桐箪笥に含まれた僅かな水分が
閉め切った部屋の中の空気に滞留している
くすんだ光が窓の隙見から滑り込み
賑やかな夏の余韻に浸る
霜の取れたコップに気の抜けたコーラ
ただ甘くなっただけのその匂いが
遠い海を漂う思い出の残り香になる
重たいカーテンを勢い良く開けると
我が物顔で弾む埃の舞いが
寂寥感のある黄昏の景色に応えた時
涼しくなった風を吸い込めば
細胞が拒絶する様に小さく震える
ここで見合わせた時計の針の位置に
秋を覚えた瞬間があった
それは今が初めてではなく
古い写真を抱き上げてからばら撒く様に
記憶の中をもう一人の自分が歩いている
疲労困憊の旅行バッグを引き寄せて
徐に中を覗いてみると
くたびれた洗濯物が眠っていた
十分な休息を得た洗濯機に放り込むと
空っぽの冷蔵庫が卑しい電気音を奏でる
明日渡すお土産を整理しながら
日常に戻った夕食を口に運ぶと
現実に還らぬと願う夏の終わりに出会う
銀杏並木が色付き始める夏の終わりに出会う

