精神保健福祉センターとは、精神保健福祉法の第1条、「精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図る」ために、都道府県(政令指定都市を含む)が必ず設置しなければならない機関です。センターは本法の第6条に照らし合わせて、図中の矢印に記載されている業務を行わなければならないとしています。
地域住民に対しては、こころの健康相談、精神医療に関する相談、社会復帰に関する相談、アルコール・薬物・思春期・認知症等の特定相談を行います。保健所や市町村福祉事務所の行政機関に対しては、複雑又は困難な事例について相談援助指導を行う立場にあります。
ではこれらのことを念頭に置きながら、条文をみていきましょう!
第2章 精神保健福祉センター(第6条~第8条)
センターは、昭和40年の精神衛生法改正によって法定化されたもので、「精神衛生センター」として設置されたのが始まりです。その後は昭和62年の精神保健法で「精神保健センター」、平成7年の精神保健福祉法で「精神保健福祉センター」と名称が改められています。なお、現在は設置が義務ですが、平成14年4月1日以前は任意設置でした。
(精神保健福祉センター)
第6条 都道府県は、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための機関(以下「精神保健福祉センター」という。)を置くものとする(※1)。
(国の補助(※2))
第7条 国は、都道府県が前条の施設を設置したときは、政令の定めるところにより、その設置に要する経費については二分の一、その運営に要する経費については三分の一を補助する。
(条例への委任(※3))
第8条 この法律に定めるもののほか、精神保健福祉センターに関して必要な事項は、条例で定める。
(※1)置くものとする…センターの設置については、平成14年4月1日以前は任意的な規定とされていましたが、これは、昭和40年改正の前から設置されていた「精神衛生相談所」を安易に「精神衛生センター」として看板を塗り替えるという弊害を避ける経緯からでした。しかしながら近年、社会の複雑化から精神障害や心の健康等に関する問題が増加し、より専門的な相談を行う機関の重要性が増大していることから、精神保健福祉センターはすべての都道府県および政令指定都市に設けられるべき機関であると考えられるようになります。
(※2)国の補助…精神保健福祉センターの設置及び運営に要する経費には国庫補助があると規定しました。
(※3)条例への委任…精神保健福祉センターは、既存の施設や機関(地方公共団体)をできるだけ有効活用する観点から、その名称にはこだわらなくてよく、当該機能を有する機関を置くことで足りるとしています。
精神保健福祉センターに関する規定はこの3つの条文から成っていますが、前述したセンターの業務内容が第6条第二項に明記されています。
第6条の2 精神保健福祉センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、及び調査研究を行うこと。
二 精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行うこと。
三 精神医療審査会の事務を行うこと。
四 第45条第一項の申請に対する決定及び障害者自立支援法第52条第一項 に規定する支給認定(精神障害者に係るものに限る。)に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと。
五 障害者自立支援法第22条第二項 又は第51条の7第二項 の規定により、市町村が同法第22条第一項 又は第51条の7第一項 の支給の要否の決定を行うに当たり意見を述べること。
六 障害者自立支援法第26条第一項 又は第51条の11 の規定により、市町村に対し技術的事項についての協力その他必要な援助を行うこと。
全6項目からなるセンターの業務内容ですが、障害者自立支援法や本法の他の条文にまたがって記載されている事項があり、なかなか見難いかと思います。一つずつ解していくと……
一⇒地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進、社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加促進のための援助に至るまで、都道府県(政令指定都市)における精神保健福祉に関する「総合的技術センター」として、地域精神保健福祉活動推進の中核機能を備えなければなりません。
二⇒一の目標を達成するために、保健所及び市町村が行う精神保健福祉業務が効果的に展開されるよう、積極的に技術指導及び技術援助を行うほか、その他の医療、福祉、労働、教育、産業等の精神保健福祉関係諸機関と緊密な連携をとることが必要です。
三⇒平成11年改正によって精神医療審査会の事務を行うことが規定されました。精神医療審査会の事務規定については本法第12条~第15条に記載があり、その独自性を保障すること及び専門性を持った職員がその事務を取り扱うことが望ましいとされます。よって都道府県(政令指定都市)本庁とは別組織である、専門性を有する精神保健福祉センターが当該事務を行うこととしました。
四⇒精神障害者保健福祉手帳の交付の際の判定業務や障害者自立支援法に基づく自立支援医療(精神通院医療)の支給認定業務を行うこととされています。
五⇒平成17年改正において、障害者自立支援法に規定されている「介護給付費等」の支給要否決定に関して、精神保健福祉センターが市町村へ意見を述べることができると規定されています。
六⇒障害者自立支援法に規定されている「介護給付費等」の支給要否決定に関して、精神保健福祉センターが市町村へ必要な援助ができると規定されています。