Craftsman-5
兄弟ブランド
Merit、Dunlap、Companion、Sears
Sears社は1927年にCraftsmanブランドを創設した後、1930年代から複数の廉価版ブランドも運営しています。
コンビレンチとスパナで見ていくと、Merit、Dunlap、Companion、Searsの4ブランドがあります。
まず、Craftsman創設後の1930年代に短期間だけMeritが設定されます。
さらに、1940年代から1980年代の間は、Dunlap⇒Companion⇒Searsの順で連続してブランドが切り換えられていきました。
今回はこのSears兄弟の4ブランドについて解説します。
なお、現在はCraftsman-evolvというブランドが廉価版として販売されています。
ちなみに、Dunlap/ダンラップはSears購買責任者名から来ていて、タイヤのDunlop/ダンロップとは関係ありません。
1.一覧表
・Craftsmanカタログと入手済みコレクションを基にして一覧表を作りました。
・カタログにはブランドが明記されずに"Not Craftsman"としか表示されていないモデルがありますが、3項カタログの中でそのブランドを推定しています。
・KTC製のスパナが2つのブランドに供給されていますので、スパナも解説しています。
・単品販売は無く、全てセット販売になっています。
2.商品解説
1)コンビレンチ
*冒頭一覧表のコンビレンチ部分抜粋
Sears兄弟の代表的なコンビレンチ(凹丸パネル)の変遷です。
上からDunlap①⇒Companion②⇒Sears/USA③⇒Sears/KTC④。
同一形状のモデルが、1957年から1980年代までの間に3つのブランドと2つの製造国で順番に切り替わっていきます。
何故こまめにブランドを変える必要があったのか不思議に思いますが、Sears社のブランディング戦略に迷いがあったのでしょうか?
① Dunlap/凹丸パネル、USA製、"LC"マーク
・凹丸パネルとしてDunlapが1957年カタログに登場します。
・Craftsmanに対する価格差は、6本セットでCraftsman $5.45に対しDunlap $2.65ですので、半額以下の設定となっています。
・表パネル内の右側に"LC"マークが刻印されていることから、 Lectrolite社製と思われます。
↑元になったと思われるLectorite社の1950年代TruFitモデル。
② Companion/凹丸パネル、USA製、"WF"マーク
・1970年にブランドがCompanionに切り替わります。
・裏パネル左側の"WF"マークからWestern Forge社製と思われます。
・①とほぼ同一形状ですが、②は胴長とメガネ部つながりのくびれが強めになっています。
③ Sears/凹丸パネル、USA製、"LC"マーク
・1974年からはブランド管理元のSears社自らの名称をブランド名にしたSearsに切り替わります。
・製造元は"LC"マークのLectorite社に戻ります。
・したがい、①と③は完全に同一形状です。
④ Sears/凹丸パネル、日本/KTC、"BF"マーク、ミリサイズ

・1976年のカタログに日本製、すなわちKTC製のSearsが登場します。
・"BF"マークはSearsがKTCに与えた製造記号です。
・KTCの記録によるとCraftsmanの方は1969年からKTCで生産が始まっていますので、Searsの生産はCraftsman より少し遅れて始まったものと思われます。
・また、Craftsmanと共に1987年まで生産していたとのことです。
・Sears社とKTCの関係は、Fuller社の社長が1960年に来日時にKTC製品を持ち帰り、Sears社のラボに分析を依頼したのが始まりと理解しています。
・USA製のSearsとほぼ同一形状になっていて、恐らくSearsからの図面指示に基づきKTCで鍛造型が作られたものと思います。(凹丸パネルがUSA製よりも少し短い)
・Fuller向けのコンビレンチはKTC自身や国内OEMに使用されていますので、KTCに版権があったようですが、CraftsmanとSearsモデルは他ブランドへの流用は無く、版権はSearsにあったものと思われます。
⑤ Sears/凹丸パネル、日本/KTC、"BF"マーク、インチサイズ
・Sears/KTCにだけインチサイズとミリサイズの両方が設定されています。
