知らない言語の羅列
記憶の中を探し回りながら
辿り着いた意味を見つめ
見慣れない港に停泊する
船の揺れに似た筆圧に
彼と過ごした日々の思い出を重ねる
母国を離れて
もう十数年になると
この街の静けさや口調まで
心地良くなるものだ
それでもふとした時
自分の中に母国が
どのくらい残っているか
確かめる瞬間があるんだ
笑っていたり 泣いていたり
決して悲しくはないんだけど
私は少し湿った紙質の中に
ここにはない空気と
彼が流したであろう涙を感じた
同封してある写真には
港の景色と
家族の生き生きとした姿が映る
彼の住む街にも
何の変哲もない暮らしが
笑顔が 泣き声が 夢が 失望が
存在するのがわかる
今晩 不機嫌だった私の娘が
そこに歩いていても
不思議じゃないくらい
窓を開けると
昼間の喧騒に疲れた小さな闇がある
彼との青春の記憶に
浸りすぎないよう怖気づきながら
真っ白な便箋に近況を
母国語で綴り始める

