Fullerのすべて
KTC最初の輸出
KTC-19
KTCは1960年代から80年代に掛けて海外ブランドへのOEM供給を盛んに行っていて、"トヨタ車載"と"国内販売"と共に"輸出"が収益の3本柱になっていました。
その輸出の第1号が、アメリカのFullerでした。
始まりは1961年に遡ります。
Fuller専用モデルが7種類もあります。(コンビレンチ4種+スパナ3種)
また、そのFullerボディー使用して、KTCは異なるアメリカブランド3種にもOEM供給していました。(Award、A.H.S.、Craftking)
初のKTC輸出に敬意を表し、気合いを入れてFullerモデル群を解説します。
1.商品一覧
・パネル形状違いで基本モデルが3種あり、それぞれにコンビレンチとスパナが設定されています。
・⑦以外はFuller専用モデルになっています。
★写真背景色
2.会社概要
1)会社沿革
ニューヨークでBernard H. Fullerさんが興した工具会社。
・1937年5月…Fullerの商号を使用開始
・1950年代…工具の輸入開始
・1961年…KTCと供給契約
・1962年2月…"FULLER"を商標申請(登録:1963年8月)
※カナダのInnovak Group Incも共同で商標権を持ち、カナダでFullerを販売
・1980年代後半…KTCとの契約終了(約30年間の供給)
・1990年代…カナダへ拠点移動(現在も運営中)
2)KTCとの供給契約
・1961年に社長のFullerさんが日本視察時に、たまたまKTC工場のそばを通り、鍛造音に誘われて飛び入り訪問。
・これをきっかけにFullerとKTCが供給契約を締結。
・最盛期(1983年)にはFullerへの売り上げだけで25億円/年に。
(単価1,000円/本とかなり高めに考えたとしても、250万本/年となり、物凄い数)
⇒ KTCとの契約開始の詳細は、こちら(本稿内の7項)にて。
3)登録商標
・商号の最初の使用…1937年5月、商標登録…1963年8月
・文字商標…72138491(上表) /米国特許商標省(USPTO)サイト
・デザイン商標…72315358(1971年2月登録) /同
3.コンビレンチ
★基本モデル3種
(1) 形状違い
・基本モデル3種…上から凸丸、凸平行四辺形、凹丸パネル
・ショート1種とロング2種。
・サイズ1/2インチでの長さ:
凸丸…140.27mm、凸平行四辺形…157.22mm、凹丸…159.37mm
(凹丸はFullerモデルもありますが、1/2サイズが手元に無いため、比較には同一形状のCraftkingを使っています)
(2) クラス分け
材質より商品の位置付けは、
・凸丸…材質表示無し(一般炭素鋼?) ⇒ 廉価
・凸平行四辺形…Cr-Vとクロモリ ⇒ スタンダードと高級
・凹丸…Cr-V ⇒ スタンダード
(3) 販売期間
・後述するカタログ(1976年と1981年)では、1976年は凸丸が掲載されていますが、1981年には同じ品番のまま凸平行四辺形に切り変わっています。
・また、KTCからは『凸平行四辺形は1981年からFullerに供給』と聞いていて、カタログモデルの変更と符合します。
【2024年11月13日】凸平行四辺形が1979年Fullerカタログに掲載されていることを確認。
https://archive.org/details/fuller-tool-1979/page/A-53/mode/2up
・したがい、販売期間は以下と推定。
*凸丸が1961年~1979年1981年
*凸平行四辺形が1979年1981年~1980年代後半
・但し、凸丸には廉価版でミリ仕様も設定という特徴がありますので、凸平行四辺形登場後も併売していたかもしれません。
・凹丸は、基本的には他ブランド向け用に設定されたのだろうと思います。(Fullerモデルもありますが)
・カタログ未掲載のため、登場時期は不明ですが、他ブランド(Craftking)が1967年の広告に登場していますので、凹丸は少なくとも1967年には販売開始されていたことになります。(広告は後述)
・同じ基本モデル同士でも微妙な形状差があり、詳細は以下にて。
1)凸丸パネル
