【創作大賞2026】オルのものがたり 最終話 #21「雨の日の傘のおはなし」|人とAIが紡ぐ物語 | 今季 洋|星の断片

今季 洋|星の断片

アトリエえんどうまめという屋号で、星・色彩・AI生成表現などを通して、時代の風景を言葉とともに綴っています。

雨の降る夜でした。

バスの窓を、雨粒が流れていました。

 

オルの隣には、スーツを着た男の人が座っていました。少しお酒が入っているようでした。

 

男の人は、足元に置いたビニール傘をじっと見ていました。

しばらくして、ぽつりと言いました。

 

「変だよなあ。」

 

オルは黙っていました。

 

 

男の人は続けました。

「昔はさ。ビニール傘なんて嫌だったんだ。」

 

窓の外では、街の灯りが流れていきました。

 

「安っぽいし。すぐ壊れるし。誰かに持っていかれるし。」

 

男の人は笑いました。

「ちゃんとした傘が欲しかったんだよ。」

 

バスが揺れました。雨は降り続いていました。

 

「若いころはさ。ちゃんとした人生も欲しかった。」

男の人は窓の外を見ました。

 

「立派な仕事とか。立派な肩書とか。立派な何か。そんなものばかり追いかけてた。」

男の人は少し黙りました。

 

「でもなあ。」

そう言って、足元の傘を持ち上げました。

 

骨は少し曲がっていました。透明だったビニールは、少し黄ばんでいました。持ち手にも傷がありました。

 

 

 

☔ オル #21「雨の日の傘のおはなし」、いよいよ最終話になりました。

よろしければ続きを読んでみてくださいね。