです。

 

トランプは軍人や警察官(Law enforcement communityとでもいいましょうか)に人気があります。

 

オバマ政権が厭戦的、軍縮、そして警察官に対しては、人種差別への配慮等を要求したため、

国民のLaw enforcement communityへの信頼感、というか敬意Respectが下がってしまった、といった感覚が根本にはあるようです。

 

治安維持は国家の任務の最たるものですから、

その任務にあたる人たちをまず持ち上げ、彼らへの敬意を政権への敬意につなげたい。

 

もちろん治安維持に頑張ってほしいと思います。

 

でも、どうか暴走しませんように。

 

あることないこと陰謀説をばら撒く大統領はかなり不安です。

 

Law enforcement communityへの信頼感はそもそもの法律への納得感、政権への信頼感があってこそ生まれるものだと思います。

 

Nationalistic 国家主義的、愛国的なことを否定はしません。

自国を誇りに思うこと、思えることはとても素晴らしいこと。

でも、その愛する国が、いつの間にか変質してしまっていないか、

We should keep our eyes on.

常に注意しておかないと。