小さなコンビレンチ比較 Snap-on他
JIS規格ではコンビレンチはサイズ5.5mm以上と規定されていて、大半のメーカーはJIS規格通りにサイズ5.5mmからラインナップしています。
今回はその5.5mmよりもさらに小さなコンビレンチに注目してみたいと思います。
下表に世界の代表的なブランドのサイズ設定をまとめました。
日本だけでなく、アメリカやヨーロッパやアジアも5.5mmからの設定になっているのが分かります。(インチは1/4"から設定が始まります)
私が知る限りでは、普通の鍛造タイプのコンビレンチで、5mm以下が設定されているのは5ブランドだけです。
日本の4ブランドと、アメリカのSnap-onになります。(何故かヨーロッパや台湾には5mm以下は無いようです。)
その5ブランドを中心に小さなコンビレンチについて紹介します。
注)
・鋼板のプレス打ち抜きによる小さなサイズのコンビレンチは、ノーブランドも含めると星の数ほどありますが、その代表としてCraftsmanだけ紹介します。
・INFARに5.5mmよりも小さなサイズで5mmの設定がありますが、INFARの常でカタログに設定があるだけで、実際のINFARブランドの商品は存在しないと思います。
1.一覧表
メガネ部の6PTと12PTの使い分けも一覧表に入れました。
サイズが小さくなるとブローチ加工が難しくなるためと思いますが、5mm以下は全て6PTになっているのが分かります。
なお、Snap-onだけは6~9mmで6PTと12PTの両方のモデルがあります。
2.比較
1) 3.2mm (①~③)
3つのブランドで一番小さな3.2mmからライナップが始まっています。
ENGINEERとSK11の表面仕上げが細密で、素晴らしい出来です。
2モデルに較べると、KTCメガネ部の作りの荒さが気になります。
2) 4.0mm (①~⑤)
TOUGHとSnap-onは4mmからラインナップが始まります。
個性豊かなモデルばっかりで、嬉しくなってしまいます。
3) Snap-on と Infarノーブランド (⑤と⑥)
Snap-on⑤は6PT仕様が9mmまであり、4~9mmで7本のセットになっています。
また、6mmより上は12PT仕様もあります。
9mm(6PT、12PT)とINFAR(未刻印モデル)⑥を比較してみました。
写真で比較しても分かりますが、極似しています。
長さ、厚みなど諸元表に出てくる各寸法をノギスで計りましたが、±5%の範囲で同一です。
横から見ても、同一形状です。(上側がSnap-on 6PT、下側がINFAR)
共にメガネ部のオフセットはプレス曲げになっています。
この事実から台湾INFARのOEMと考えたくなります。
ただし、Snap-onの裏面にはUSAの刻印が入っています。
昔のアメリカの製品には"Forged in USA”と刻印が入っていて、アメリカの工場で鍛造されたことがはっきりと分かります。
一方で、最近の製品は単なる"USA"だけになっていて、何がUSAなのだか分かりません。
例えば、海外で素材を完成させ、アメリカで刻印だけ打ってもUSAなのかもしれません。
もっと極端に言うと、アメリカで販売するのが前提なら初めからUSAと刻印してアメリカに輸入することも可能なのかもしれません。
(少なくとも日本の場合、日本だけで販売されることが明確ならば、事前にJapanと刻印したものを日本に輸入することは通関法上は可能なようで、Japanと刻印された中国製のコンビレンチが実在します)
USAの意味については現物を見ても分かることでは無く、ここから先は推測の世界に入ってしまいます。
日本製についてはもう少し先まで調べられるのですが、Snap-onの小サイズモデルについてはINFARに極似しているという事実が確認出来たところまでとします。
ちなみに、裏面のUSA右側の刻印より2014年製であることが分かります。
なお、比較に使用したINFAR(未刻印モデル)は、燕三条の部品商により日本のブランドとして販売されているINFAR OEMモデルです。(詳細は次項3.の⑥にて)
実は、ENGINEERの9mmと比較しても長さが4mm異なる以外はほぼ同じです。
Snap-onのスタンダードについて、巷ではKABOのOEMと言われているのをブログ等で良く見かけます。
でも、KABOモデルと直接比較をしてみましたが、長さは同一ながら、スパナ部のデザインが異なっています。
また、KABOは商品の企画開発はするものの、生産は外部に委託しているファブレス企業と理解しています。(下請けの生産専業メーカーが生産を担当)
したがい、KABO製はありえないと考えています。
ちなみに、Snap-onのスタンダードにもUSAの刻印が入っています。
3.ブランド別紹介
① ENGINEER
あまり目立つ商品では無いのですが、とても素晴らしい出来のモデルだと思っています。
小さいながらとてもかっちりと出来ていることに加え、表面のサテン仕上げの細密さはこれまでの日本の商品には無かったものです。
