【昨日のビール】
ロング缶:2本
レギュラー缶:1本
芋焼酎ロック:5杯
【昨日の実績】
自転車:×
筋トレ:×
お菓子断ち:×
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2025年1月13日の月曜日。
この日は成人式で祝日であり、三連休の最終日でもあった。前日、飲み放題、食べ放題の天国と言っても過言ではない中華料理屋でT川氏、Lotusさんとでデカ盛り新年会を開催した。いつもなら一軒目が終わると、もう一軒だけイキマスカ?なんて話になるのだが、この日はなんと17時から飲み始めて21時には帰路につくという奇跡のような、そして非常に健康的な飲み会になったのだ。
食べた料理と飲んだ酒の量は健康的かどうかは分からないが、飲んでいるうちにグルグルと酔いがまわり、ご機嫌になった私はなんとなく思い描いていた構想を口に出した。
「明日、羽田空港まで自転車で行きませんか?ポタリングでゆっくり多摩川沿いを走りましょうよ。きっと気持ちいいですよ」
既に全員ご機嫌の大酒飲みオジサンたちは即刻快諾で一致団結「ぜひ行きましょう!」という話で決まった。とりあえず9時集合ということにしてその日は別れたのだ。
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翌朝、前日は早寝したので早起きした。時計は7時前である。念のため昨日の約束がアルコール依存による幻覚ではなかったことを確かめるべく、グループLINEで確認を入れた。
「本日の二日酔い解消ポタリングに参加される方はいますでしょうか?」
するとT川氏、Lotusさん両名から参加するという返事が来た。良かった、まだアルコール依存も軽症のようだ。羽田ポタリングは決行である。
目的地は羽田空港の手前にある「穴守稲荷神社旧一の鳥居」と呼ばれる場所だ。多摩川サイクリングロード、通称「多摩サイ」の起点と言われる場所であり、昨年の走り初めで変態先輩と行ったところである。なぜ羽田空港付近に鳥居があるかという理由は以下に詳しい。
目的地は我が家から距離にして約40キロ。結構なロングライドになるが、ゆっくり行けば大丈夫だろう。しかし季節は真冬である。寒さ対策を怠ってはいけない。とりあえずみんなにLINEで連絡した。
自転車に長時間乗っているとどうしても指先や足先が冷たくなる。私は末端冷え性なので特に冷える。なのでつま先に小さなカイロを貼るようにしているのだ。これで靴の中はコタツ状態でポカポカなのだ。このことと、首元から侵入する風を防ぐためにネックウォーマーもあると良いということをLINEで共有した。
予定通り9時集合で場所は多摩川左岸にある公園近くに決定した。我が家から自転車で15分もかからない場所である。間に合うようにすべての準備を整えて、さあ出かけよう!と、思ったら、、、
ない、ない!靴が無いではないか!自転車専用のビンディングシューズのことだ。他のみんなに合わせて普通の靴で行こうかと思っていたが、前日と前々日に体を動かし無理をしたようで膝やらアキレス腱やらが打ち身ではないか?と思うくらい痛くてパンパンになっている。なので今日はビンディングシューズにしておこうと思ったのだが、それがないのだ。靴箱の中は5回くらい見直したけどない。ベランダに置いてるかな?と思って見に行くがない。とにかく見当たらないのだ。そこで私は思った。妻だ、妻が勝手に整理してどこか私が分からない場所にしまったのだな。クソーッ!そう思い込んだ私は一気に頭に血が上った。
「自転車用の靴がない!どこにしまったの?待ち合わせの時間に遅刻した!」
仕事で出かけてしまっている妻にLINEで文句を伝える。するとすぐに返事が来た。
「なにそれ?知らない、触ってないよ。なんか、洗面所で見たような気がするけど、、、」
エッ?何ともトンチンカンな返事が返ってきた。ハラワタをにえたぎらせながら鼻息を荒げる私。エエィッ、もういい!もうどう考えても待ち合わせには間に合わない時間だ。クソーッ。
いったん冷静になって玄関を見渡した。すると壁に見慣れないシューズ入れがぶら下がっているではないか。これだっ!手に取って中を見てみると、あった!あったぞ!あれ?もしかして私が整理した時に自分でここに置いたのかな?2つあるシューズのうち、普段は履かない方だったので使ったのはずいぶん前の事である。記憶がおぼろげだし、もし自分でしまったとなると先ほど妻に送ったLINEはケンカを売るような内容である。どうしよう、、、
まあいい、時間、時間だ。待ち合わせに間に合わないぞ!気持ちを切り替えてシューズを履いたらニュージョニーくんに跨り家を飛び出した。Lotusさんから「先行して出発している」という連絡があったのでまずはT川氏と待ち合わせだ。途中の道をブッ飛ばして時速200キロのスピードを出したら2分で着いた。嘘だ。2分遅刻で到着である。

まずは待ってくれていたT川氏の愛車とパチリ。
