*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。
前回は、
H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)
の訳出過程で、原文の一節と、監(閑)訳者の初校段階での修正訳を提示した(文脈については、「前回記事」参照):
原文:Long accustomed to regard Danzig as the indicator of Germany’s intention towards themselves, the Poles . . .
監(閑)訳者の初校段階での修正訳:長年ダンチヒへのドイツ側の対応の仕方で以てドイツ側が自国に対して如何なる意図を有しているかを測るための目印としてきたポーランドは、・・・
その上で、「原文と訳文を対比して、訳文の中でおかしいと思う単語を指摘せよ。その上で、それをどのような単語に置き換えたらよいか、適当な単語を挙げてみよ」との設問を発しておいた。
正直に告白するが、筆者(山本)は、監訳者が修正した後の初校を見た時には、今回下線を引いた部分に気が付かず、再校の段階でやっと気が付いた次第である。
この「目印」なる言葉、この文脈でのindicatorの訳として適当であろうか?
ここでは、どうやら監訳者は原文を読んだようであるが、余りに直訳に過ぎる。
小生は「試金石」と訳していた。因みに、上記の一節の後には「ドイツとの対ソ同盟関係の樹立と東方で代替地を得ることと引き換えにダンチヒをドイツに返還するという魅力的とも言える提案を退け、返還交渉に応じることはなかった」という箇所が続く。これを加えて読んでみた場合、いずれが適訳であろうか?
この文脈で「目印」という単語を使うことの適否と併せて、読者の判断に委ねる。