KTC-38

彗星/アツタも一重丸京

 

海軍發動機向けスパナの5種類目を見つけました。(他の4種は榮一○、二○、誉、天風)
液冷V12/愛知航空機製のアツタ發動機用。
これまで見つかっている4機種と同様に京都機械/一重丸京製です。

なお、他の4機種スパナは『KTCものづくり技術館』に展示が開始されていますが、このアツタ向けスパナも近々追加し、5機種展示にする予定です。(KTC展示の詳細は、こちら

 

アツタの取扱説明書に載っている整備要具箱の写真よりアツタも京都機械製であることは分かっていましたが、中身の工具が見つかったのは初めてです。
アツタ二○型は艦上爆撃機"彗星"と二式艦上偵察機に搭載された發動機で、ドイツのメッサーシュミット用DB601型のライセンス生産になります。
ちなみに、陸軍でも採用されていて、三式戦闘機"飛燕"の發動機になっています。

 

スパナ表面に"アツタ二○、丸に外、2"と刻印されていますので、アツタ二○型、一般整備用の外部要具、品番2と分かります。
サイズは8x11。
取扱説明書の外部要具一覧に外2番として掲載されているスパナです。

 

裏面の☆印は何だろう?

裏面の一重丸京の左側にカタカナの"オ"らしき刻印があり、さらに左側に"☆"印の刻印があるように見えます。

海軍は桜印、陸軍は☆印と決まっていますので、まさか陸軍向けなのでしょうか?

陸軍向けアツタ(正式名称:95式800馬力/ハ40)の整備要領書を見ると、工場用要具と野外用要具の2種類がありますが、外2に該当する品番は無く、また8x11というサイズのスパナも掲載されていません。

したがい、陸軍向けではありません。

一瞬、『飛燕用のスパナ!』と思ってしまいました。

もともと京都機械は海軍から工具専用工場の指定は受けていますが、陸軍に納めていたとの情報はありませんので、この☆印らしきマークは何なのでしょうか?

単なる打痕??

 

★取扱説明書

アツタの取扱説明書は防衛研(防衛省 防衛研究所 資料閲覧室)の所蔵で、国会図書館の"光"などと同様にアメリカからの里帰り資料です。

Air Documents Divison, T2と捺印されていますが、ライト兄弟が初飛行したライト・フィールド/Wright Fieldにあるライトパターソン空軍基地内にある組織で、日本とドイツの戦時中の資料を研究していました。⇒ T2の詳細は、こちら(英文)

 

・外部要具(一般整備用)

スパナ、メガネ、コンビレンチのハンドツールが多く含まれていて、さらに変わった形状もあり、興味深い工具群です。

コンビレンチが6本も入っています。(外25~27、29、79、122)

外部要具のみ全ての写真とイラスト付きの工具一覧を載せます。

 

 

整備要具箱に銘板が貼ってあり、ぼけぼけの写真ではありますが、『・・・ 』と3文字だけ書かれていることが分かりますので、『京機第 』が当てはまり、京都機械製と判断できます。(他には関西スピンドル製作所の『関西スピンドル』)

赤トンボ/天風の例より『アツタ二○型外部要具』、『京機第xx號』、『昭和xx年xx月製造』と印字されているのだと思います。

 

・内部要具(オーバーホール用)

榮と同様に3ケースで1セットになっています。

1セットの写真だけ載せます。

 

★アツタ發動機

前述の通り、ドイツのメッサーシュミット用DB601型のライセンス生産です。

1938年(昭和13年)にライセンス契約を行い、1941年(昭和16年)からまず二式艦上偵察機に採用され、さらに1943年(昭和18年)から彗星に搭載されています。

なんと言っても液冷が特徴ですが、独特の構造故の苦労も多かったようです。

次期型のアツタ32型と合わせて総生産数は約1,700基。

なお、陸軍向けは海軍とは別のライセンス契約を行い、川崎航空機が国産化。

海軍向けよりも多い約3,000基が生産されていますが、陸軍向けは海軍よりもさらに問題を抱えていて、常に故障に悩まされていたとの記録が残っています。

 

★彗星

胴体内弾倉と断面積の小さな液冷エンジンを搭載することで空気抵抗を最小限に抑えた高速爆撃機として開発が始まり、九九式艦上爆撃機の後継機として"彗星"になり、また実験中の十三試艦爆を艦上偵察機として採用したものが"二式艦上偵察機"。

 

★関連ページ

Wikipedia アツタ發動機

Wikipedia 彗星

 

4年前にゼロ戦の整備工具について初めてブログを書いた時にはスパナ現物が手に入るなんて考えてもいませんでしたが、1本1本探し当てて5機種まで集めることが出来ました。

想いがあれば達成できるものだなと我ながら感心しています。

最初のゼロ戦ブログは、こちら


この回、終わり