【昨日のビール】
ロング缶:3本
芋焼酎ロック:3杯

昨夜は平日ルールであるロング缶ビール2本までという制限を破った。
後悔は全くない。
これには訳があるからだ。



毎晩のように息子と娘は習い事に出かけて帰りが遅くなる。

娘はさすがに心配なので妻が車で送り迎えをしている。
妻が用事などで行けない時は一緒に習い事に行っている友達の母親などが交代で対応している。
この送迎システムの中でもお父さんは排除されている。
年頃の娘はムズカシイのだ。


息子はかなり遠くのサッカーグラウンドまで自転車で通っている。
片道30分くらいかかるのだが、こちらは男の子なので送迎はしない。
雨の日など親の時間が合うときくらいは送り迎えに行く程度である。


息子の平日の練習は週に3日あり、終了時間は19時45分がほとんどだ。
それから片付けなどしてなんだかんだで帰宅するのは早くても20時50分頃
遅い時は21時20分などど日によってバラバラになる。
帰り道は仲間とコンビニに寄って買い食いなども楽しんでいるようだ。

子供達にはスマートフォンを持たせているので、GPSアプリをみるとどこにいるかがすぐにわかる。


時間帯によっては私も一緒に食事を始めることができるので、そんな日は帰りを待って喉から手が出るほど始めたい晩酌を我慢することがある。


ある日、晩酌のアテを準備し終わる頃だった。

そろそろ帰ってくる頃かとスマートフォンのアプリを見てみると息子はまだコンビニにいる。

時間は20時50分
そこのコンビニからは15分もあれば帰宅するので少し待つことにする。

21時
スマートフォンを見るとまだコンビニだ。
イライラ。

LINEに「何時に帰る?」と打ち込む。
しかし既読にならない。
コノヤロウ。

21時15分
スマートフォンを見るとまだコンビニだ。
もう我慢の限界である。
帰ってきたらコロス!
大人げない。

21時25分
やっとスマートフォンアプリにある息子のアイコンが自宅方向へと動き出した。
まあいい、今日はちょっと遅いけどこんな日もあるさ。

21時40分
「ただいまー」
最近声変わりした低い声で息子が帰ってきた。

「おい!遅くなるなら何時になるかくらい連絡入れろ!こっちは晩飯我慢して待ってるんだ!」
私はこちらの一方的な都合による怒りに満ち満ちた、低い声で唸るようにそう言った。

「ごめん」
息子は申し訳なさそうに謝る。

そうか、まぁ謝る気持ちがあるならいいだろう。
私は仏様のような笑顔に戻り、息子を食卓へと呼んだ。

「さぁ、練習でお腹もすいているだろうから夕飯食べなさい」


お待ちかねのビールの時間だ!!
私はプシッと缶ビールを開ける。
この瞬間がまた良いですな。

散々待たされて、我慢していた最初の一杯である。
息子と乾杯すれば嬉しさももひとしおだ。

すると、息子がこう言った。

「あ、俺コンビニでパンとおにぎり食って来たから夕飯いらない」


「。。。」
沈黙。

「おい、いまなんつった?」
沈黙。

「ア~、アンダ チミワ~~!!」
炸裂。

あまりの怒りに顔全体がこわばり、言葉が志村けんになっていることに気付かなかった。
嘘だが。

このクソガキ。
チミの帰りをず~っと待って、我慢して我慢した結果がこれかっ!えっ?

「ケッ!もう飲むぞっ!」
怒りを収めることができず、私はゴクゴクとビールを一気に飲み始める。

「お前、今度からなー、帰りが21時過ぎる時は先に連絡入れろ!わかったな!」
普段息子のことを「お前」などと言わないので、息子は私が相当怒っていることをすぐに悟った表情に変わった。


父親の一方的な「酒を早く飲みたい」という勝手な欲望から来る怒りに対してである。
可哀そうに。

「オッケー、分かった。ごめん。今度からそうするわ」
息子は素直に私の怒りを受け入れた。
ならば許そうではないか。


そして昨日である。
なんと息子の帰りは連絡なしの22時20分だった。

しかし私も仕事など他の用事も重なり、遅い時間の晩酌になることを予想していたので息子の帰りの時間は気にもしていなかった。


もろもろの用事を済ませ、本日の晩酌のアテなど準備していると時計は22時を回る頃だった。
妻と娘はとっくに夕食を終えていた。

「そういえば息子はまだ帰ってないな」

スマートフォンを見ると息子のGPSアイコンはちょうどコンビニから出て動き始めた時だった。
私はあまり気にもとめず最初から一人で乾杯する気だった晩酌を始めた。


ロング缶のビール2本目に突入していた頃であった。
息子が帰ってきた。

「ただいまー」
相変わらず低い声で帰宅したことを知らせる。

息子はそそくさと家の中を進みリビングで晩酌している私の顔をチラッと横目で見るとそのまま一気にキッチンの方へ早歩きで向かっていった。
おかしな奴だ。

息子は冷蔵庫を開けると私の命の次に大切なビールであるロング缶を手に取り、プシッと開けた。
おい!何をする?

気でも狂ったか?

すると息子はにっこり百万ドルの天使の微笑み、甘えた声でこう言った。

「パパ〜、今日はたっぷり飲んじゃって~!」
ん?

帰りが遅くなることを連絡していなかった息子は、私を気分よく酔わせて約束破りという犯罪を帳消しにしようという作戦に出ていたのだ。
さすがだな。我が息子!

「おぉ、そうか。それならば仕方ないな~。もう一本ビール飲んじゃうか~」

はち切れんばかりの笑顔でまんまと息子の作戦に乗ってしまった私は超ご機嫌で平日ルールのビール制限を破ったのであった。
メデタシ、メデタシ。


くだらない話にお付き合いいただき、本日もありがとうございます。

そうですねー。では、今夜もビールで乾杯と行きますか。
ムフフフ。