① 凸丸パネル-1 /インチサイズ細め
・凸丸コンビレンチは、Fuller専用モデルです。
・このモデル①は胴長部の横幅が細めですが、太めのモデル②もあります。
・ぱっと見では①と②の差は分かりませんが、2つを並べると①が細めなのが分かります。
・細め①の製造記号は全てのサイズで"U2"だけになっていますが、太め②の製造記号は"Fx"(F0~8)で、サイズ毎に"x"が変化しています。
・細め①よりも太め②の方がオークションに多く登場していますので、最初に細め/"U2"モデル①が登場し、比較的早めに太め/"Fx"(F0~8)モデル②に切り変わったのだろうと推測します。
② 凸丸パネル-2 /太め、インチサイズ
・前述の細め①よりも太めになっています。
・製造記号はサイズ毎に"x"が異なる"Fx"(F0~8)になっていて、製造記号は鍛造型を表していることが分かります。
・また、製造記号/鍛造型が"F"であることからも、Fuller専用モデルであることが分かります。
・後述するようにこのモデルはKTC自身が使用したり、国内ブランドへのOEM供給にも利用していますので、Fuller専用モデルながらデザイン権や使用権はFullerでは無くKTCにあったと理解しています。
・裏面刻印が細め①の"Forged Alloy"とは異なり"Drop Forged"になっています。
★細め①と太め②の比較
・太め②(写真上側)と細め①(下側)を同サイズで直接比較してみると、下側①が細いのが分かります。
・実測すると1/2インチで細め①が胴長幅10.02mm、太め②が11.10mm。
・細め①が90%細く、他のサイズでも約90%細くなっています。
③-1 凸丸パネル /太め、ミリサイズ
・太め②にはミリサイズが設定されています。
・コンビレンチ、スパナ共にミリサイズが設定されているのは凸丸だけになります。(後述の凸平行四辺形や凹丸にはミリサイズ無し)
③-2 サイズ表示に"mm"追加
・ミリサイズ③のバリエーションとしてサイズ表示に"mm"が追加されたモデル。
・裏面刻印は、③-1の"Drop Forged"ではなく、"Forged Alloy"。
★ビニールケース
・左から太め②6本セット、細め①5本セット、2種共にインチで、ケース色は 黒 。
・さらに、太め③のミリサイズ6本セット2種(ミリは 黄 )、サイズにmm表示付き③-1とmm表示無し③-2。
2)凸平行四辺形パネル
④ 凸並行四辺形パネル-1 /Cr-V、メガネ部"段付き"
・KTCコンビレンチの定番であるM41モデル(凸平行四辺形)もFullerに供給されていました。
・前述の通り、KTCから『Fullerへの供給開始は1981年』と聞いていて、かつカタログで1981年に凸丸から凸平行四辺形に切り変わっていることから、凸平行四辺形は1981年からの登場と理解しています。
・胴長とメガネ部のつなぎに"段付き"と"なだらか"の2種類があります。
・上の写真左側が"段付き"、右側が"なだらか"。
・元になっている日本向けM41モデルは全て"なだらか"であり、"段付き"は海外OEM供給のFuller、Award、CraftKingだけです。
・後述のクロモリ"なだらか"⑦は、製造記号が"Ux"(U0~8)で、M41と同一の製造記号になっていますので、M41の鍛造型を流用していたことが分かります。
・しかしながら、この"段付き"モデル④は、製造記号が"U1"固定になっていて、特殊です。
・前述の凸丸に"U2"があり、凸平行四辺形は"U1"になっていますが、通常は"U1"の方が先に番号が割り当てられるでしょうから、ひょっとすると最初のFuller向けは凸丸では無く、トライアル的に凸平行四辺形"U1"が先に輸出されたのかもしれません。(KTCの『凸平行四辺形は1981年から』と符合しませんが)
⑤ 凸並行四辺形パネル-1 /刻印逆向き
・"段付き"④で表裏パネル面の刻印が逆向きになっているモデルを見つけました。
・"段付き"なら裏面に"U2"が刻印されているはずですが、製造記号自体がありません。
・後述の他ブランド(写真背景:緑)で取り上げているCraftKingが同じように『段付き』、『逆向き』、『製造刻印無し』となっていて、このモデル⑤がCraftKingの元になっているのが分かります。
