昔の特許の調べ方
特許の中身にも興味があります。
特許庁を管轄する経済産業省の外郭団体が運営するJ-PlatPadというサイトで特許と商標を簡単に検索できます。
但し、1970年よりも前の場合、特許も商標も特許庁のデーターベースに欠落が多く、完全検索は数パーセントの案件でしか出来ない状態です。
その中でどうやって調べるのか。
商標に関しては以前に当ブログに書いていますが、特許の場合でもデーターが登録されていないという壁にぶち当たりました。
あちこち聞きまくって昔の特許の調べ方が分かりましたので、自分の記憶のためも兼ねてどこまで調べられるかをまとめておきます。(やり方をすぐに忘れちゃうので)
※商標の調べ方の方は、当ブログ内のこちらにて。
It is difficult to find out the detail of Japanese early patents before 1970.
Because some of the data are missing.
Therefore, I explain how to research it specifically.
具体的な例で書いていきます。
KTC最初のカタログ(推定1961年)に、登録済みの実用新案4件と申請中の特許が1件載っています。
この計5件について四苦八苦しながら調べ、特許と実用新案の詳細に辿り着きましたので、具体的に調べ方を説明します。
(特許事務所に問い合わせると有料で調べて貰えるのでしょうが、たぶん同じ方法で調べているのだと思います)
↑KTCカタログより。
(実用新案の一覧になっていますが、5つ目は実用新案ではなく、特許)
1.特許の基本
特許の仕組みを簡単に解説します。
特許には3つの段階があり、それぞれに個別の番号が与えられます。
まず最初の『出願』、次にその内容を一般公開し意見を求める『公告』、そして最後に『登録』。
特許は、『特許』(技術的に高度)と『実用新案』(アイデアのレベル)の2つに分かれ、それぞれに独自の番号が与えられます。
したがい、3x2で6種類の番号があることになります。
2.昔の特許の特徴
3段階の『出願』、『公告』、『登録』のどの番号からでもJ-PlatPatで特許の詳細を検索できますが、1970年よりも以前の場合は検索できないことがほとんどです。
これは特許庁のデーターベースが1970年よりも前の場合、完全では無いためです。
商標で調べた限りでは100件中の2件だけが完全なデーターで、残りの98%は不完全な状態でした。
特許も同じ状態だろうと思います。
特許庁では昔の特許については『公告』番号だけに紐付けて詳細データー(出願時の技術解説等)を管理しています。
つまり、『公告』番号が分からない限りほとんどのケースで詳細を調べることは出来ないのです。
【補足】
実は特許にはもうひとつ番号があって、『公開』番号。
特許に値すると判断された場合に公開するのが『公告』制度ですが、1998年に廃止されています。
その代わりに出願から1年半後に自動的に公開される『公開』番号に変わりました。
この『公告』と『公開』は一時期重複していましたので、ひとつの特許に番号が4つあった時期があります。
いずれにしても、今回の場合は1970年よりも前の特許について解説していますので、『公開』番号は登場しません。
3.具体的な調べ方
➀ 『公告』番号が分かる場合
このケースは、J-PlatPatで簡単に調べられます。
※J-PlatPatは、こちら。
前述KTCカタログ一覧表の5つ目が該当します。
"S36-8649"が『公告』番号になります。
昭和36年に特許で公告された8649件目を示しています。
この一覧表に公告番号が載っているのは、まだ特許審査中で、登録番号が未決定のためと思います。(結果的にはこれにより簡単に詳細を調べられました)
J-PlatPatの"ホーム"ページ(簡易検索)に検索枠がひとつだけ表示されていますので、ここに"S36-8649"と打ち込みます。
すると2種類の番号が表示され、1つ目が『特公昭008649』、2つめが『実公昭36-008649』。
特許と実用新案はそれぞれ独自の番号が割り振られていますので、S36-8649という番号は2種類あることになります。
このケースは特許ですので、1番目が該当します。(『特公昭』:特許、公告、昭和の略)
この『特公昭008649』をクリックすると、調査目的であった特許の詳細データーが表示されます。
ちなみに、『特公昭008649』の右に『特許0285908』と表示されていますが、これはこの特許の『登録』番号です。
ここに登録番号が表示されない場合もあり、それは登録番号がデーターベースに無いことを示しています。
また、『特許0285908』をクリックすると『指定された公報は存在しません』と表示されますが、登録日などの詳細データーは保存されていないことを示しています。
なお、一覧表が載っているKTCカタログの別ページにこのソケット特許の番号として『特許願 11863』と説明されています。
『願』より『出願』番号だと思います。
昭和34年の出願ですので、正確にはS34-11863なのでしょう。
但し、特許庁の詳細データー(下に添付)には出願日しか表示されていませんので、出願番号がいくつだったかは記録が残っていません。
再度の説明になりますが、特許庁に残っている記録は、デジタル・データーベースとして出願番号とそれに紐付いた詳細データーファイル、さらに公告番号と登録番号だけが書かれた紙ベースの一覧表だけです。
したがい、これ以外のことは出願メーカーが公表しない限り不明となります
ちなみに、"ホーム"ページの上にある青帯内の特許・実用新案をクリックするとより詳細な検索が出来るページが利用出来ます。
このページでは『出願』、『公告』、『登録』のどの番号からでも検索が出来ますが、ちょっとでも入力の仕方を間違えると『検索エラー』の連発になりますので、昔の特許を調べる場合は"ホーム"に1つだけある検索枠を使った方が簡単で確実です。
なお、この"ホーム"の検索枠に会社名や出願人名を入れても検索することが出来ますので、便利です。
↓"ホーム"ページの検索枠への入力
