【昨日のビール】
大ジョッキ:2杯
大瓶:3本
レギュラー缶:2本
目覚めたらソファーの上だった。
遮光カーテンに閉ざされたリビングには、その隙間から外の世界の眩しい日差しが直線になって差し込んでいる。
時間は分からない。
静かなのでまだ早いだろう。
気分は悪くないが、頭はフラフラだ。
飲み過ぎた日の翌日によくある軽い二日酔いの感覚が強くでている。
冷蔵庫からよく冷えたミネラルウォーターを取り出し、ゴクゴクと流し込んでやっと本格的に目覚めた。
テーブルの上に置いてある栓の空いた缶ビールに気付く。
2本のうち片方は半分ほど残ったままだった。
クソーッ!
おおいに後悔した。
ツマミも食べ残しが多くある。
モッタイナイ!!
昨夜はもっと飲むつもりだったが最初に報告したような量のものであった。
多いか少ないかは判断が難しい。
どちらにしても残した缶ビール以外は後悔していないのだが。
いやぁ、やはり5日ぶりのビールは身に心に沁み渡る。
最強のアイテムを手に入れた気分だ。
ゲームはやらないのだが、ゼルダの伝説2まではやった。
昨夜、学生時代からの友人と私の家の近くで飲む約束をしていたのだが、仕事の都合で1時間ほど遅れるという連絡があった。
今夜は1時間待つか、次回に流すかという選択だったがもちろん流すという選択肢は持ち合わせていない。
私がアナタの都合の良い場所へ行こうではないですか!
行きます!
行かせてください!
という事で1時間ほど電車に揺られて賑やかな街、立川にやって来た。
過去に何度もその友人と飲んだ街である。
ここには私の大好きなアーティストが訪れた店がある。
立川のハードロックカフェとでも言おうか。
大好きというよりは私にとってはもうアイドルだ!
我らのアイドル。
私のオタクな趣味は飲酒くらいで、あまりアイドルなどには興味ないのだが、その世界には何人ものアイドルが存在する。
私にとって。
その世界とはこの世界であり、どの世界かというとみんなの世界だ。
その世界でのアイドルを挙げるとキリがない。
そう。
この人ですな。
ルイ・ヴィトンだ。
あ、ルイ・ヨシダ。
吉田類氏だ。
※写真は酒場放浪記撮影時のモノ
目指す店は、大衆酒蔵「ふじ」である。
20時の少し前、最初は店に私1人で行き、あとから友人が合流する段取りにした。
金曜日の夜、正に華金20時前後はサラリーマンにとってのゴールデンタイム。
駅を降りて店までの道すがら、ビールの神様に席が空いている事だけをお祈りしながら少し早足で歩いた。
横断歩道を渡っていると、大型トラックがスピードを緩めずに私の方へやってきた。
マズい、と思ったが時すでに遅し。
そのまま轢かれてしまった。
もちろん嘘だが。
酔っ払ったオッサン72歳といったところか。
自転車でフラフラ私の方へ寄ってきて、ぶつかる!と思ったら90度の角度で私が歩く方の反対方向にスーッと消えていった。
良い酒に酔ってご機嫌だったようだ。
目指す店、「ふじ」が見えてきた。
店の前にはなにやら人が並んでいるように見える。
人気店のゴールデンタイムだからしょうがないか、と思いながらも微かな期待を胸にそのままズンズンと歩いた。
店の前までやって来ると並んでいた人は歩道でタバコを吸っていただけのようだった。
ヤッタネ。
店を覗くとちょうどあと2、3人は入れますよ、といった具合の混みようだ。
ツイテルね。
あーノッテルね。
白地に墨で富士山の絵の下に「ふじ」とひらがなで書かれた店の暖簾をくぐる。
「2人ですけど大丈夫ですか?1人は少し遅れてきます」
「カウンターへどーぞー」
笑顔が素敵な店員の女の子が、ちょうど2つ空いている席の椅子へと案内してくれた。
程よい大きさの店内は入り口から見渡すことができる。
店の中央に厨房があり、それを囲むようにカウンターがグルリと並ぶ。
入り口側には通路を挟んで座敷もある。
案内されたカウンター席の両隣には先客がいたのだが、各々スーッと飲み物や椅子の位置などを私達のために空けてくれた。
なんともたまらない人情酒場といった感じだ。
「どうもすみません」
私は優しいその両隣の先客達に挨拶をして椅子に座った。
「瓶ビールください」
椅子に腰掛けると、正々堂々と低い声で即座にお願いした。
生ビールは友人との乾杯にとっておく。
ここの瓶ビールは大瓶しかなく、そして大好きなサッポロラガーなのだ。
また今日も逢えたんだよね。
アナタと。
僕にはもうアナタしかないんだ。
そこに座ってくれ
脚を組んでくれ
黄昏に顔を向けてくれ
その指でネギをかき揚げでくれ〜♪
夜が来ても朝が来ても
秋が来ても飽きは来ない
僕にはもうアナタしかない
ビール〜!!