・と言うよりは、1970年代になりアメリカ内で日本車が多く販売され、ミリサイズの需要が大きくなってきたのだと思います。
⑥ Sears/凹丸パネル、Taiwan製
・台湾製が登場します。
・KTCは1987年頃までCraftsmanとSearsモデルを製造していたと聞いていますので、この台湾製は1990年前後からと思います。
・カタログには掲載されておらず、廉価版はCraftsmanカタログには掲載しないとの方針変更があったものと思います。(カタログに掲載しながらブランド名は書かず、Not Craftsmanとだけ表示している場合もあり、廉価版の取り扱いが雑過ぎでした)
・KTC製(写真上側)と台湾製(下側)を比較します。
・凹丸パネルという形状は踏襲していますが、長さは短くなり、Searsのロゴも斜め文字に変更されていて、これまでとは全く異なるモデルになっています。
⑦ Companion(別ロゴ-1)/凸丸パネル、製造国表示無し
・Companionにロゴデザインが全く異なる凸丸パネルのコンビレンチがあります。
・カタログ未掲載、製造国表示無し、ロゴ字体違いより、Searsとは関係の無いCompanionでは無いかと当初は考えていましたが、このデザインのCompanionロゴが入ったSearsの電気ドリルを見つけましたので、Sears製と分かりました。
・カタログに掲載されていませんので、時期は不明です。
・Companion⑦~⑨にはインチサイズとミリサイズの両方が設定されています。
・登録商標から追いかけようと思ったのですが、Searsは2,500件以上の商標を登録していて、Comapanionロゴの変遷は残念ながら追いかけきれませんでした。
⑧ Companion(別ロゴ-2)/凸丸パネル、製造国表示無し
・⑦と同じく凸丸コンビレンチで、ロゴがさらに別デザインのCompanionモデルがあります。
・こちらはAir ToolマニュアルよりSearsの正規ロゴと確認出来ました。
・⑦と同様にカタログ未掲載、製造国表示無しですが、⑦との時期の差は不明です。
⑨ Companion(別ロゴ-1)/フラット梨地パネル、製造国表示無し
・梨地フラットのCompanionモデルもあります。
・ロゴは⑦と同じです。
・これもカタログ未掲載、製造国不明で、販売時期も不明です。
・1990年代に台湾工具が台頭し始めた時に台湾メーカーが得意としていた梨地仕上げの様ですので、時期としては2000年前後かと推察します。
・Companion同士で凹丸パネル②と比較すると、フラット⑨はロング仕様になっていることが分かります。
2)スパナ
⑩ Dunlap/凹丸パネル(短い)、USA製、"V"マーク
・Dunlapの初代スパナで、1949年~55年のカタログに登場します。
・裏面のVマークより、Moore Drop Forgin社製と思われます。
・一部の表面に"X"マークも入っていますが、これは何のマークでしょうか?
・Dunlapロゴの入った赤いホルダーがとても気に入っています。
⑪ Dunlap/凹丸パネル(長い)、USA製
・Dunlapスパナの第2世代で、1957年~69年のカタログに登場します。
・製造記号が無いため、どのメーカー製なのか特定できません。
⑫ Companion/凹丸パネル、USA製、"WF"マーク
・ブランドがDunlapからCompanionに切り変わって1970年~73年カタログに登場します。
・"WF"マークよりWestern Forge社製と思われます。
⑬ Companion/凹丸パネル、日本製KTC、"BF"マーク、
・この後に出てくるKTC製のSears⑮、⑯と同一のCompanion(KTC製)が何故か存在します。
・カタログには未掲載です。
・スパナ部を除きKTC国内向けS10と同一形状になっています。
・Companionは丸型スパナ、KTC S10はやり型スパナ。
・コンビレンチではSears専用モデルであることから、版権はKTCでは無くSearsが持っていたと推測していますが、スパナに関してはSeras専用モデルでは無く、KTC S10のデザインを流用した理解しています。
⑭ Sears/凹丸パネル、USA製
・⑫のUSA製Companionを引き継ぐ形で、1974年カタログからSearsに移行したと理解しています。(カタログ上ではNot Craftmanとしか説明されていませんが、USA製Searsモデルが存在することから、カタログに掲載されているのはSearsモデルと推定しています)
