今季 洋|星の断片 -2ページ目

今季 洋|星の断片

屋号は「アトリエえんどうまめ」 / かつては、造形教室の先生と絵を描く人 / 20年くらい、星とタロット / ゆるゆるっと、絵本をつくる人へ移行中 / 『サビアンアート占星術』全13巻 Kindle発売中  Kindle Unlimited対応✨

高台のベンチで、オルはひとりのおじいさんの隣に座りました。

 

眼下には、海が広がっています。川が、ゆっくりとその海へ流れ込んでいくのが見えました。

 

「川は海へ行くんだね。」

オルがそう言うと、おじいさんは静かにうなずきました。

 

「でも、そのあと、どこへ行くか知ってるかい。」

オルは首をかしげました。

 

おじいさんは、海を見つめながら、ゆっくりと話し始めました。太陽に温められた水が、水蒸気になり、空へ昇り、雲になり、また雨になって、どこかの土地に降り注ぐ——そんな話でした。

 

「生まれ変わるんだ」

海を見つめながら、おじいさんが言いました。

 

オルは、しばらく黙って、その言葉を胸の中で転がしていました。

 

 

 

 

 

 

🌊 オル #20「はじまりとおわり」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

オルは、深い森の入口に立っていました。

道はあります。でも、その先はよく見えません。

 

「どこへ行くんだい?」

森の奥から、声がしました。振り返ると、そこには黒いオオカミがいました。

 

 

「どこへ行くんだい?」

そう聞かれて、オルは言葉に詰まりました。

 

どこへ行くのだろう。

それがオルには、わからなかったのです。

 

オオカミは、しばらく黙っていました。それから、静かに口を開きました。

「川は、地図を持っていない。」

 

「え?」

「だけど流れる。海を知っているから。」

 

オルは、その言葉の意味を、すぐには理解できませんでした。

 

 

 

🐺 オル #19「地図のない旅」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

市場には、色とりどりの果物が並んでいました。

 

赤い果実。黄色い果実。丸い果実。細長い果実。まるで宝石のようでした。

 

オルは、その中の一つをじっと見つめていました。

 

「気になるかい。」

果物を売っているおばあさんが、声をかけました。

 

「きれいだから。」

オルはそう答えました。

 

おばあさんは笑いました。

「でもね、果物は食べるものだよ。」

 

そう言って、おばあさんは棚から一つの果実を取り、オルに差し出しました。

 

 

 

 

 

 

 

🍎 オル #18「楽園の果実」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

池のほとりのベンチで、オルはひとり、少女のことを考えていました。

 

気づくと、隣に誰かが座っていました。年配の男性でした。

 

「変なんだ。」

オルは、ぽつりと言いました。

 

隣に座っていた見知らぬ人は、

「そうかい。」

とだけ答えました。

 

それ以上、何も聞きませんでした。ただ、しばらく、二人で同じ池を眺めていました。

 

やがて、その人が、静かに口を開きました。

「本命って知ってるかい。」

 

オルは首をかしげました。

「ほ・ん・め・い?」

 

その人は、池の向こうに光る水面を見つめながら、ゆっくりと話し始めました。

 

 

 

 

 

 

🌞 オル #17「かぐわしい異性のおはなし」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

オルと羊は、いつもの本屋にいました。

 

棚を眺めていたオルは、ふと、一冊の本に目を留めました。

『箱の中のひつじ』

 

「羊だ。」

オルはそう言って、その本を手に取りました。

 

少し古い本でした。表紙を開くと、紙の匂いがしました。オルは静かに、ページをめくり始めました。

 

隣で、羊がその様子を見ていました。

 

その日、思いがけないことが起きました。

でも、不思議と、驚きませんでした。

それは、とても、自然なことのようにも感じられたのです。

 

 

 

 

 

 

🐑 オル #16「箱の中のひつじ」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

オルと羊は、道を歩いていました。

 

道ばたのフェンスに、風船カズラが揺れていました。薄緑色の小さな袋が、いくつも風に揺られています。

 

オルは、その袋をぼんやり見ていました。

 

 

「何を見てるの?」

羊に聞かれて、オルは少し考えてから、こう答えました。

 

「ふくらんでいるもの。」

 

風船カズラの袋の中には、まだ誰も知らない何かが、静かに守られています。中を割ってみれば、小さな種が入っているのでしょう。でも、今はまだ、その姿を見せてはくれません。

 

守られながらも、のびのびと呼吸ができる場所。そんな優しい「ふくらみ」を、風船カズラは持っているのかもしれません。

 

オルはしばらく、その揺れる袋を眺めていました。

 

まだ見えない。まだ分からない。でも、何かがそこにいる。

 

🎈 オル #15「ふくらんでいるもの」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

 

オルと羊は、丘の上にいました。

 

「どうして世界には、似たようなお話がたくさんあるの?」

オルが尋ねました。

 

