三が日も終了したので、本日から定番の記事投稿を始めます。

 

*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照してください。

 

織田信長の妹お市の方と浅井長政の間に生まれた三人の娘の長女は俗に“淀君”と呼ばれ、幼名(もしくは通名)は茶々であったとされる

(*以下、文献本文からの引用部分を除き“茶々”もしくは“淀の方”とする。なお、お市の方については、「二著物語:お市の方(その1)」「二著物語:お市の方(その2)」「二著物語:お市の方(その3)」を参照して下さい。父浅井長政が信長に攻められて小谷城が陥ちた際には母や妹二人と共に信長の許に送られ、母親お市の再婚相手である柴田勝家が羽柴秀吉に敗れた折には、北ノ庄城から秀吉の許に引き取られる。その後、秀吉の側室となって二人の男子を産むが、大阪夏の陣で二人目の男の子である秀頼と共に最期を遂げる。

 

早乙女貢『淀君』、講談社、1995

は、タイトルを見ただけなら、歴史小説のような印象を受けるが、実際はポルノ小説と言ってよい。

 

物語は、北ノ庄城が陥ちるところから始まるが、柴田勝家が自刃した後で、後を追おうとしたお市の方が、いきなり乱入してきた男にレイ●されるという意想外の展開となる。

 

巨大な熱いものが、女の裡に分け入ってきた。

それは、恰も、筒鞘に筒をねじこむかのような強引なものだった。

(裂ける・・・・・)

お市ノ方は、余りの痛みで、眼が霞んだ。頭が茫となった。

巨大な男の肉棒は、脳天まで貫くかと思われ、お市ノ方は口を開け、生臭い息を吐いていた。(10頁)

 

これ以降も、神社参りをしていた茶々が死ぬ間際のお市の方を襲った同じ男に強●される場面、茶々の乳母(大蔵卿局)の息子である大野治長とのS●関係(茶々がS)、その治長と母親との近●相●、淀の方と呼ばれるようになった茶々が治長と最初の不義密通をした時の治長の早●・・・といった情景の描写が次々と出て来る(伏字だらけで失礼😆)。歴史小説だと思って手に取った筆者(山本)は呆気に取られた(一々そのような場面を引用していたらキリがないので、上記の引用だけとする)。一応最後まで読んだが、その最後も尻切れトンボで、大坂の陣まで話が進まずに終わる。

 

また、お市・お茶々の母娘を手篭めにした男の正体を明かしてはいるが、その男が最後にどうなったのかを話の展開の中で記しておらず、読者に物足りなさを感じさせる流れである、正直言って、余り勧められない小説である。

 

大野治長との不倫関係以外は、どのような俗書にも書かれていない話であるし、その大野治長との不倫関係も、実際にあったかどうかは疑わしい。

 

このような淀の方にまつわる俗説・諸点について分かり易く解説しているのが、

 

立石優『戦国三姉妹の栄華と悲惨―茶々・お初・お江』、明治書院、2010

である。

 

淀の方のみならず、浅井長政とお市の方との間に生まれた三姉妹にまつわる疑問について逐条的に分かり易く答えている初心者向けの史書で、既述の不倫疑惑について著者の立石優は、以下のように一刀両断している:

 

 庶民の浮気と違って、正室や側室などの身分の高い女性が、それも大坂城の御奥で不義の情事を行なうのは、きわめて難しいのである。

 淀殿が起居している大坂城の御奥は、むろん男子禁制であった。江戸城の大奥ほどではないにしろ、出入りの監視はきびしい。(172頁)

 

そして、このような不倫疑惑が出て来た背景事情として著者(立石)は、以下のように説明している:

 

 江戸時代中期、神沢貞幹という京都町奉行所の与力が書いた『翁草』という随筆でまことしやかに紹介され、芝居の題材にもなった。信ずるに足りない。

 淀殿をわがままで淫蕩な女性に仕立てあげ、豊臣家の滅亡を彼女自身が招来した、という筋書きを描きたかったのである。(173頁)

 

<その2に続く>