恋だね。初恋。
独身の人や、これから初めて子供が生まれる人などに『子供って可愛いですか?』
と聞かれたら、いつもそう答えている。
初めて大好きだったあの子とデートして、ハラハラドキドキするのアノ気持だ。

息子が誕生するであろうその時。
私に与えられた俗にいう産休という時間は4日間だった。
予定通り生まれると、寒い寒い2月の木曜日がその日になる。


かみさんは3週間前から新潟の実家に帰っていた。
私は木曜日と金曜日に休みをとっていた。
土曜日と日曜日を合わせて4日間が産休だ。
水曜日の仕事が終わったら、速攻で東京駅から上越新幹線に乗った。
何だかふわふわした気持ちだったのを覚えている。

そして、息子はきちんと次の日の木曜日に私達の前に現れた。
高かったけど奮発して個室の病室にした。
そのひとつの部屋に、初めて家族3人が顔を合わせた。
かみさんは笑顔で泣きじゃくりながらわが子を抱きしめていた。
私も込み上げてくるものを我慢せずに頬を濡らしながら顔をくしゃくしゃにして笑った。
本当に幸せな瞬間だった。
自分の存在、全てを私達に委ねて、すやすやと寝息をたてたり、か弱いうぶ声をあげたりと、私達にとって息子は、何もかも新鮮な出来事を運んできた。
いきなりオムツも替えなくてはならなかった。
ウンチの処理だってやればできるもんだなと、我ながら感心した。

私達がミルクを飲ませないと、この子は生きていけないんだ。生命の全てを私達が預かっている。責任感というと大げさだがそのような気持ちを初めて感じた時でもあった。


信じられないような素敵な毎日があっというまに過ぎ、そして、そのつらい日曜日はやって来た。


忘れもしない、その日は新潟に大雪が降って、新幹線のダイヤも大幅に乱れていた。
できることならこのままずっと一緒にいたい。
でも、今夜東京へ帰らなくてはいけない。

わが子を時間ギリギリまで抱きかかえて、ついに別れの時を迎えた。

恋だな。初恋。

胸の奥がキュンとなる、ずっとずっと心の奥にしまわれていた大切な想いが、
ひょっこりと顔を出した38歳の2月だったんですわ。

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