昨日と一昨日にサントリーホールでシューマンの『4本のホルンとオーケストラの為のコンチェルトシュトゥック』がN響のメンバーとオーケストラで演奏され、多くのホルン奏者やホルンを勉強してる学生などが聴きに行ったと思われます。
(僕は残念ながら行くことが出来なかったので後日、TV放送を観ます😭)

勿論、ホルンに限った事ではありませんが
『会場で生の音と響きを聴く事』が一番の
『ご馳走』であり、学ぶ人にとっては
『刺激と教材』になりますね。

やはり聴きに行きたかったな・・・

最近は読響のメンバーとオーケストラでもこの曲が演奏され、TVでも放映されていました。

素敵な『生のホルンの音と響きを体感する事』が、世の中に戻ってきたような気がします。

良い(と本人が感じる)音やフレーズや音楽の流れ方などは、実際に多くの演奏に触れないと自分の『好きな音・目指したい音』は見つかりません。

そして、その人の音と自分の出す音は違いますが、目指して練習やデータを取ったり、時には真似をしてみたり(笑)して『近づいて行く』訳ですが、その目指したい人そのものにはなれないので、同じ音にはなりません。
だからと言って、『自分は悪い音だ』と直ぐに結論づけてしまうのは勿体無いし、危険だとさえ思います。自分の持つ『音(声)は自分しかない大切なもの』ですから。

僕はレッスンで自分の生徒には『音色』については殆ど触れません。
ただ、楽曲や練習曲(それもまた楽曲ですね)で、この部分は優しく語りかける場所?
声を荒げる場所?堂々と演説する場所?
悲しい事を打ち明ける場所?等
さまざまな『語り口調』の変化で音色は充分に変化を始めて行くと思います。

タンギングの種類や息の量はその為の道具。
細かい音程はそれから取り組んでも遅くないと[僕は]考えています。

今週の学校のレッスンで、お弟子の1人が
W.A.Mozartの協奏曲第三番を持って来ました。
来月の外部コンクールと学内の実技試験で演奏しますが、カデンツァ(1人で自由に演奏して良い部分)があるので
「ある意味作曲だけど、色んな人の演奏を聴いて、これまで良いなと思ったところを五線紙に書きだしててみよう」と
アドバイスしました。
(ある程度作成したとの事なので来週のレッスン時に聴かせてもらい、少し整理します)

そのためにお弟子は多くのホルン奏者のMozartの演奏(CDやYouTube)を聴いてきました。
名前を挙げてもらい、沢山の一流奏者の名前が出てきました。

その結果、やはり本人から出てくる音そのものが変わってきているし、音楽の推進力
(僕は『音楽を歩かせる』と表現することが多いです)も
フレーズの目標点も見える演奏に変わってきていました。

元々、このお弟子は練習量そのものも多いのですが、吹く練習即ちアウトプットと聴く練習インプットの必要性も理解し始めているのだなと思いました。

楽曲についてのアドバイスを終えた後に、少し技術的な事の質問がありました。

ある部分で上手く出来る時と出来ない時があると。

出来ない時の原因を(出来ればその日のうちに)明確にしたい事は本人の性格からも良く分かりますから、敢えて出来ない方のやり方(パターン)を吹いてもらい、
僕もそのパターンを模してみました。
で、次に『その真逆』をやってみた。
打率は格段に上がりました。

でも本人は「それでも上手く行かない時が何度かある」と、納得してくれません。

勿論、気持ちは分かります。

僕も若い頃は『ミストーン=不合格→死』
のように考えていました(笑)

質問内容を変えてみました。

僕「体調や演奏コンディションは毎日変わるよね?前日にやった練習や合奏授業などでトータルで吹いていた時間と内容、さらには食べたご飯や睡眠時間によって」
お弟子「そうですね。変わります」

僕「今夜、ご飯は何が食べたい?」
お弟子「う~ん、◯◯◯」

僕「おお、良いね!僕も好物だ。では明日の晩ごはんは何が食べたい」
お弟子「・・・判りません。明日にならないと💦」

ここなんです。明日食べたいものが解らない
(旅行や友達との約束で、前もって食べに出掛ける物が決まってる時もありますが)
と同じく演奏のコンディションが少しずつ変わるのは、人間なので『当たり前』だと思う事。
それが楽器の演奏だけを毎日毎回同じようにするのは少し『不健康』ではないかなと僕は考えています。

どうしても『自分に対する否定』してしまいがちな日本人。

自分の音を好きになる為のレッスン・アドバイス

その為にも色んな奏者の音楽(その人が読んだ楽譜を音にするための研究の発表)を聴く事。

で、
♪全体的に好きな音楽作りの人。
♪全体的に自分が『良いなぁ』と思う音質で演奏をしている人。
♪部分的に表現(言葉遣い)の好きな人。
などなど・・・

料理に例えるとすれば・・・
多くのラーメン屋さんやカレー屋さんがありますが、所謂『行列の出来る人気店』であっても自分の好みとは違う場合もあるし、好きな味のお店であったとしても体調で美味しさの感じ方が違う時もあります。

いずれにせよ、多くの種類のお店や自分で作る味を体験しないと『好きな(嫌いな)味』はいつまでも解らぬまま。

危険なのは「あそこ美味しくなかった」と他人に吹聴する(他人のその言葉を聞く)事。

その場合は「要らぬ情報だなぁ・・」程度にしておきましょう(笑)

長々と書いてしまいましたが、
『色んなタイプの演奏を聴こう』
ホルンだけでなく、声楽や弦楽器やピアノやオルガンやジャズやポピュラーや民族音楽にも沢山の楽しさがありますよね。

そして、
『自分の音を常に好きであり続けよう』
音楽学校の学生は授業後やレッスンというインプットが定期的にあり、自分に多くの人がアドバイスや意見を出してくる。
聞いていくうちに自己否定が少しずつ始まってしまう事もあります。
それで、知らぬうちに自分が出したい音から離れ、ムリして『他人が良いと言ってる音』に向かってしまい調子を崩す事にもなります。

まさに僕がそうでした・・・

自分の音(と近くに居る人の音)を
いつも認めてあげましょう~

音楽が好きなのならば!