↑別サイズ5/8"の『段付き』、『逆向き』、『製造刻印無し』。
⑥ 凸並行四辺形パネル-1 /Cr-V、メガネ部 "なだらか"
・"なだらか"モデルでブリスターパックや単品ビニールケースに印字されている説明では材質がCr-Vになっているものが存在するのですが、どれも実際に開けてみると中からはクロモリ⑦が出てきます。
・これまでブリスターパックと単品ビニールケースの⑥を3個ずつ計6個を開けてみましたが、全てクロモリ⑦でした。
・つまり、"なだらか"でCr-Vをまだ見たことがありません。
・この⑥の実物が存在するのか引き続き探します。
↑↓ケース説明では材質Cr-Vながら、中身はクロモリ製。
⑦ 凸並行四辺形パネル-4 /クロモリ
・クロモリ製です。
・裏面に"Chrome Molybdenum"と刻印。
・アメリカにはCr-V仕様と共にクロモリ仕様も供給されていますが、オーストラリアにはクロモリ仕様だけが供給されていたようです。(ebayオーストラリアでクロモリ仕様しか登場しない)
・クロモリ仕様は"なだらか"だけで、"段付き"は見つかっていません。
・製造記号は、"Ux"(U0~8)になっています。
★"段付き"④は少し異形
・上から2番目が"段付き"④ですが、その上の"なだらか"⑤~⑦と較べるとスパナ部が2mmほど横にずれているのが分かります。(赤い線と黄色丸の交差とスパナざぐり位置に注目)
・独スタビレ(一番下)と似た形状になっています。
・さらに、"段付き"④は、凸パネルの左右位置が少し右にずれています。
・スパナ部の横ずれ、凸パネルの右ずれ、メガネ部の"段付き"から、"段付き"④と"なだらか"⑤~⑦とは鍛造型が異なるのが分かります。
★凸平行四辺形パネル3種の比較
・長さ(サイズ5/8インチ)は、KTC M41を含めた3種共にぴったりと同一です。
KTC…199.86mm
Fuller Cr-V/なだらか…199.79mm
Fuller クロモリ/段付き…199.31mm
★パッケージデザイン
↑Cr-V専用のブリスターパック(茶色基調)
・パッケージ底部に"FULLER TOOL CO., INC. U.S.A."と印字されています。
・黄色の別パッケージ(クロモリ版)はアメリカ以外のオーストラリアと英国で見かけますが、この茶色はアメリカでしか見かけません。
・"段付き"④と"なだらか"⑥の2種類がありますが、前述の通り"なだらか"⑥の場合は中からはクロモリ⑦が出てきます。
↑クロモリ専用のブリスターパック(黄色基調)
・上の茶色パッケージと同様に"FULLER TOOL CO., INC. U.S.A."と底部に印字されていますが、アメリカだけでなく、オーストラリアと英国でも見かけます。
・Cr-V仕様はアメリカでのみ販売され、オーストラリアと英国はクロモリ仕様だけが販売されていた様です。
・オーストラリアではクロモリ仕様であることからか、同じくクロモリ仕様のスパナと共に"Fuller Pro"というブランド名で販売されていたようで、ebayオーストラリアの出品を見ると"Fuller Pro"という説明を多く見かけます。(パッケージには表示されていませんが)
3)凹丸パネル
⑧ 凹丸パネル
・少数しか見つかっていませんが、凹丸パネルもありました。
・ロゴFULLERの前後に★マークが付いていて、かつ材質Cr-Vの表示が表面に刻印されています。
・凹丸⑧とFuller凸平行四辺形⑦を同じサイズで比較します。
(凹丸は後述するCraftkingを使用しています)
・長さはほぼ同一で、M41タイプ(凸平行四辺形)の特徴であるメガネ部と胴長が平面でつながっているのも同じです。
・M41のパネル形状を"出っ張り"(凸)から"へこみ"(凹)に変えてFuller専用モデルを作ったようです。
・ただし、凸丸①~③と凸平行四辺形④~⑦はショートとロングの棲み分けていますが、この凹丸⑧は④~⑦と同じロング長さですので、立ち位置が不明確です。
・Craftking向けに専用の凹丸を作り、後からFuller向けを追加したのかもしれません。
4)他ブランド(コンビレンチ)
A.H.S.