※by ケンジ•サワダ ダーリング
(今夜もアラフィフのワタシ達へ)
このブログで最も重要な瓶ビールの場面に戻る。
ちょうど良い具合に、ちょっとだけ白くかすんだような、日本の正しい飲み屋のコップにトクトクトクトクとサッポロラガーを注ぐ。
プチプチと弾ける白い泡を3秒ほど凝視。
持っていた右手の大瓶をカウンターに置き、左手のコップを右手に持ち替える。
目の高さにコップをかざす。
ここで一旦、ナマ唾ゴクリ&一礼。
唇にそっと引き寄せると、目を閉じて眉間に皺を寄せグビリ、グビリ、グビリと3回で飲み干す。
口いっぱいに広がる柔らかな苦味。
キュッと口を閉じて逃がさないように舌の奥でゆっくりと味わう。
ンガーッ!プハーッ!
アナタに一生ついて行きます!
ジュリ〜!!
あ、ビール〜!
「ご注文はどうされますか?もうお一方来られてからにしますか」
あ、失礼。
鶏の唐揚げ下さい。
ここの名物と言って良いだろう。
必ずハーフを勧められる鶏の唐揚げ。
量が多いのだ。
フォレストガンプばりに一個食べてしまったのだがパチリ。
いやぁ〜、やはり5日ぶりのビールは無敵なのだ。
五臓六腑に沁み渡るという表現を地でやっている感覚。
お分かりいただけるだろうか。
そのうち友人とも合流した。
待ってましたよ!
アナタではなく生ビール!
もちろん、大ジョッキお願いします!
友人と最近の状況を報告し合う。
思えば前回会ったのもこの店だった。
6月の初めだったので5ヶ月ぶり。
気の合う友とは何を話しても華が咲く。
刺身の盛り合わせ2人前を適当にお願いした。
マグロとブリとナントカ。
非常に旨かった。
写真はない。
サバの塩焼き。
肉厚のプリプリ鯖もホクホクと非常に旨かった。
写真はない。
その他、旨い酒と旨い肴を気の合う友とたくさん呑んで喰らった。
写真はない。
しかし最強だ。
とにかく酔っ払ったので写真は全くないのだ。
だから昨日の帰りの事もあまり覚えていない。
お会計もほぼ覚えていない。
サイフからお札が減っていたので払ったのは確かだろう。
電車の中ではもちろん正しい泥酔客として眠っていたが、奇跡的に最寄駅直前で目覚めた。
ふらつく足取りで自宅に向かう途中、なぜかただの道端の写真を2枚撮っていた。
そこではなく店で撮れ!
謎の酔っぱらいである。
コンビニに寄り、帰ってからの飲み直し?の缶ビール2本とツマミを買ったのはよく覚えている。
まだ呑むのか?
そして無事に帰宅した。
家族は寝静まっているようだ。
ソファーに腰掛けて缶ビールをプシッと空けてからサラミなどをかじったところまでで記憶は消えた。
そして冒頭のシーンへと続く。
今夜も思う存分に呑むしかないですな。
だってしょうがないじゃない。
土曜日なんだもの。
もちろん浴びる。
二日連続で。
ビールをこよなく愛する人々とともに。
乾杯!
ムフフフフ。