悪者をやっつける話。恋をする話。旅に出る話。国も時代も違うのに、なぜか同じような形をした物語が、あちこちにあります。

 

羊は少し考えて、こう言いました。

「人間は、似ているのかもね。」

 

オルは足元の葉っぱを一枚拾いました。

「でも、これと同じ葉っぱは、どこにもないよ。」

 

「うん。似ているのに、同じじゃない。」

羊はそう言って、遠くを見つめました。

 

オルも、同じ方向を見ました。

そのとき、遠くの景色が、少しずつ揺らぎ始めました。

 

 

🐋 オル #14「ステレオタイプ」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

 

実は少し前、庭番日誌にこんなことを書きました。

 

『崖の上のポニョ』も『マレフィセント』も『アナと雪の女王』も、当たり前だと思われてきた物語のパターン(ステレオタイプ)を、静かに書き換えていく作品です。

 

同じような形をした物語(ステレオタイプ)が世界中にあるのは、きっと人間に共通する何かがあるから。

 

でも、時代によって、その物語は書き換えられていきます。そして、一人ひとりが生きる物語も、誰ひとりとして同じではありません。

 

似ているけれど、同じじゃない。オル#14は、そのことを、丘の上でオルが見つめる不思議な光景を通して描いています。

 

🌿 庭番日誌「神話が書き換えられるとき」も、よろしければあわせて読んでみてくださいね。

 

 

オルと羊は、広い荒野にいました。

 

目の前には、巨大なピラミッドがありました。とても大きくて、頂上は雲にかくれて見えません。

 

「これは何?」オルが聞きました。

「昔、誰かがすごく頑張って作ったものだよ。」羊が答えました。

 

風が吹くたび、ピラミッドの石が、ころり、ころりと落ちていきました。長い時間をかけて積み上げたものが、長い時間をかけて、少しずつ、元へ戻っていくようでした。

 

石が崩れて土になったところに、小さな緑が顔を出していました。雑草でした。

 

その雑草のカーペットの上で、女の子たちがままごとをしていました。葉っぱがお皿になり、花がごちそうになり、石ころがお金になっていました。

 

 

 

「どっちが本物だと思う?」

羊にそう聞かれて、オルは答えられませんでした。

 

大きなピラミッドと、雑草の上のままごと。どちらも、誰かが本気で作り上げた、大切な世界でした。

終わるものがある。でも、終わるだけではない。

 

何かが終わると、何かが始まる。草が生えるみたいに。

 

 

 

 

実はこの物語を書いているとき、ふと気づいたことがありました。

 

これは13番目のお話です。タロットカードの大アルカナで13番目にあたるのは「死神」。これは、恐いカードだと思われがちですが、実は「終わりと再生」という大切な意味があります。

 

このお話にあった「終わるものがある。でも、終わるだけではない」というテーマと、偶然にも重なっていました。

 

そしてこの気づきから、「オルのものがたり」全21話が、偶然にも、タロットの大アルカナと重なっていることに気が付きました。

 

そのあたりの詳しい話は、🌿庭番日誌「オルは、なぜ21話だったのだろう」に綴っています。よろしければ、あわせて読んでみてくださいね。

 

 

オルと羊は、夕暮れの海辺にいました。

空はオレンジ色に染まり、波の音が静かに響いています。

 

そのとき、海の向こうで何かが光りました。

赤、金、白、乳白色——それらがひとつになって、大きなうずを巻いています。

 

「あれは何?」オルが聞きました。

羊は黙って、うずを見つめていました。

 

 

オルも、もう一度、海の向こうを見ました。

すると、胸の奥が、少しずつ熱くなってくるのを感じました。

 

どくん。

どくん。

 

それが何なのか、オルにはまだわかりません。でも、確かに何かが、体の中で動いていました。

 

生まれる前から、ずっとそこにあったもの。それを、今、初めて感じているのかもしれません。

 

🔥 オル #12「温海の記憶」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。

 

 

 

 

 

 

この『オルのものがたり』は、「🌱オル ~共創の庭~」の一部です。

ご興味のある方は、こちらの正面玄関から、それぞれの小道を歩いてみてください🌸

 

 

 

オルと羊は、海の見える丘にいました。

 

丘の上では、何人かの人たちが踊っていました。ゆっくりと、手を動かし、腰を揺らし、足を運び、空と海のあいだで静かに踊っていました。

 

 

「何をしているの?」羊が聞きました。

 

「見てる。」オルは言いました。

 

踊っている人たちは、誰かと競っているようには見えませんでした。前に出ようとしている人も、勝とうとしている人もいません。

 

でも、不思議でした。みんな光って見えました。

 

「どうしてだろう。誰も一番になろうとしていないのに。」

 

オルがそう言うと、羊は海を見ながら言いました。

 

「太陽みたい?」

 

🌺 オル #11「フラの太陽」、よろしければ続きを読んでみてくださいね。