・凸丸の海外(アメリカ)向けは、このA.H.S.とFullerのみ。
・裏面の楕円KTCと製造記号"F6"より、KTC製でFullerボディーを使用していることが分かります。
・A.H.S.のブランド情報は確認できていません。
・ちなみに、1972年から供給を開始したという記録しかKTCに残っていないとのことで、A.H.S.についてKTCも不明とのこと。
・私の推測ですが、A.H.S.との供給契約はFullerまたは日本の担当商社が締結していて、KTCは日本の担当商社へ出荷しているだけだったのだろうと思います。
・ebayで1回だけ見かけて手に入れたのですが、この1回以外には全く見かけませんので、超貴重品です。
・この1回を入手していなかったら、誰も知らない『忘れられたモデル』になっていたのかもしれません。
【参考】Kyoto Tool
・Fullerボディーの凸丸16mmと18mmの2サイズだけにKTC版があります。
・私の推測ですが、16mmと18mmは日本市場でほとんど需要が無いため、ワンロット(何千本、何万本?)を打つほどには出荷数が無いため、在庫で持っていた無刻印のFullerモデルにKTCと刻印してM41の16mmと18mmの代わりに暫定出荷。
(M41凸平行四辺形パネルの16mmと18mmもちゃんと存在します)
【参考】Tool Man by KTC
・KTCの廉価ブランド"Tool Man"にFullerの凸丸が使用されています。
・KTC製とはどこにも表示されてはいませんが、製造記号の"Fx"がKTC製の証です。
Award
・凸平行四辺形⑦のAward版です。
・クロモリ材を使用しています。
・下記の通り、Award Toolは、Fullerの子会社ですので、兄弟ブランドになります。
・Fullerのブリスターパッケージ4種を手に入れてみたら、その内の2種は中にAwardが入っていて、びっくり。
・ブリスターパックで封印されていますので、出荷時のオリジナル状態のままです。
・改めて調べてみたら、Awardは、Fullerの兄弟ブランドと分かりました。
・パッケージに間違えて入れてしまったのか、またはFuller Toolという会社の商品という意味で入れたのかのいずれかでしょう。(Award入りの確率が高いので後者?)
・商標はFuller(1963年登録)の翌年にAward Tool Co,. Inc.が申請していて、この会社が1965年にFullerの子会社となります。
・したがい、Awardモデルは、1965年またはそれ以降の登場と思います。
・商標登録…72191242
・住所は同じニューヨークのクインーズ区(ロングアイランド島)で、Fuller本社から歩いて3分のご近所。
↑マンハッタンFuller本社の2ブロック先にAward事務所。
↑『Hardware Age』1969年6月号より
『Awardは1965年からFuller Toolの子会社』と明記されています。
Craftking-1 /凸平行四辺形
・凸平行四辺形⑤を使用したアメリカのブランドCraftKing。
・⑤と同様に『段付き』、『逆向き』、『製造刻印無し』になっています。
Craftking-2 /凹丸
・凹丸⑧のCraftkingもあります。
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Craftkingは、ニューヨーク・マンハッタンでディスカウントストアーを運営していたE. J. Korvette社のオリジナルブランドです。
Fullerとは"マンハッタン"が共通項です。
以下のストーリーを推測。
・E. J. Korvette社がオリジナルブランドを企画し、同じマンハッタンのFullerに相談。
・Fullerが日本のKTCを紹介し、Fuller向けの凸平行四辺形と凹丸パネルの2種類に"CraftKing"と刻印したモデルをE. J. Korvette社に納入。
・たぶん商流と物流にFullerまたは日本のFuller担当輸出商社が関わっているのだろうと思います。(E. J. Korvette社 ⇔ Fuller ⇔ KTC)
・下の広告に小さくKTC製と思われるCraftkingブランドのスパナが写っていますので、1967年には登場していたのだろうと思います。
⇒ 詳細は、当ブログ内のこちらにて。
↓E. J. Korvetteの"父の日"広告(1967年6月15日)
4.スパナ
冒頭の商品一覧表を参照のために再掲載。
★基本モデル3種比較
・コンビレンチと同じくスパナにもパネル形状違いで基本モデルが3種。
・凸丸、凸平行四辺形、凹丸の3種類。
・凸丸(写真上)と凹丸(同下)は、共に長さがスタンダード。
・凸平行四辺形(同中)はロング。
・コンビレンチで凹丸はロングでしたが、スパナではスタンダード長さになっています。
※3種類を同じサイズで揃えられなかったため、一番下の凹丸を写真加工し、一番上の凸丸と同じ長さにしてあります。(他のサイズで凸丸と凹丸は長さが同じであることを確認済み)
1)凸丸パネル
⑨ 凸丸パネル