とりあえず、Lotusさんを追いかけますか。この日も天気は最高、自転車日和である。この時はね、、、
遠くに見えるのは真白な綿帽子をかぶった富士山である。実物はもっと大きくて美しく見える。
先行するLotusさんになかなか追いつけないのが気になるが、最高の景色を楽しみながらT川氏とペダルを漕いだ。こうやって走るのは先日、彼がロードバイクを購入した時以来である。
「稲城大橋を過ぎたあたりを走っている」という連絡がLotusさんから入った。それからしばらく走っていると、かなり前方に特徴のあるサファリハットをかぶってクロモリのランドナ―を操る人影が見えた。
「あ、Lotusさんだ」
声を落としてそう囁くと、T川氏も笑って頷いた。気づかれないようにコッソリと、しかしスピードを上げながらLotusさんの後ろにつけた。
「やっと追いつきましたよ!」
少し驚いた様子だったが、ニッコリ笑顔のLotusさん。
「意外と早かったですねー、結構飛ばしましたね」
ペダルを漕ぎながら挨拶をして、昨日の飲み会の事などを話して笑った。
自転車に乗って遠くへ行く。素敵な景色を堪能しながらゆったりのんびりと、バカ話などしながら。これは変態先輩たちと一緒に走るパパ活とはまた違う楽しいサイクリングだ。そのことをなんとなく懐かしむ自分がいるのに気がついた。
それは小学生のころ、仲間と集まって唯一の長距離移動手段である自転車に乗り、遠くへ行った思い出と重なっているのだ。小学校の校庭から見える緑の山の方向を指さして「今日はあそこに行こうぜ」と誰かが言った。もしかすると私だったかもしれない。「あんなところまで本当に行けるのか?」半分不安になりながらも、しかしこの仲間と一緒だったらなんとかなるだろうし、それよりなによりそこへ行って山の上から今我々がいる小学校の校庭を見下ろしたいという冒険心の方が強かった。
今考えると実は大した距離を走っていなかったと思い返すのだが当時は大冒険だった。みんなで山に登り、さっき出発した自分たちの学校を見下ろして感動していた。子供のくせにみんな無言でいろいろなことを考えていた気がする。目的を達成し暗くなってから家に帰ると母親に怒られたが何とも言えない満足感があった。そして次の日、学校に行って冒険仲間と集まり、別の友達にその冒険で出くわした道中の面白おかしい話を誇らしげにした記憶がよみがえる。
「こんな感じで走るのなんて、まさしく我らは小学生ですね」
なんて3人で笑いながら多摩川河口へ向かって走り続けた。
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あれ?事件だ、これは事件発生ですよ!私が興奮して言った。高速道路が上を走る立体交差の向こう側にパトカーが2台、赤色灯を回しながらとまっているのが見えた。警官が数人、川岸に降りて何やら探しているのが見える。
「もしかして本当に事件ですね」
自転車を止めてしばらく様子を見た。
けたたましいサイレンを鳴らして、どんどんと緊急自動車が集まって来る。
あのあたりに警官や救急隊員が集まり出したぞ。
これはただ事ではないということが分かった。
なんだか映画で見るような光景が目の前に広がり驚いていたが、騒動の原因は予想した通り残念なもののようだった。
「行きましょうか」
せっかくの楽しいサイクリングの時間がもったいない。3人で再びペダルを漕ぎ始めた。
漕ぎ始めたのは良いが、ここからが大変だった。コースを知ったかぶりした私が選んだ道は延々と続く砂利道だったのである。ガタゴトとハンドルを取られながら走る長距離のダートコースは精神的にも体力的にも辛かった。
フーッ、とりあえず砂利道は抜けたぞ。

多摩川の川面をバックに、それいけズッコケ大酒飲みたちの愛車が勢ぞろいだ。カックイイ!
武蔵小杉の摩天楼は美しい富士山を隠しているようで少し腹立たしかった。
途中、第一目的地の止め神社で初詣でだ。江戸の将軍様がこの近所で落馬しそうになったのだが、この神社のご加護で落ちるのを止めた、というのが止め神社と言われる由来だそうだ。それがいつの間にか、受験の神様となり、落ちるのを止める神社で有名になったそうである。今年、中学三年生になる娘をもつLotusさんと私は受験の祈願もしっかりしておいた。
あと、我々のボケも止めてくれるらしい。ありがたやー。
「河原橋」すぐ近くを旧東海道が通っているのだが、それに関係するものかな?
六郷水門は歴史の重みを感じさせる建造物だ。
そして到着しました、ゴールである羽田の大鳥居。天気が良くて最高のサイクリングになった。お疲れ様ー。
ニュー・ジョニーくん、カックイイ!
ズッコケ大酒飲みを乗せてきた愛車たちも、しっかり休みたまえ。
去年、私がここへ走り初めでやって来たときは羽田空港で痛ましい大事故が起きた直後だった。空港の近くまで行くと、まだジェット燃料の匂いと焼けた焦げ臭い空気が漂っていた、という話を自慢げに話した。するとT川氏が即座にこう言うのである。
「昨日も全く同じ話してたよ。この酔っぱらいめ」
クソーッ、お恥ずかしい!
