日本のモンキーレンチ-12

米国ブランド・Sears系とFuller

 

米国ブランドのSears系とFullerモンキーレンチの専用ページです。

これまで『1953年JIS』内のKTCとして取り上げていましたが、写真と情報を大幅に追加して独立させた次第です。

また、KTC社史で開発ストーリーが紹介されているパイプレンチについてもFuller向けを中心に取り上げました。

 

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1. モンキーレンチ

KTCは、Sears系3ブランドとFullerの計4ブランドにモンキーレンチを供給していました。

(1) 形状

4ブランド共に基本形状は同一で、全長やジョー部厚みも全く同一になっています。

細かな違いは確認できるものの、Craftsmanの端末丸孔が10%ほど大きくなっているのが最大の差異です。

Sears系3ブランドには、必ず製造者記号"BF"が刻印されていて、全てKTC製と考えています。

なお、基本形状は同一ながら、FullerにはKTC製だけでなく、"SANKI"と刻印された北陽産業製もあります。

(2) 生産販売期間

生産販売期間はおおよそ以下となっています。

① Craftsman…1964年~1981年

② Companion…1964年~1971年

③ Sears…1972年~1977年

④ Fuller…1961年頃~1980年代

Sears系3ブランドは、Searsカタログからの推測。(詳細は後述)

Fullerは、1961年の輸出開始からほどなくしてモンキーレンチも加わったと推測。

 

1)Sears系

 ①-1 Craftsman(1964年~1981年)

・Searsは製造会社では無く、ブランド運営会社ですので、Searsブランドは全て外注されていて、製造者記号が表示されています。

・Sears系3ブランドには全て"JAPAN"と共に"BF"が刻印されています。

・BFが全てKTC製と言うわけではありませんが、KTC製と考えています。

・Sears系3ブランドの中で強化型と位置付けられているのがCraftsmanです。

・後述するSearsモンキーレンチ③とぱっと見では同一形状ながら、端末の丸孔が少し大きくなっているのが分かります。

(丸孔内径/8インチサイズ…Craftsman:16.4mm、Sears:14.3mm)

・したがい、Craftsman①とSears③は鍛造型が異なっているのが分かります。

 

 ①-2 Craftsman /緑ビニールコーティング 

・緑のビニールコーティング版もあります。

・中身は上のCraftsman①-1と同一品です。

・ebayで見たことが無く、またカタログにも未掲載です。

・Fullerを担当する日本の輸出工具商社倉庫で見つかっていますので、試作品だったのかもしれません。

 

↑1974年カタログ

・KTCと思われるCraftsmanは、1964年~1981年カタログに登場します。

・但し、日本製とは表示されておらず、KTC製だけで無く、米国製との並行販売だったのかもしれません。

 

【参考】アメリカWewstern Forge社製(製造者記号"WF")

・米国製で、製造者記号"WF"のWesren Forge社製です。

・基本形状はKTCと同一ですが、ジョー部に半月形の窪みがあるのが特徴です。

・1982年カタログからWesren Forge社製のイラストに切り変わっていますので、製品も1982年頃にKTC製から切り変わったのだと思います。

 

↑1982年カタログ

・"WF"製の特徴であるジョー部の半月形窪みがあるのが分かります。

 

 ② Companion(1964年~1971年)

・Sears形の中で廉価版と位置づけられているブランドCompanionのKTC製です。

・裏面右端の製造者記号"BF"よりKTC製と分かります。

・1964年カタログから日本製でNot Craftsmanと表示されたモンキーレンチが登場していて、これがKTC製のCompanionだと推測しています。

・1970年と1971年の2年間だけは、Companionと表示されています。

 

↑1970、71年カタログ

↓1964年~69年カタログ(ブランド名表示が無く、Made in Japanとだけ記載)

 

 ③ Sears(1972年~1977年)

Searsの廉価ブランドは、1972年にCompanionからSearsに切り変わります。

Searsにはバリエーションが3種見つかっています。

主な差は、品番の位置と、裏面の鍛造方法表示。

 

 ③-1 裏面表示:"Forged"、品番:裏 

・3種共に"BF"が刻印されています。

・形状は3種共に完全同一です。

 

 ③-2 裏面表示:"Full Forged Alloy"、品番:表 

 

 ③-3 裏面表示:"Forged Chrome Vanadium"、品番:表 

 

↑1977年カタログ

・1972年から6インチが品番30870から30874に切り変わりますが、この時にブランド名がCompanionからSearsに変更されたと推測しています。

・ブランド名表示は、CompanionからNot Craftsmanに戻ります。

・このNot Craftsman、Japanは1977年まで続きますので、日本製Searsも1977年までは続いたと考えています。

・1978年カタログからはImportedに表示が変わっていて、ebayを見る限りではスペイン製に移行しています。

 

Sears系の詳細は、米国カタログサイトのこちらにて。

(1939年~1995年のSearsカタログ全ページ版を閲覧できます)

 