・コンビレンチ①~③と同様に凸丸のFuller専用モデルです。
・製造記号は"Fxx"になっていて、写真は"F04"。
・コンビレンチ凸丸①と同じように、スパナ凸丸にも特異な製造記号"U2"があります。
⑩ 凸丸パネル /ミリサイズ
・ミリサイズもあります。
・製造記号は、これも"Fxx"の数字2桁で、写真は"F79"。
2)凸平行四辺形パネル
⑪ 凸平行四辺形パネル-1
・凸平行四辺形パネルです。
・KTCのS100(スタンダード長さ)とS150(ロング)同じデザインですが、S100とS150にインチサイズの設定が無く、Fuller専用モデルになります。
・さらに、S100/S150と長さを比較すると、FullerモデルはS100(スタンダード長さ)とS150(ロング)の中間の長さになっています。
・サイズ5/8"x3/4"(17x19に近い)はL=196、これはS150ロング17X19のL=203mmよりも少し短め。
・一方、サイズ3/8"x7/16"(10x11に近い)はL=126、これはS100スタンダード10x11のL=123よりも少し長め。
・コンビレンチと同じようにCr-V仕様⑪とクロモリ仕様⑫の2種類があります。
・製造記号がコンビレンチ④と同じ"U1"になっていて、恐らく④と同様の特別なストーリーがあるのだろうと思います。
⑫ 凸平行四辺形パネル-2 /クロモリ(アメリカ向け)
・クロモリ仕様です。
・コンビレンチのクロモリ⑦のスパナ版になります。
・製造記号は、"F"では無くて、"Uxx"の"U04"。
⑬ 凸平行四辺形パネル-3 /クロモリ(オーストラリア、英国向け)
・ブリスターパックは黄色基調のクロモリ仕様⑬だけが見つかっています。
・このクロモリ用ブリスターパッケージにはオーストラリアFullerの名称"Fuller Tool Co. (Aust.) Pty. Ltd."が印字されていて、オーストラリアと英国で見かけますが、クロモリ仕様のブリスターパッケージはアメリカでは流通していなかったようです。
・販売国としてカナダ、ニュージーランドと共に日本の名前も出てきますが、日本でも売られていたのでしょうか?
・コンビレンチと同じくクロモリ仕様であることから、オーストラリアでは"Fuller Pro"というブランド名で販売されていたようで、ebay上ではオーストラリアでだけ出品に"Fuller Pro"という名称が使われています。

なお、クロモリのブリスターパックは、上が黄色で、下が赤色のデザインになっていて、中間に赤白青の三色リボンが斜めに入っています。
細かな話ですが、アメリカFuller版のリボンが風に揺れていて、オーストラリアFuller版は揺れていません。
★凸丸⑨、⑩と凸平行四辺形⑪~⑬の比較
・凸丸は少し短めですので、凸丸:スタンダード長さ、凸平行四辺形:ロングで使い分けられていたのだと思います。
★スパナ・パッケージ・コレクション
・スパナの単品パッケージに5種類あります。
3)凹丸パネル(スパナ)
⑭ 凹丸パネル
・コンビレンチ凹丸⑧のスパナ版です。
・コンビレンチ版と同じように、★FULLER★とCr-Vが表面に刻印されています。
・KTCの凹丸パネルにスタンダード長さ(SB10)とロングのSB15の2モデルがありますが、Fullerはその中間の長さであり、Fuller専用モデルになっています。
・AwardにFullerと同一モデルがあり、KTC SB10、SB15とAwardを比較したのが下の写真です。
・サイズ1/2"x9/16"では、SB10は長さ141mm、SB15は長さ167mmになっていて、一方でAward/Fullerは153mmになっています。
・この凹丸⑭はコンビレンチ版⑧と共にほとんど見かけることは無く、あまり流通していなかった様で、Fullerモデル群の中で一番入手が難しい貴重なモデルです。
4)他ブランド
Award-1 /凸平行四辺形
・凸平行四辺形⑨のAward向け。
・コンビレンチAwardと同様に製造記号がありません。
Award-2 /凹丸
・凹丸⑭のAward向け。
★KTCの凹丸パネルS10系との比較
・上からKTC:SB10(L=141mm)、Award/Fuller(L=153mm)、KTC:SB15(L=167mm)。
・スタンダード、セミロング、ロングと言った関係。
・SB10とAwardの凹丸パネル自体の長さは同一で、丸パネル端とスパナの間を伸ばしたのがAward/Fullerになっています。
【参考-1】凸丸スパナ /ブランド無印、KTC刻印付き
・三沢基地に近い青森のリサイクルショップで見つかったKTC製の無印。
・裏面にKTC刻印があり、通常モデル⑨に対し表面の"FULLER"刻印だけが無い状態。
・製造記号"F68"よりFuller専用ボディーと分かります。
・リサイクルショップで見つかっていますので、一度は市場に出た製品になります。
・何用なのか、以下に可能性を推定します。
*推定-1…製造者(KTC)が分かれば良い公官庁向け(米軍含む)で、Fullerモデルを活用?