Lotusさんのランドナ―は丸石エンペラー、カックイイ。あ、そういえばT川氏が乗っているGiantのContend ARという車種名をこの前調べたんだった。教えとかないとな。
C「T川氏、Contend ARのARはオールロードの略らしいよ」
私が博学さを自慢げに話すとT川氏がこう言った。
T「それも全く同じ話を昨日してた。このアル中ハイマーめ」
C「。。。」
さて、ゆっくり休んだのでそろそろ帰りますか。
しかしここからが地獄だった。ここに来るまでは全く気にならなかったのだが帰り始めると強い向かい風がビュンビュン吹いているのだ。もしかすると来るときは追い風で気づかなかったのかもしれない。この河川敷で吹く向かい風たるや拷問のような試練を与える。過去に何度か味わったことがあるが、もうこれは完全なヤクザ、いわゆる極めて辛い道、略して極道なのだ。クソーッ!
漕いでも漕いでも進まないズッコケ大酒飲み達は涙で目を潤ませ鼻水を垂らしながら白眼を剥いて今日のサイクリングを恨んだ。誰が企画したんだ?あ、ワタシだ。クソーッ!疲労がたまる両足を鞭打ち、ついには止まって転げてしまいそうな速度で進む。
とりあえず行きがけに辛かった砂利道を回避するためにサガン鳥栖からウガンダ共和国へ、あ、左岸から右岸へ。
まだまだ先は長い。いったん休憩しましょう。
心は少年に返った、それいけズッコケ大酒飲み3人の影が多摩川の方に向かって伸びる。
良い写真だ。
おそらく初めて80キロを超えるロングライドを経験するT川氏が、この向かい風のせいで自転車を嫌いにならないといいなーなどとぼんやり考えた。
さて、体力も多少回復したので走り出しましょう。相変わらず行く手を阻む強い向かい風は手を緩めることがなかった。ゆっくり、ゆっくりと重いペダルを漕いで進む。姿勢を低くして少しでも風の抵抗が和らぐポジションを探しながら進んでいると異変に気付いた。後ろと振り返るとT川氏の姿が見えないのだ。さては風に飛ばされて多摩川に落ちたのだな。しかたない、先を急ごう。じゃなかった、ちょっと止まって待ちますか。
2、3分待ったがやって来るのは知らない自転車乗りばかりだ。心配になってLINEを見てみる。
「チェーンがからまりました。先に行ってもらって大丈夫です」
あらら、そうだったか。じゃあ、仕方ないので先を急ぎましょう。じゃなかった、とりあえず戻ってみますね。Lotusさんにそう告げてニュージョニーくんを走らせた。今度は追い風だ。ヒャッホイ!
あらー、大変だったねT川号、大丈夫かい?そう尋ねると、今直ったところだそうだ。良かった。振り返るとLotusさんも戻ってきていた。よし、ここからリスタートだ。
さすがLotusさんは我々よりも自転車乗りの経験がかなり長い先輩である。向かい風ながらも力強くペダルを漕ぐペースが落ちない。我々を引っ張って行ってくれるポジションについた。
エッチラオッチラどうにか頑張って前に進み、道がなくなる右岸から左岸へと渡る頃にはいくらか風もおさまって来た。いよいよ旅のフィナーレである。
今朝、集合場所に決めていたところで解散することにした。
T川氏はここからあとちょっと頑張らなくてはいけない。無事に帰宅できますように。Lotusさんと私は15分ほどで帰宅できる距離である。Lotusさんは右に、私は左に橋をわたり、そしてT川氏はまっすぐその橋を越えていく。3人がそれぞれ別の方向に分かれるクロスロード。なんとなく、映画「スタンドバイミー」の映像と音楽が頭の中で流れた。これでみんなと会えなくなることなど絶対にないのだが、楽しかった旅の終わりがなんとなく寂しく感じられた。
さあ、明日は仕事だ。みんな頑張りましょう。頑張ったらまた集まって旨い酒をたらふく飲みましょうね。この、辛く長い試練を乗り越えたサイクリングの後に飲むビールの味は、きっと歴史に残るうまさですよ!
グヒヒ。
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「ただいまー」
ご機嫌で帰宅した私を、申し訳なそうな顔で妻が迎えた。
「あれ、どうしたの?」
「実はね、今朝やり取りした自転車のビンディングシューズがなかった話だけど、実はしまったのは私なの。靴と鍵の字を勘違いして読んじゃった。ごめん!」
朝のひと騒動はやっぱり妻の仕業だったのだ。良かった、こっちはアル中ハイマーではなかったのである。
かくして、それいけズッコケ大酒飲み達の真冬の大冒険は静かに幕を閉じたのだった。
メシツブ、メシツブ。
Lotusさんもこの話を記事にしているのでぜひご一読を。
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自転車は少年のころの気持ちをよみがえらせてくれる乗り物だ
ビールをこよなく愛する皆さま
今夜はその余韻に浸ろうと思う
であるからして
やっぱり今宵も
キンキンに冷えたビールで
乾杯ッ!
なのである
ムフフフフ。