2)Fuller

 ④-1-1 Fullerスタンダード /製造者記号無し 

・Searsと同一形状のモンキーレンチがFuller社にも供給されていました。

・"JAPAN"刻印より日本製と分かりますが、製造者記号等の製造者を示す表示がありません。

・KTC製のSerasと同一形状であること、KTCは多くの製品をFullerに供給していることから考えるとKTC製と考えるのが妥当だと思います。

・但し、後述するFuller④-4は、同一形状ながら"SANKI"と刻印された北陽産業製です。

・この④-1を含めてFullerは全て北陽産業製だった可能性も否定は出来ません。

 

 【追加】④-1-2 Fullerスタンダード with KTCマーク 

↑Alloy Artifactsより

【2024年10月7日追記】

・Alloy Artifactsと『1988年に北陸KTCでJIS認証を受けるまでKTCはモンキーレンチを全て外注していたのではないか?』論争をしていましたが、彼がこのKTC製Fullerを見つけ、論争が終わりました。

・上の➃-1-1と同一形状ですので、少なくともこの2種はKTC製になります。(御池または伏見工場での製造)

・このことより、同時期と思われる次の➃-2もKTC製なのでしょう。

・であれば、1966年のKTC英語カタログに載っているモンキーレンチが➃-2と同一形状に見えますので、KTC自身の製品もKTCが作っていたのだと思います。(この時期はヤマコーやSankiのOEMも多いのですが)

↓1966年KTC英語カタログより

 

 ④-2 Fuller Extra Strong /製造者記号無し 

・"Extra Strong"と表示されたFullerもあります。

・カタログ未掲載のため、位置付けは不明確ですが、Sears系の中のCraftsmanの様に強化型と推測しています。

 

 ④-3 Fuller Extra Strong /半透明ビニールコーティング青 

・半透明青色のビニールコーティング仕様もあります。

・中身はExtra Strong仕様④-2です。

・カタログ掲載は確認出来ていませんが、ebayで時々見かけますので、Craftsman緑コーティング①-2とは異なり、実際に販売されていたことが分かります。

 

 ④-4 Fuller /製造者記号"SANKI"(北陽産業製)

・製造者記号として"SANKI"と刻印されているFullerが確認出来ています。

・"SANKI"より新潟/三条の北陽産業製と分かります。

・後述【参考】の通り、KTC自身の製品に北陽産業製がありますので、日頃からKTCと北陽産業は生産補完関係にあったことが分かります。

・KTCのFullerやSears向けの生産が追い付かない時に北陽産業に生産依頼していたのだろうと推測しています。

(前述の通り、Fullerモンキーレンチ全てがKTCから北陽産業への生産補完だった可能性もあります)

 

★無印Fullerと"SANKI"Fullerの比較(写真内の上側:"SANKI"、下側:無印)

・表面差異

製造者記号"SANKI"の有無、ジョー部と凹パネルの間格差、ジョー閉時の端末飛び出し有無

 

・裏面差異

"JAPAN"文字の大きさ、"U"のフォント差、ジョー閉時の端末出っ張り度合い

・"U"の刻印フォントが異なるのは結構大きな差であり、鍛造型制作者が異なる、つまり生産会社が異なる可能性大と考えています。

・Sanki製なのかKTC製なのか判断に悩むところです。

 

・なお、4ブランドでジョー部と凹パネル端の間隔を8インチサイズで比較してみるとそれぞれが微妙に異なっているのが分かります。

ブランド浮き出し刻印のために鍛造型は全て異なりますが、鍛造型製作時の誤差が出ているのだろうと考えています。

*Craftsman…10.8mm

*Sears…15.1mm

*Fuller…13.1mm

*Fuller/SANKI…11.4mm

 

【参考】KTC with 製造記号"SA" by SANKI/北陽産業製 

・JIS認証では製造者表示が義務付けられていて、表面に刻印されている"9786"は北陽産業のJIS認証番号であり、北陽産業製と分かります。

・したがい、KTCはKTC自身の製品でも北陽産業にOEM生産委託していたことになります。

・なお、裏面の"SA"もSANKIを示しているのだろうと思います。

 

★Fullerの生産期間

・カタログが2年分しか見つかっていないため、生産期間が不明確ですが、1980年代の後半まで日本製が継続していたと推測しています。

・少なくとも1983年9月までは生産されていたことが確認出来ています。

 

★Fullerカタログ(カナダ向け英仏併記)

  

↑1976年

↓1981年 ⇒ 詳細はこちら

 
 

★FULLER向けの主流、コンビレンチとスパナの詳細は、当ブログのこちらにて。

 

2. パイプレンチ

コンビレンチやモンキーレンチに引き続きFullerからパイプレンチの製品化を要望され、KTCは半年の開発期間を経て供給を開始しています。

Rigidタイプ(固定式)に引き続きStillson Paternタイプ(回転式)も設定。

2種共に同一品をSearsにも供給しています。

Rigidタイプは、KTCブランドでも登場し、ほぼ同一形状のまま現在でも販売。

開発の経緯が、KTC社史『50年のあゆみ』に掲載されています。

 