*推定-2…第3者が独自ブランドで販売することを前提に、KTCからは無印で出荷されたが、そのまま市場に流失?
*推定-3…FULLER向けの打刻忘れ?
(打刻忘れだとしてもアメリカ輸出専用品が日本市場に出回ることは無いでしょう)
*推定-4…試作品?
(京都で作られた試作品が青森で市場に出回るとは思えません)
・したがい、推定-1または推定-2のいずれかだろうと考えていますが、私の推測の域を越えません。
・ちなみに、KTCには本モデルの製造記録は残っていないとのこと。
・正体不明なので、参考とします。
【参考-2】凸丸コンビレンチ /完全無印(試作品)
・Fuller向け輸出を取り仕切っていた工具商社の倉庫で眠っていた完全無印品です。
・タグ『北陸KTC見本』より、1970年から操業を開始した北陸KTCでのFuller生産トライアル品だろうと思います。
・生産時期から考えるとFuller製品は京都の伏見工場で生産が開始されたと思いますが、1970年に入ってからの伏見工場閉鎖に伴い、移転先である京都の久御山工場では無く、同時期に操業を始めた北陸KTCでの生産に移行したのだろうと本試作品の存在より推察できます。
・唯一刻印されている製造記号"F0"は、Fuller向け5/8インチを示していますので、無印ながらKTC製(モデル②)と分かります。
・試作品ですので、参考とします。
↓Fuller 5/8インチとの比較
5.KTC中国工場製の可能性
・中国製のFullerです。
・Fullerは1990年代にカナダに拠点を移していますが、ニューヨーク時代の最後あたりで日本製(KTC)から中国製に移行したのでは無いかと思います。(どのアメリカブランドも2000年頃までには日本製から台湾製や中国製に移行しています)
・12mm同士の日本製(KTC)と中国製を比較します。
・ぱっと見は同じで、長さなどの寸法はほぼ同一であり、作りの丁寧さも同じ印象です。
・ただし、スパナ形状が異なり、さらに胴長部の丸パネルが中国製は短くなっていて、鍛造型が明らかに異なっているのが分かります。
・なお、KTCが中国工場を稼働させたのは1997年であり、Fullerが日本製(KTC)から中国製に移行した推測される時期とぎりぎり符合します。
・したがい、KTC中国合弁会社の製品ではないかとの推測も成り立ちます。
・しかし、残念ながら、この中国製には製造記号等の製造に関する情報が無いため、どこの工場製か判別できません。
・KTC中国の製造であることを示す表示情報は全く無く、逆にKTC中国の製品では無いとする表示情報もありません。
・唯一確かなことは、このモデルがFuller製品として北米で販売されていることだけです。
・ちなみに、KTC中国工場について『KTC50年のあゆみ』には以下の様に記述されています。
*中国工場は1997年1月から本格的な生産活動に入った。
*中国工場では、ネプロスのような高級品を除くスパナ44アイテム(車載6アイテム、市販38アイテム)を途中工程まで生産。
*1997年度の生産数量は218万本(車載171万本、市販47万本)、1998年度は246万本(車載200万本、市販46万本)。
