入口に掲げた暖簾が

過ぎ行く風の旋律で

僕に話しかけてくる

老舗食堂の程良く色褪せた姿は

若作りする街並みに

品のある憂いのまま佇んでいた

その優しさは故郷への想いか

ゆらゆら ゆらゆらと 揺れる

 

隣にあった薬局は

去年 閉店してしまった

その隣の呉服店は

看板だけを残し微笑む

高層ビルの窓から見る遠い空と

反射するぼやけた僕の顔は

その想いを汲み取れただろうか

 

黄昏の帰り道

近代文化の食事の匂いと

流行歌が犇めき合う交差点で

家族で食堂の暖簾を潜る姿を想像する

何の変哲もない明日の休日

子供たちを連れ出してみよう

喜んでくれるだろうか

期待と不安が暖簾の様に

ゆらゆら ゆらゆらと 揺れる