食べかけのショートケーキが

崩れそうになっている

その姿を美しく感じる僕は

写真を撮らずに黙って見つめる

誕生日の木偶の坊だ

 

何もかも特別であるはずのその日に

思案に暮れるようになったのはいつからか

満開の花が散る刹那の侘しさは

恋人が閉めた扉の音に似ている

不快な気持ちなどはない

 

昨日急に会社を辞めた新入社員の意志

他人事のように流れる時間の中で

交差点で響くクラクションが

この街に代弁している気がした

誰かの誕生日で成り立つ世界なのに

祝福の声は広い海の小さな波紋のまま

 

苺が皿に飛び込もうとしている

その光景に重なる

ひとつの旅立ちを見た

ひとつの抵抗を見た

添い寝して眠った幼い記憶に住む

生暖かいぬくもりに触れた

 

その手で残りのケーキを

ひと口で頬張ってみせた

胸騒ぎが確かにする

この小さな木偶の坊が

どんな生き様をしようとも

誕生日は変える事は出来ない