・なお、KTC中国工場は2018年に生産を終了し、合弁会社は解散になっています。
・凸並行四辺形にも中国、台湾またはインド製と思われるFullerモデルがあります。(製造国の表示がありません)
・こちらはパネル左右のサイズ表示がぎりぎりの位置で刻印されているなど作りが雑に見えます。
・"FULLER"ロゴがFuller通常の正立文字では無く、斜め文字になっていますので、コピー品かもしれんません。
6.製造記号について
かなり細かな(マニアックな)内容になります。
製造記号/鍛造型番号は、Fullerに多くのモデルがあることを気が付かせてくれた重要な識別ポイントでした。
なお、KTCは製造記号を非公開にしていますので、1本1本自分で調べました。
複数の実物から製造記号を追いかけていくと、全体像が見えてきます。
そこから、さらに調べて行くと、一定基準が見つかりますが、その基準では説明できないモデルも出てきて、それが新モデルを発見するきっかけになりました。
1)凸丸パネル①~③
・凸丸①~③の製造記号一覧です。
・2種類目の"太め"②の製造記号は"Fx"になっていて、"x"は偶数0~8の繰り返しになり、これが一定基準です。
・凸丸の初モデルだろうと推測している"細め"①は、製造記号が全て"U2"になっています。(基準から外れるので、おかしいと思ったら"細め"①でした)
・3種類目のミリサイズ③がちょっと複雑です。
・大きいサイズ(14~18mm)と11mmは、インチの鍛造型をそのまま使用しています。(スパナの切り出しサイズが似ているので、インチとミリで鍛造型の共有が可能)
・一方で、小さいサイズ(10、12、13mm)は、ミリサイズとして独自の鍛造型になっていて、番号は同じ"Fx"ですが、"x"がミリサイズの1桁目になっています。(12mmは"F2"、13mmは"F3")
・なお、10mmモデルと3/8インチモデルは全く同一形状で同一の大きさになっていますが、何故か鍛造型番号は異なっています。(同一サイズなのに鍛造型を分けている理由は不明)
・また、9/16インチ(14.3mm)の鍛造型から14mmと15mmの両方のモデルを作っていますので、それと同じように1/2インチ(12.7mm)の鍛造型から12mmと13mmのモデルを作れば良いと思うのですが、このミリ2サイズもミリサイズ専用の鍛造型になっています。
↑"細め"①の製造記号は、全て"U2"。(裏面左側に逆向きで浮き出し刻印)
↑"太め"②は、サイズ毎に異なる"Fx"。("x"は偶数0~8の繰り返し)
↑ミリサイズ③は、大きいサイズはインチモデルの鍛造型を流用、小さいサイズは専用の鍛造型。(写真6本中の上側3本がミリサイズ専用で、"x"はミリサイズの1桁目)
↑3/8インチと10mmは形状も大きさも同一ながら、鍛造型は異なっています。("F2"と"F0")
↑小さいサイズでも11mmはインチモデル(7/16インチ)の鍛造型を流用。
・但し、両方共に鍛造型番号は"F4"になっていますが、11mmモデルは"細め"になっているのが写真でも分かります。
・鍛造型毎に鍛造回数に制限があって、一定回数を鍛造する毎に鍛造型を作り直しているものと思いますが、その時に鍛造型にバラツキが出ているのでしょうか?
