新しい舗装の小さなひび割れ
その隙間から突き出る雑草を見つける
数十メートル先には
一所懸命に雑草を刈り取る人達がいる
花壇には明日にも咲きそうな花の蕾
私は生涯で地球一周分は歩いたはずだが
どの旅先でも雑草に出会う
いとも簡単にあの硬いコンクリートを貫き
空に向かって風を感じ
光を浴びながら生きているのに
摘んだ事は一度もない
学生時代に校庭で抜いた時には
邪険に扱った記憶さえある
午後から山奥で山菜取りをする
春にはタラの芽、フキノトウ、
ゼンマイ、ワラビ、ウド
初夏にはタケノコ、秋にはキノコも取る
ここら辺の雑草は
他の植物と同様に従順に生きる
良く観察すると
とても穏やかな表情にも見える
帰り道、歩道には雑草の姿は全て消えていた
強い生命力は都会では短命に終わってしまうようだ
その物語がどんな性質の内容なのか
私のような人間に問う術など見当たらない
花を摘む人は
その花を花瓶に飾り楽しむのだろう
草を摘む人は
その命を大事に食して楽しむのだろう
雑草に恩恵がないと言い切った瞬間
多様な生物や土壌が憤りを覚える
雑草を摘む人が沢山現れたなら
泣き出す生物が五万といるんだと理解し始めれば
深くなった暗闇が夜露を弾き出した
風が強く吹いている、地球のざわめきのようだ
私は良心の呵責に苛まれたまま深い眠りに落ちた
夢の中で草原で寝そべっていた少年時代に遡る
友達の蹴ったサッカーボールが我が物顔で転がる
大人ぶってしたスライディングを
雑草が私の皮膚を怪我しないように守ってくれた
夏休みの香りで目が覚めた朝
引き戻された日常の流れに乗り歩道を歩くと
雑草の新芽が隙間から顔を出していた
私は地球二周分の距離を歩き終えた日に
背丈まで伸びたその雑草を摘む人になりたい