・"LC"マークより、Lectrolite社製と思われます。
⑮ Sears/凹丸パネル、日本製KTC、"BF"マーク、インチサイズ
・1977年~81年カタログに日本製として掲載されているKTC製Searsモデルです。
・KTC製Companion⑬と同一モデルです。
⑯ Sears/凹丸パネル、日本KTC、ミリサイズ
3)イグニッションレンチ
⑰ Dunlap/スパナ仕様、第1世代、USA製、製造記号BT
・戦時中の1942年カタログに単年で登場するDunlapイグニッションレンチ(スパナ仕様)です。
・"DUNLAP"ロゴ右側のBTマークより、Vlchek製と思われます。
・他のSears兄弟イグニッションレンチがプレス打ち抜き風なのに対し、このモデルだけは鍛造により作られているのが分かります。(イグニッションレンチと言うよりはアングルスパナ)
・スパナ底部がヘキサゴン(六角/ボルト頭部の形)になっているのが特徴です。
・プライヤーなど他の工具と共にイグニッションセットの一部になっています。
・同じ品番のイグニッションセットが1939年カタログにも登場していますが、Craftsmanになっていますので、Dunlapとしてはこれが最初のモデルになります。
↑↓セットの内、プライヤーとイグニッションレンチ(4本組み)だけ入手出来ました。
⑱ Dunlap/スパナ仕様、第2世代、製造国表示無し
・1948年~60年カタログに登場するスパナ仕様です。
・製造国表示はありませんが、年代から考えるとUSA製と思います。(日本製がアメリカに頻繁に登場する前の時代)
・鍛造なのかプレス打ち抜きなのか判別できませんが、プレス打ち抜き時に一緒に鍛造工程も加えてあるように思えます。(いずれにしても簡易製造)
・"DUNLAP"のロゴが、会社ロゴと同じように中央が縦方向にワイドになりました。
⑲ Dunlap/コンビレンチ仕様、製造国表示無し
・1948年~60年カタログに登場するイグニッションレンチのコンビレンチ仕様です。
・製造国表示はありませんが、この時代はUSA製だと思います。
⑳ Companion/コンビレンチ仕様、USA製
・ブランドがCompanionのコンビレンチ仕様です。
・1964年~69年カタログにNot Craftsmanとして掲載されているのがCompanionだと思います。
㉑ Sears/コンビレンチ仕様、ミリサイズ
・1974年~81年カタログにはブランドSearsとして掲載されています。
4)Merit(スパナのみ)
㉒ Merit/第1世代、"AF"マーク
・初のCraftsman廉価版ブランドとして1934年カタログにMeirtスパナが登場します。
・表左側の"AF"マークは同時代のCraftsman初代コンビレンチにも入っていて、Billings & Spencer社製と思われます。
・ロゴ"MERIT"が湾曲した特徴的な字体になっています。
・同じ浮き出し刻印ながら、ロゴ"MERIT"が普通のブロック字体になっています。
・製造記号が刻印されていませんので、どのメーカー製かは特定できません。
㉓ Merit/第2世代、"AF"マーク
・第2世代で、刻印が打刻に変わります。
・湾曲字体です。
・同じく"AF"マークが入っていますので、Billings & Spencer社製と思われます。
㉔ Merit/アングルスパナ-1(両側アングル)
・アングルスパナで、両サイドのスパナにアングル(強いオフセット/約90度)が入っています。
・浮き出し刻印ですので、スパナ第1世代㉒と同時期と思います。
・ブッロク字体になっています。
*写真:Alloy Artifactより
㉕ Merit/アングルスパナ-2(片側アングル)
・同じくアングルスパナですが、片側だけに強くアングルが入っています。
・打刻刻印であることから、スパナ第2世代㉓と同時期と思います。
・Dunlap初代イグニッションレンチ⑰と同じようにヘキサゴンスパナになっています。
・ブランドがMeritからDunlapに変わる間に第2次世界大戦の空白期間がありますが、同じヘキサゴンスパナであること、ならびに胴長とスパナ部のつながり方が同じであり、この㉕とDunlap初代イグニッションレンチ⑰にはデザインの連続性があります。
3.カタログ
CraftsmanカタログからDunlap、Companion、Sears、MeritならびにNot Craftsmanと表示されたコンビレンチとスパナを取り上げます。