高級工具としてミラーモデルがありますが、その1つ上の作りだと感じています。
恐らく、ミラーメッキの上からブラストを掛けているのかと思いますが、良くこれだけ均一に加工できると感心してしまいます。
個人的に台湾の商品品質は日本を既に越えていると思っていて、その最たる理由がこの表面仕上げにあります。
5mmだけスパナ部が真ん丸で、別の製品が混じっているような感じになっています。
② KTC
小サイズだけでなく、3.2mmから大サイズ46mmまでのラインナップは圧巻です。
特に4mmから36mmまでは完全に1mmきざみでサイズ設定されていて、世界中のどのメーカーも追従出来ていません。
3.2mmのメガネ部粗さが無ければ完璧です。
③ SK11
このSK11の表面仕上げも綺麗です。
刻印(浮き出し文字)がもう少しくっきり入っていると良いのですが。
5本セット(3.2~5.5mm)になっています。
3.2mmから5.0mmまでの4サイズは同じ型を使っていて、スパナ部とメガネ部の孔加工サイズを変えることで対応しています。
一番大きな5.5mmだけ他メーカーと同じようにメガネ部が12PT加工になっています。
④ TOUGH
ユニークな形をしています。
TOUGH/ダイア精工は既にハンドツール事業からは撤退していますが、小さいモデルにいくつものユニークなデザインがあって、撤退してしまったのが惜しまれます。
⑤ Snap-on
このシンプルなデザインを70年以上も前に確立して、今も継続しているのですから、素晴らしいことです。
そして、Snap-onの6文字が持つブランド力は凄いと思います。
7本セットとケース。
大きさ確認のためにスタンダード12mmを一緒にさせています。
⑥ INFAR ノーブランド(ブランド未刻印)
燕三条の部品商社が運営するブランドにブランド未刻印のショートサイズが8mmから設定されていますが、INFARのOEM品になっています。
INFARブランドの実商品はスタンダードモデルにだけ存在していますが、そのINFARモデルと、このブランド未刻印のスタンダードモデルを比較し、INFARを採用していることが確認出来ています。
ショートも、長さ以外は同一形状ですので、INFAR OEMだと分かります。
ちなみに、ショートはこのブランドでは8~12mmまでの5サイズが設定されています。
⑦ ASAHI LCWU プチコンビ
小さなコンビレンチとなれば、このモデルを紹介しないわけにはいきません。
サイズ設定は他と同じように5.5mmからになっていますが、その小ささ(短さ)から"小さなコンビレンチの代表"と言っても差し支えないと思います。
ある意味で海外で一番人気のある日本のコンビレンチかもしれません。
⑧ SATA
今のコンビレンチ界は(スパナとメガネも)、KABOとINFAR、それにSATAの3社を軸に回っていると思っています。
その中で、自身のブランドのカタログモデルを手に入れることが出来るのはSATAだけです。
KABOとINFARは、ほぼOEM専業になっていますので。
そのSATAの5.5mmからのラインナップを紹介します。
ショートとスタンダードの2種がありますが、他のブランドでは短めばかりを集めましたので、ここではスタンダードを選びました。
少し長めのスタンダードです。
ミラータイプとしてはオーソドックスなデザインになっていますので、もしブランド名の刻印が無ければ、KABOやINFAR、そしてSnap-onともほとんど区別は付きません。
幸い長さに違いがあるので、スケールやノギスを使って判断する世界です。
ちなみに、アメリカのAPEXグループは、ブランドを整理していて、『今後はCresent/米国、Gearwrench/台湾とSATA/中国の3社に注力していく』と宣言しています。
⑨ Craftsman Midget Wrench (参考)
普通のコンビレンチは鋼の丸棒を高圧プレスでガシャンと鍛造して作ります。
一方で、平らな鋼板を一発でプレス打ち抜きした小さなコンビレンチ群があります。
アメリカではIgnition Wrenchと称されていて、イグニッションなど電気周りの端子接続ナット用として使用されています。
ノーブランドを含めて非常に多くの種類があります。
鋼板の厚みは、薄い板コンビ(1mm)からぼってりと厚い物(4mm)まで色々です。
代表としてCraftsmanの4234xに登場して貰いますが、一番厚い部類に属し、t=4mmあります。
打ち抜きとは言いながら、スパナ部やメガネ部の付け根に薄らと段差が出来ていて、打ち抜きのプレス圧を利用して多少は鍛造状態になっているのかと思います。
同じCraftsman系のブランドで、ビンテージなIgnition Wrench(Sears、Companion、Dunlap)もコレクションしていますので、詳細はこちらにて。
この回、終わり