↓検索結果と選択
↓特許の詳細(最終調査結果)
➁ 『公告』番号が分からない場合
➁-1…但し、『登録』番号は分かる場合
前述KTCカタログ一覧表の1つ目から4つ目が該当します。
前述した通り、昔の特許では公告番号にだけ紐付けて詳細データーを管理していますので、登録番号から公告番号を調べる必要があります。
但し、古い特許ではJ-PlatPadに登録番号を打ち込んでも、"no data"と表示されます。
何故ならデーターベースでは大半の案件で登録番号が管理されていないためです。
調べる方法がひとつだけあります。
『登録』番号をベースにした『公告』番号一覧表という紙のデーターを特許庁が持っているのです。
これは特許庁(霞ヶ関)の本庁舎2階にある公報閲覧室で一般公開されていて、誰でも閲覧することが出来ます。
紙ベースのデーターですが、実際にはスキャン画面をPC端末で見ていくことになります。
今時、紙ベースのデーターでしか調べられないのは超アナログな世界ですが、今のところデジタル化する計画は無いとのこと。
一般公開しているのですから秘密でも何でもなく、『スキャンファイルのコピーを下さい』と頼みましたが、とんでもないという感じで断られました。
ちなみに、調べるのが数件であれば、電話での問い合わせに応じて貰えます。
特許庁:03-3581-1101 (内)3811
KTC一覧表の2件目、プライヤー『399238』の例で調べ方を説明します。
実はKTCプライヤーの実物には ”PAT 399268"と刻印されていて、どちらが正しいのか分からないため、両方の番号で調べました。
前述した登録番号と公告番号の一覧表は、登録番号の順に表示されていますので、3992xxを上から探していきます。
『399238』は公告番号が『S27-8032』、『399268』は同じく『S27-7597』と判明しました。
ここでJ-PlatPatを利用します。
『S27-8032』で検索するとKTCでは無い別会社のデーターが表示されます。
一方、『S27-7597』で検索したら、ビンゴ。
KTCの斉藤社長(当時)が申請したプライヤーの実用新案が出てきました。
プライヤー現物の刻印が正しくて、カタログの一覧表は誤っていたことになります。
同じ方法で、1つ目と3つ目、4つ目も実用新案の詳細が分かりました。
↓検索結果と選択
↓実用新案の詳細(最終調査結果)
➁-2…『出願』番号しか分からない場合
この場合は、あきらめるしかありません。
唯一方法があるとすれば、『出願』番号から出願年が分かりますので、その年さらに翌年の『公告』番号をSxx-1から順番に入力していけば、いずれビンゴになるとは思います。
但し、1年間に1万件以上が申請されていますので、2年分の2万件以上を順番に入力することになり、実質的には不可能です。
4.公式解説本での調査
特許庁が監修した特許の公式本『特許分類別総目録』が年度毎に発行されていて、国会図書館デジタルで閲覧出来ます。
但し、特許にしか触れておらず、実用新案は載っていませんので、実用新案について特許本で調べることは出来ませんでした。
また、特許の場合を5番目のケースで調べましたが、単に公告番号(8649)が工具/第76類に載っているだけです。
箱スパナ(ソケットレンチ)で誰かが特許の申請中であることだけは分かります。
掲載されているのは公告番号ですので、詳細はJ-PlatPatに入力して調べることになります。
工具の特許に関して手当たり次第に調べたい場合には役に立ちます。
5.特許、実用新案の詳細
最後にKTC一覧表の5件について検索結果である詳細データーを添付します。
★実用新案
➀ モンキーレンチ…登録番号:370859、公告番号:S24-10591
ジョーのスライドレールが凸形状になっているのが実用新案の内容のようです。(普通は丸形状)
この実用新案は昭和23年/1948年の出願ですので、まだKTCが創業する前であり、京都機械時代に斉藤喜一さん(初代KTC社長)が個人の資格で申請し、そのままKTCに持って行った形になります。
但し、この凸形状のスライドレールを使用した製品は日本では見たことがありません。
なお、アメリカのJ.H.Williamsが1935年にこの形状で特許を取得し、製品に使用しています。⇒ こちら
➁ プライヤー…登録番号:399268、公告番号:S27-7597
"PAT 楕円KTC 399268"と刻印されたプライヤーが多く出回っているため、KTCで一番知られた特許(実用新案)です。
このPATマークには二重丸京のモデルもあります。
出願は昭和26年6月/1951年であり、KTC創業(1950年5月)の約1年後になります。
この時期に会社経営基盤確保と同時に技術開発も行われていたことが分かります。
1966年の英語カタログに別のPATマークが刻印されたプライヤーが載っています。
番号が5桁で『99788』と読めます。
下2桁の"8"の部分が不明確で"6"かもしれませんので、『99786』『99768』または『99766』かもしれません。
いずれにしても、頭にSxxが無いので、登録番号と思いますが、5桁の登録番号は昭和8年頃の話であり、この5桁が何を示しているのか不明です。
ちなみに、昭和8年登録の『99786』が本件と似たような軸の結合に関する特許になっていますが、これは偶然でしょう。
なお、実用新案は出願から10年後に効力を失い、延長も認められていません。
本件の場合S26.6.27の出願ですので、S36/1961年6月からは製品にPATマークを表示してはいけないことになっています。
そのことと別のマークが1966年カタログに載っていることは関係するのでしょうか?
なお、"PAT"の前に"M"が付加されていますが、これは実用新案/Utility Model Patentを略したものだろうと思います。
➂ スパナホルダー…登録番号:422209、公告番号:S29-11799
➃ スピナハンドル…登録番号:514031、公告番号:S35-1013
★特許
➄ ソケットレンチ…登録番号:285908、公告番号:S36-8649
この回、終わり






