カタログと比較出来るように冒頭の一覧表を再掲載します。
ちなみに、カタログ内容などをまとめた結果がこの一覧表ですので、商品情報の全てがここに詰まっています。
★コンビレンチ&スパナ
↑⑩…1949年~55年(Dunlap)
第1世代スパナが短い凹丸パネルで登場。
↑①&⑪…1957~69年(Dunlap)
1957年にコンビレンチが登場。
スパナは第2世代に変わり、凹丸パネルが長くなります。
↑②&⑫…1970年~73年(Companion)
形状は変わらず、Companionブランドに変更。
↑②&⑫…1971年~73年(Companion)
異なる本数のセットが追加。(商品に変化無し)
↑③&⑭…1974年、75年(No Craftsmanのみで、ブランド表示無し)
前年の1973年まではCompanion、1977年からはSears/KTCとカタログ表示されていて、かつSears/USAモデルが存在することから、この1974年、75年はそのSears/USAと考えるのが妥当。
↑⑤&③、⑭…1976年(No Craftsmanのみで、ブランド表示無しが継続)
インチサイズは1974年、75年に引き続きSears/USAと推測。
一方で、ミリサイズが新登場。
ミリサイズはSears/KTCにしか無いため、ミリサイズのみKTCを先行採用したと推測。
↑④、 ⑤&⑮、⑯…1977年~81年(From Japan、Not Craftsman)
From JapanよりSears/KTCと断定できます。
↑④、⑤&⑮、⑯…1978年カタログ(文頭にSearsと表示)
SearsとImportedよりSears/KTCと断定できます。
★イグニッションレンチ
↑⑰…1942年カタログ(Dunlap)
イグニッションレンチ(スパナ仕様)を含むメタルケースセット。(戦時中の製品)
イグニッションレンチ(スパナ仕様)の第1世代。(第2世代とは片側のオフセットが異なります)
↑1949年、52年カタログ(Dunlap)
イグニッションレンチがコンビレンチタイプに変わり、ケースもプラスチックに。
コンビレンチは恐らく1952年~57年と同じ。
↑⑱&⑲…1954年~60年(Dunlap)
イグニッションレンチだけのセットとして、スパナとコンビレンチ。
スパナは第2世代。(1954年の第1世代とは片側のオフセットが異なります)
↑⑳…1964年~69年カタログ(ブランド表示はNot Craftsman)
恐らく1954年~60年Dunlapコンビレンチ仕様⑲のブランド違いでCompanion。
★Merit
↑㉒…1934年カタログ
4.各種情報
1) ブランド説明 by Vintage Machinery
2) 商品解説 by Alloy Artifact
3) 製造記号と製造メーカー一覧 by Garage Journal
4) Craftsmanカタログ(1939年~94年) by Internet Archive
【補足-1】 現行evolv
・参考まで、現行の廉価版evolvです。
・今時のミラーフラットです。
・製造記号Z-AGより現行Craftsmanと同じく中国製で2016年生産と分かります。
【補足-2】 セット写真
前述したようにSears兄弟は廉価版のため単品販売は無く、全てセットとして販売されていました。
未使用のセットとして入手出来たものを掲載します。
④ Sears/凹丸パネル、日本/KTC、"BF"マーク、ミリサイズ
・KTC製Searsコンビレンチの11本セット。
⑤ Sears/凹丸パネル、日本/KTC、"BF"マーク、インチサイズ
・ミリサイズは緑、インチサイズは黄色にして、ケースを色分けしていたことが分かります。
⑥ Sears/凹丸パネル、Taiwan製
・台湾製Searsの6本セット。
⑦ Companion/凸丸パネル、製造国表示無し
・Companion以外には見事に何も表示されていません。
・普通なら会社名としてのSearsや品番、さらに製造国が印字されているのですが。
⑲ Dunlap/コンビレンチ仕様、製造国表示無し
↑初期(戦争直後)は布製ケースでした。
↓カタログ上ではビニールケースだけと言うことになっています。
⑳ Companion/コンビレンチ仕様、USA製
この回、終わり







































































