幼い頃の想起の中
駆け回った向日葵畑で
兄の背中を追いかけた理由は
憧れの気持ちだけだった
妹は母の近況を気遣い
遠くに住む私に連絡をくれる
その声を聴く度に故郷の記憶が
心の中で花を咲かそうとしている
私は手のひらに種を隠していたみたいだ
父に似た涙を零した時に芽吹いて
年々上昇する気温と共に
幾つもの蕾が広がっていた
兄は家族を連れて
今年は故郷で集おうと言っている
私の妻も大賛成だが
生憎 娘が大学受験の年で
迂闊には誘えない
(年頃の娘は気難しいのも理由の一つ)
私は毎年 庭に向日葵を植えている
夏になると花を咲かせ
縁取られた空に顔を上げる
その姿に何度も励まされ
若い頃 憧れだけで彷徨った
高層ビルの畑を歩いている
古い手紙を読み漁っていると
顔よりも大きな向日葵畑で笑う
家族写真を見つけた
「絶対映える向日葵じゃん」
驚く娘の顔は心に花を咲かせた
翌日 脇目も振らず
故郷の空に向かう航空券を三枚購入し
手のひらで静かに握りしめた

