あなたが去った部屋に

短針のない時計が廻っている

二十四時間あるはずの一日が

刻まれないままで

 

壁一面が夕日の色に染まるとき

綺麗な思い出が駆けめぐる

秒針のように音を立てながら

長針は淡々と一つずつ進む

六十数えれば孤独な夜だ

 

朝日が昇ればカレンダーがめくれる

悲しんでいる顔もまた歳を重ねる

コーヒーカップは机に挨拶した

 

時計の短針だけ買い替えようと思う

いっそのこと色も形も奇抜なデザインで

カタログを見て想像力を掻き立てている顔が

過去に捕らわれているみたいで嫌いになった

 

新しい時計を眺めていると

その神々しさに魅かれてしまう

傷一つないという輝きと響きで

真新しい日々を歩んでゆけそうだ

 

でも心は拒んでいて

秒針と長針は無言で戦っている

 

私たちがこの感情で廻り続けていても

笑顔が遠くなるだけなんだ

 

修理する覚悟を決めて時計を外したとき

積もった埃で出たくしゃみの数は

あなたを忘れるまでの日数

色褪せた壁紙は

あなたと過ごした思い出の色

時計の裏で保たれた白い部分は

互いに許し合った未来の余白