2)凸平行四辺形パネル④~⑦
・"段付き"④がサイズに関わりなく"U1"固定になっているのが分かります。
・最初はFuller専用の鍛造型を"U1"として作ったものの、供給開始後にM41鍛造型の共用に変更したのだろうと推測しています。("U1"は2サイズしか見つけられていません)
・凸平行四辺形④~⑦にはインチサイズしか無いため、凸丸①~③に較べると素直な構成になっています。
3)スパナの凸平行四辺形
・数字が2桁("xx")になっているのがスパナの特徴です。
・10の桁が0~8まであったり、また1桁目に奇数があったり、バラバラな印象です。
・必ず法則はあると思いますが、スパナはコレクション数が少なく、またセットを持っていないので、法則をまだ見つけ出せていません。
・コンビレンチと同じ"U1"と"U2"があり、この2モデルにはコンビレンチと同じような特別なストーリーがあるのだろうと思います。
・以下が見つかっています。
*凸丸…U2、F01、F04、F08、F24、F68、F69、F79、F80、無し
*凸平行四辺形…U1、U02,、U04、U24、U80
・スパナ凸平行四辺形⑪は、コンビレンチと同様に製造記号が得意な"U1"になっていますが、Awardにも"U1"モデルがありました。
★凹丸パネルの製造記号
・コンビレンチ、スパナ共に凹丸には製造記号が入っていません。
・製造記号/鍛造型番号が無くとも、浮き出し刻印でサイズからブランド名まで全ての情報が初めから表示されていますので。
7.FullerとKTCのなれそめ
冒頭の通り、1961年に社長のFullerさんが日本視察時に、たまたまKTC工場のそばを通り、鍛造音に誘われて飛び入り訪問したことから始まります。
社史『KTC50年のあゆみ』に経緯が載っていますので、添付します。
最盛期の1984年にはFuller向けだけで25億円を超える売り上げだったと説明されています。(全売り上げ80億円の31%)
Sears/CraftsmanへのOEM供給がFullerから8年ほど遅れて1969年に始まっていますので、1984年の輸出売り上げはSears/Craftsman向けも含めると輸出が全体売上げの半分以上を占めていたのだろうと思います。
↓『KTC50年のあゆみ』より
なお、以下は当ブログの独自推測です。
Craftsmanを含むSears製品で日本製(JAPAN刻印)の場合、必ず"BF"マークが付いています。
当初はこの"BF"マークはKTC生産を示す記号と考えていました。
しかしながら、ペンチ類などKTCが生産していない工具で他の日本メーカーの生産と推測出来る製品にも"BF"マークが入っていますので、KTC生産を示すマークでは無いようです。
Sears向けの輸出は全てFullerが絡んでいて、それを取り仕切っていたのがFuller子会社(輸入販売業務)のFuller Orient Corp.だったと推測しています。
そして、この"BF"マークは、Fuller社長バーナード・フラーさんのイニシャルであろうと考えています。
フラー社長は日本を訪れてKTCと契約を結び、その製品を当時世界最大の小売業者であったSearsに持ち込むことで、KTCとSearsを結びつけ、そのSears向けの輸入(日本から見れば輸出)を子会社であるFuller Orientが担当(独占)したのだろうと考えるに至りました。
したがい、日本製のSears製品にはFuller ToolsとFuller Orient両社の社長名を示す"BF"が表示されているとの推測に至った次第です。
なお、前述『KTC50年のあゆみ』に登場するフラー社長に同行した秘書(日本人女性)がFuller Orientの副社長となり、FullerやSears向けの輸入を取り仕切っていたと考えています。
8.カタログ
KTCがFullerに供給していた1961年から1980年代後半の間で、カタログの存在が確認できているのは1976年と1981年の2冊(カナダFuller版)だけです。
初期から中期に掛けての1961年~1975年のカタログが確認できないのは残念です。
Fullerの基本3モデルの内、最初のモデルと思われる凸丸パネルが1976年版に載っていて、1981年版では同じ品番で凸平行四辺形パネルに切り変わっています。
なお、3種類目の凹丸パネルは、カタログには登場せず、またオークション市場でも見かけることが希なので、市場に出回った数も少なかったのだろうと思います。
1)1976年
1976年のカナダFullerカタログ(全16ページ)をebayカナダで手に入れました。
Fullerカナダもアメリカと同じラインナップだと言われています。
コンビレンチとスパナ共に凸丸パネルが掲載されています。
・コンビレンチ品番…1359~1366(凸丸パネル/Cr-V①or②)
・スパナ品番…1461~1466(凸丸パネル/Cr-V⑨)
2)1981年
1981年のカナダFullerカタログ。
KTC製品を含むFullerカタログとして一番内容が豊富です。(全28ページ)
⇒ ビンテージカタログWebへのリンクは、こちら。
1976年の凸丸パネルが同じ品番のまま凸平行四辺形パネルに切り変わっています。
さらにコンビレンチにはクロモリ仕様が追加されています。
従来のCr-V仕様も継続していますが、品番末尾にBが付随しています。
・コンビレンチ/クロモリ品番…1359~1366(凸平行四辺形パネル⑦)
・同/Cr-V品番…1359B~1377B(同④、⑤)
・スパナ/Cr-V品番…1461~1466(凸平行四辺形⑪)
この回、終わり




































































