水郷に辺りに咲く紫陽花を見つめて
繋いだ手の優しさの隙間に吹く風に
ひとひらの自由が行く宛を探し出した
もうすぐ豪華客船が動き始める港
苦虫を嚙み潰した様な葡萄酒と
発行しすぎたチーズをつまみ
船長の私生活とはほど遠い航海へ
心はイルカの如く飛び跳ねてみせた
忘れ時の宴に聖母像は決まって踊り出す
温かいパンの上を溶け出すバターの気持ち
柔らかく波の揺れを泳ぐその瞬間は
出逢いの日の恋の輝きそのものだった
外へ出て、本物の暗闇に轟く大海の潮
夢中になった夜の接吻の記憶と
点滅した愛の寂寥の想いより
儚い世界の存在を初めて知る
適度な船酔いで目覚めた朝の光は眩しく
珈琲の香りに頭痛の音頭は終わりを告げる
ここで喜怒哀楽だけじゃ足りない事を学び
錨は空を突き刺し、舵は海を制している
月日を経ても漂流は続き
孤独は人の心を弄ぶものと嘆く
海鳥の群れも、魚の群れも
空や海という名の付く自由を持っている
悲しみの瘡蓋を剝がしながら
言葉は純情とすれ違い始める
穏やかな漣と水平線の向こうに
革命が起こる未来をそっと夢見ている
見た事もない圧巻の夕陽に
照れ隠し出来ていない水面の褐色の輝き
言葉を失くした思い出に塗る釉薬
静寂は永遠の為には必須な空間
辿り着いた街は故郷に少し似た
人懐っこい笑顔らしい声色の響き
乗組員の出先の酔いに戸惑いながら
口に合う物を求め彷徨い歩く
私はここで、旅の疲れが、
扉の重さが、言葉の尾鰭が、
涙の意味が、君の後ろ姿が、
瞼の裏に棲みついている事を知る
翌朝の太陽は宝石並みに煌めき
焦燥に駆られるが如く帰路に就く
崖の上に立つ幾多の恋の屍を見た
投げ捨てられ散る薔薇の花束を見た
望遠鏡を使わずに現れそうな地平線
美しい経験などしなくても
聖者に解答を求めなくても
運命はまるで聞く耳を持っちゃいない
剛体の心で船は悪天候にもめげず
近道に気を取られる事もなく
二人の愛の理想を演じていると
狂おしいくらい涙を流して見上げた星空
星の名を云えない不器用さが
骨の髄に神妙に響き渡り
厚顔無恥な日々の倦怠にまで
寄り添う事を誓うのである
水郷の辺りで鳴くカラスを横目に
繋いだ手の優しさの隙間を縫う覚悟で
長い航海の果てを知り尽くす船を見送った
その時の、憎々しいほど豪快な船長の笑顔よ!

