ALUTOOL
アルミ合金による軽量工具11種
グッドデザイン賞・金賞
by 新潟県作業工具協同組合
【2021年6月23日追記】
グッドデザイン賞の金賞に輝いた割には商品群の多くが販売されず、全貌が分からずに幻の存在だったALUTOOL。
実物を探し続けていましたが、販売されなかったスパナとメガネを手に入れました。
さらに、パンフレットも入手し、全11種の詳細が分かりましたので、全面的に書き直しました。
ALUTOOLを軸にして日本の工具生産の一大拠点である燕三条を紹介する形になります。
- - - - - ◇ - - - - - ◇ - - - - -
アルミツールを略して"ALUTOOL"。
燕三条を拠点とする新潟県作業工具協同組合が主催するブランドです。
その組合企業10社がそれぞれ得意とする工具11種をアルミ合金で作成し、それをALUTOOLとして販売(一部のみ)したものです。
コンセプトは軽量化。
『世界で初めてアルミ合金を工具に使用』と謳っていて、コンビレンチやメガネで50%の軽量化を実現しているとのこと。
ALUTOOL工具一式として1997年グッドデザイン賞の金賞を受賞しています。
なお、これまでにハンドツール業界はコンビレンチ絡みで5回のグッドデザイン賞を受賞していますが、金賞はALUTOOLだけです。
アルミ合金A7001が使われていて、ゼロ戦に使われていたA7075(超々ジュラルミン)よりも耐力の強いアルミ合金になっています。
実際に販売されたのは一部だけだったものの、工具組合が音頭を取り、軽量化を商品として具現化させたことに意義があったものと思います。
グッドデザイン賞の金賞に輝いたことで、商品開発の目的は達したのかと思います。
ちなみに、国や県の補助金を受け、燕三条の一大プロジェクトだったようです。

↑↓写真カード(はがき大)の表と裏
1.一覧表
・全11種、製造メーカー10社。
・販売されなかったスパナ②とメガネ③のサンプル品を入手。
・モンキーレンチ④は、メーカーカタログにも掲載され、販売実績あり。
・ラジオペンチ⑤とニッパ⑥は、販売実績があり、この2点だけは今でも入手可能。
・⑦~⑩には単品の販売パンフレット(3項に掲載)があり、販売された可能性あり。
・特に⑦、⑧には販売用のJANコードが掲載されている。(⑨、⑩には掲載無し)
・シャコ万力⑪は単品パンフレットも無く、写真以外の情報無し。
・私にとって肝心のコンビレンチ①は、1年前に写真を入手出来ただけのまま。
2.商品解説
① コンビレンチ(ABC/相場産業)
・相場産業/ABCがコンビレンチの生産を担当しました。
・相場産業はチタンやステンレス、アルミなど非鉄金属の加工を得意としています。
・ALUTOOLの全体像が全く分かっていなかった1年前に、『非鉄なら相場産業だろう』と思い、問い合わせてみたら、コンビレンチだけビンゴでした。
・サイズ22mmと24mmの2本だけが生産され、販売はされなかったとのこと。
・実物は確認出来ていませんが、相場産業が生産時に撮った記録写真を入手していました。
・メガネ部にディープオフセット(60度)が付いた所謂DIN形状。
・重量は従来のコンビレンチ比で50%とのこと。
・アルミ合金素材の強度を補強するためと思いますが、メガネ部には別の鋼材が埋め込まれているようです。
・また、スパナ部も片側にエラが張り出す形で補強されています。
・握りやすくするために胴長部の側面にウェーブ加工が施されていて、ALUTOOL製品群に共通するデザインです。(ウェーブ加工はドライバー⑩とシャコ万力⑪以外の全てに採用)
・私にとってはコンビレンチの入手が最大の目的であり、生産された2本の行方を追いかけましたが、生産元にもブランド元にも無く、行方不明のため入手は断念しました。
② スパナ(IKK/池田工業)
・コンビレンチの入手は断念しましたが、スパナを手に入れました。
・サイズは19x22、22x24の2種。(生産されたのは2本だけ?)
・重量は従来比で60%とのこと。
・当時のKTCスパナS100の同サイズ19x22と比較すると、重量は64%になっています。
(ALUTOOL…L=220で136グラム、KTC S100…L=207で200グラム、計算は長さで補正)
・グッドデザインを受賞した時の銀色では無く、赤いコーティング(アルマイト処理)がなされています。
・この赤バージョンがどの様な経緯で生産されたのかは不明ですが、後述するKEIBAのラジオペンチにも赤バージョンがあります。
・コンビレンチと同様にスパナも販売されていません。
・スパナ部の片側にエラが入っている形状がコンビレンチと同じになっていますので、スパナの生産も相場産業と思っていたのですが、パンフレットより池田産業製と分かりました。
・『デザイナー名:(株)オープンハウス』となっていますので、ウエーブ加工を含め全体を同じデザインで統一させたものと思います。
③ メガネ(AIGO/相伍工業)
・ネガネも手に入れることが出来ました。
・サイズはスパナと同じで19x22、22x24の2種。
・重量は従来比50%。
・相伍工業/AIGOの生産になっています。(裏面にAIGO刻印)
・スパナと同じ赤バージョンですので、ALUTOOLブランドのコーディネーターである新潟県作業工具協同組合が何らかの理由でスパナとメガネの特別バージョンを追加で作成依頼したのかと思います。
・または、生産したのは2本だけで、その内の1本に赤いアルマイト処理を後から追加?
