本日は Martin Luther King Jr. Day というアメリカの祝日です。
キング牧師、公民権運動 Civil rights movementの指導者、黒人に対する人種差別問題の歴史に多大な影響を与えた人物、の生誕を記念して、レーガン大統領が1983年にNational Holidayとして制定したそうです。ただ、すべての州がすぐにそれに倣ったわけではなく、すべての50州の祝日となったのは2000年になってからだったとか。
彼の誕生日は1月15日なのですが、third Monday of Januaryということで、本日は16日ですが、祝日です。学校は休みだったりもしますが、ほとんどの人は仕事にいきます。アメリカは仕事も休みになる休日が本当に少ない。日本には3連休が多くうらやましい限りですが、まあ私はこちらでは働いてないので特に気にはなりません。我が子はいわゆる「保育園」的な働くお母さんが多いところに入っているので、今日も預けられます。「幼稚園」的な専業主婦家庭が多いところはお休みです。
さて、キング牧師の公民権運動が実り、公民権法が制定されたのが1964年。それまでは南部の州を中心に、公然と白人のスペースと黒人のスペースが分けられ、黒人は白人用の水飲み場で水を飲むことも、バスで白人用の席に座ることもできなかったのです。
1964年ですよ、第二次世界大戦が終わってから約20年もの間、公然と差別されていたのです。今大体30代半ばくらいの黒人の人がいたとしたら、両親が生まれたころまで「法律上の」差別「も」残っていた、ということになります。そして、両親は公民権法ができた後の混乱期を生きてきた、と。
人種差別問題は本当に難しい問題です。というか、差別問題は何差別にしろ、それが女性差別や学歴差別、であるにしろ難しい問題です。
本当に「人種」という理由だけで「正当な機会（就学、就職など）」が与えられないのは問題ですが、現代の社会においてはそれ以外の要因（成績、経歴、身なり、話し方等々）が絡んできますから。就職に失敗したからといってそれを人種差別と一概に言えるでしょうか。
私がよくきくキリスト系保守派ニュースラジオでよく聞く論理は以下のようなものです。
ー黒人大統領が誕生した国でまだ人種差別がある、という方がおかしい
ーアカデミー賞で黒人の候補がいないとOscars so white と批判するくせに、NBAやNFL（アメフト）が黒人選手だらけでも NBA so white と非難する人はいない
ー黒人が警察に殺されると大騒動で暴動が起きるが、白人が警察に殺されてもニュースにもならない。
―民主党が人種問題を支持拡大のために煽っているだけ。
つい先日、シカゴで4人の黒人の若い男女（18，9歳くらいだったかな）が白人の知的障害者の子（犯人の同級生らしい）連れ去り、F-- Trump などと言いながら、暴行を加え、しかもそれをFacebookで生中継した、という事件があり、Hate Crimeとして犯人は逮捕されました。
でも確かにこのニュース、一応CNNなんかでも報道はありましたが、大々的には報道されず、ひっそりと消えていったのです。
そのことで保守派ラジオは、被害者が黒人だったら、もう各地で暴動が起きている、と揶揄していました。そして、左翼 The left は人種差別は常に白人から黒人に向けられるもの、と捉えたがるから、今回の事件はただのバカな若者の事件、として済まそうとしている、と。
この保守派の意見、一理あると思うんですよね。そして、この論理に共感するアメリカ人はかなりたくさんいると思います。
人種問題でもう一つよく例に出されるのが、犯罪率の問題です。
黒人が刑務所に入る確率は実に白人の5倍近く。
黒人は貧困率が高いから犯罪を犯す可能性が高いのでしょうか。
その場合は人種差別の問題よりも、貧困問題、格差問題、となるような気がします。
ただ、同じ麻薬保持、などの犯罪でも白人は逮捕されずに注意だけだが、黒人だと逮捕される、との話もあるようなので、そのような差別があるとすれば、逮捕歴はその後の人生に大きな影響がありますから、それは「人種差別」として取り組む問題だと思います。
ちなみにそのような人種差別問題を Institutional racismまたはSystemic racismと言います。これがないというのが保守派、あるというのがリベラル、もしくは民主党、でしょうか。
人種ごとの世帯主の収入がこちら。Asianがなぜかトップなのが不思議ですね。
集計の方法や対象がイマイチよくわかりませんが、駐在員や日中韓などからの留学生がそのままアメリカで就職したと考えると、あり得る気もします。
ここでも黒人は最下位です。
今はみんな平等に学校に行けるし、後は自助努力、黒人の収入が少ないのも、よって犯罪を犯し刑務所に行くのも自業自得、と考えている人は多いと思いますし、私も共感するところはあります。
今日はMartin Luther King Jr. Day、ということで、キング牧師とも交流があり、同じく公民権運動のリーダであった、現在は上院議員のJohn Lewisがマイアミでしたスピーチが放映されていました。このJohn Lewis、先日トランプをNot legitimate正当性がない、と批判し、トランプから「All-talk no action」の政治家、とBackfireされました。公民権運動で逮捕され、暴行を受け、警察犬には噛まれ、、などなど苦節の公民権運動のヒーロー（Civil rights icon）に向かってなんてことを！ということで、John Lewisに対する反応だけが理由ではありませんが、20人もの民主党の議員がトランプの大統領就任式には出席しないと表明する事態になっています。
ちなみに、私は彼のトランプへの批判、ロシアの介入を理由にしていましたが、は理屈が通らないと思うし、政治家はきちんとトランプの勝利を認め、就任式にも参加するべきだと思います。政治家は政治を実際に動かす力を与えられているのだから、嫌いでも関係を築いて影響を与えていこうと努力するべき。
脱線しましたが、彼がスピーチで語ったのは、とにかく「Read Read Read, go to school」、「And stand up to injustice」ということでした。
彼は州の大学に行きたかったのに、黒人ということで入学を許されず、入学を求める経緯でキング牧師たちと知り合い、活動に入っていったそうです。
彼の言う通り、現代の人種差別に打ち勝つには勉強、しかないと思う。もうすべての不平等を人種のせいにできる段階は過ぎている。「黒人」ということで教育を受けられない、という時代が過ぎてしまったので、これからはなんとか勉強し、社会の階段を上っていくしかない。
アメリカは異常に大学が高いし、学区によって教育の質が全然違う（アメリカの小学校には教科書がないらしく、学べるかどうかは先生次第。よい先生はよい学区に集まるので、みなよい学区に住もうとする、よってその地域の不動産は高い）、など政府ができることもまだまだあるはずです。
日本でもそうですが、貧困は連鎖する。よほど強い意志と、出会いに恵まれない限り、そこから這い上がるのは簡単なことではないでしょう。
でも、オバマ大統領やミシェル大統領夫人という最高のロールモデルを得たのだから、彼らに恥じぬよう、なんとか這い上がってほしいな、と思います。
最後にキング牧師の有名すぎる一節を。
これも覚えて損はない名スピーチ。ほら、ここにも出てきた、独立宣言の一節が。
I have a dream that one day this nation will rise up and live out the true meaning of its creed: "We hold these truths to be self-evident, that all men are created equal."
I have a dream that one day on the red hills of Georgia, the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.