写真左…Rigidタイプ、同右…Stillson Paternタイプ

 

↑KTC社史『50年のあゆみ』より

 

 ⑤-1 Fuller /Rigidタイプ 

・Fuller向けパイプレンチの第1号モデルです。

・KTCのパイプレンチはFuller向けから始まったと理解していますので、KTCパイプレンチの第1号モデルでもあります。

・ジョー部の凹パネル内に刻印されている楕円KTCロゴ  がKTC製を示しています。

・何故かSearsの製造者記号である"BF"も刻印されています。

・同一形状のSears向けとジョー部を共通化させているのだろうと思います。

・同一モデルをSears⑥-2にも供給。(後述)

 

 ⑤-2 Fuller /Extra Strong 

・モンキーレンチと同様にパイプレンチでも強化型のExtra Strongモデルが設定されています。

・同一モデルを強化型としてCraftsman⑦にも供給。(後述)

・カタログの発行が2年(1976年&1981年)だけ確認出来ていますが、両方共にこのExtra Strongは掲載されていません。

 

↓Fuller同士の比較

・ぱっと見は同一ですが、Extra Strong/強化型は各部が補強されています。

 

 ⑤-3 Fuller /Stillson Paternタイプ 

・1878年にWalworth Manufacturing社が開発したWillson Patern(可動ジョー部が少し回転)を、Searsは1939年にはカタログに掲載していて、FullerもRigidタイプに引き続きKTC製を販売しています。

・裏面にJAPANと共に楕円KTCロゴ  が刻印されていて、KTC製と分かります。

・発行が確認できているFullerカタログ2種(1976年&1981年)の内、1976年にだけ掲載されています。

 

★Stillson Paternの始まり

・1878年にWalworth Manufacturing社が販売を開始。

・従業員のStillson氏が特許を取得したことからStillson Paternと呼称されています。

・Alloy Artifactによる詳細解説は、こちら

 

★Fullerカタログ/1976年

・Rigidタイプ/左とStillson Paternタイプ/右の2種。

※1981年カタログではRigidタイプだけに。

 

 ⑥-1 Sears /Stillson Paternタイプ 

・Fuller⑤-3と同一形状のStillson PaternをSearsにも供給しています。

・1966年カタログに従来のDunlapブランド/西独製から切り替える形で日本製/KTCが登場。

・裏面の"BF"刻印よりKTC製と分かります。

 

 ⑥-2 Sears /Rigidタイプ 

・Fuller⑤-1と同一形状のものをSearsにも供給。

・1966年カタログにSearsブランドが日本製として初登場しています。

・本体に"BF"刻印が無く、"JAPAN"の表示しかありませんが、⑥-1と⑦との同一性よりKTC製と判断できます。(可動ジョー部には"BF"あり)

 

 ⑦ Craftsman /Rigidタイプ 

・Fuller⑤-2と同一形状のものを強化型としてCraftsmanにも供給。

・1966年Searsカタログに従来の米国製と平行設定の形で日本製が登場します。

・本体と可動ジョー部凹パネル内の"BF"刻印よりKTC製と分かります。

 

★Searsカタログから分かる製造元

 

★Searsカタログ/1939年&1970年

↑戦前1939年(海軍規格をパスしたRigid、Stillson Paternの両方が登場)

 

↑1970年(Craftsmanは米国製と日本製/KTCの平行販売、Searsは日本製/KTC)

 

 ⑦-1 KTC /現行品 

・KTCは現在も販売中。

・オレンジブックによると現行品は中国製とのこと。(2000年以降?)

 

↓FullerとKTCの比較

・KTCは今でも現役であり、両者に約50年の差がありますが、ほぼ同一形状のままです。

 

 ⑦-2 KTC /北陸KTC製 

・KTCは1988年に北陸KTCツールでパイプレンチ/B4604のJIS認証/強力級を取得しています。

・KTCの右側に刻印されている  が北陸KTC工場製を示す製造者記号になります。

・Fullerへの輸出が開始された1961年の数年後からパイプレンチの生産も始まったと推測していますが、当時の工場は京都市内の御池工場(1952年~64年)でした。

・以降、伏見工場(1964年~1979年頃) ⇒ 久御山工場(1979年頃~現在)と京都の中でKTC工場は移転を続けます。

・一方で、1970年に石川県に北陸KTCが設立され、一部の生産が北陸KTCの担当となり、パイプレンチも1988年にJIS認証を取得して生産移転されたのだと思います。

・なお、KTCは2000年頃にJIS認証を返上しており、その頃に前述の中国製⑦-1に切り変わったものと推定しています。

 

 

★KTCカタログ/1983年

・軽量化のためにアルミ製も設定されています。

 

★KTCカタログ/1991年でのモンキー、パイプレンチ解説

 

 

この回、終わり

日本のモンキーレンチ/全13編には、こちらから