・コンビレンチ、スパナと同様に販売されていません。
・コンビレンチにはメガネ部に鋼材が埋め込まれていましたが、このメガネレンチには鋼材補強が無く、本気締めをした時に強度が持つのかなと心配になります。
④ モンキーレンチ(AIGO/相伍工業)
・相伍工業/AIGOがモンキーレンチの生産を担当しました。
・くわえ部は鋼、下あご部はクロモリが使われているとのこと。(重量は従来の60%)
・相伍工業は単独で2年後に1999年グッドデザイン賞を再度受賞しています。
・下写真の上側(300mm)が1997年グッドデザイン賞版で、下側(250mm)が1999年グッドデザイン賞版。
・実際に販売され、カタログにも掲載されていました。(2002年~08年)
⑤、⑥、⑦ ペンチ3種
・ラジオペンチ⑤(マルト長谷川工作所/KEIBA)とニッパ⑥(スリーピークス技研/3peaks)は実際に販売されていて、今でも通販で入手可能です。(ラジオペンチ、ニッパ)
・ラジオペンチ/KEIBAとニッパ/3peaksのカタログページをこの下に掲載します。
・ペンチ⑦(涌井製作所/DENKO)には販売店向け単品パンフレットがあり、次の3項に掲載。
・そのパンフレットにJANコード(販売用製品コード)が表示されていますので、販売されていた可能性があります。
・但し、涌井製作所は2013年に倒産していて、具体的な販売情報は見つけられません。
↓マルト長谷川製作所/KEIBAのカタログVol.80より
↓3peaksのカタログNo.1(1999年2月)より
⑧ ウォーターポンププライヤー
・五十嵐プライヤー/IPSのウォーターポンププライヤーです。
・ALUTOOL全体パンフレットの表紙画像に採用されています。(単品パンフレットもあります)
・過去のIPSホームページ(2002年4月~2011年5月)に受注生産品として掲載されていますので、販売されていたようです。(インターネット過去ログ/Internet Archiveにて確認)
・但し、2013年にHPがリニューアルされた時にHPから消えています。
↑ホームページの過去ログ(2002年4月分より)
・赤枠内がALUTOOL/品番AW-270の説明で、表示が乱れていますが、受注生産と書かれているのが分かります。
⑨、⑩、⑪ 残り3点
・ラチェットレンチ⑨(旭金属工業/ASH)とドライバー⑩(兼古製作所/ANEX)については単品パンフレットがありますので、次の3項パンフレットを参照して下さい。
・但し、⑨、⑩共にパンフレットに品番もJANコードの表示もありませんので、販売の具体性を感じません。
・Internet Archiveで調べると、旭金属は1999年10月、兼古製作所は2001年1月から会社HPの過去ログが残っていますが、両社ともに現在も含めて会社HPにALUTOOLは登場しません。
・シャコ万力⑪(佐藤技研/CRAB)は、単品パンフレットが無く、また会社HPも無いようですので、写真以外の情報がありません。(組合による企業紹介は、こちら)
・ちなみに、ALUTOOL全体パンフレットによると、シャコ万力で最大の軽量化(45%)が実現できているとのこと。
★合金種類
ALUTOOLにはアルミ合金のA7001が使用されています。
航空機など野外で水にさらされる機会が多い場合は耐腐食性能が高いA7075を選択し、屋内使用の場合は耐力性能がより高いA7001を選択するようです。
ちなみに、超々ジュラルミンと呼ぶことが出来るのはA7075だけとのことです。
したがい、パンフレット内でA7001を超々ジュラルミンとアルミ合金の2通りで説明していますが、超々ジュラルミンは誤りで、アルミ合金が正しい呼び方になります。
※参考:ジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミンについて
(耐食性という意味ではステンレスの方が優れていますが、ステンレスは軽量化にあまり寄与しないのが分かります)
3.パンフレット
今回、全体パンフレットと単品パンフレット5種を入手できたことで、ALUTOOLの全体像が明確になると共に、かなり詳細まで分かってきました。
特に全11種の生産メーカーが分かり、あらゆる調査が可能になりました。
1) ALUTOOL全体パンフレット
↑鳥を見立てた足が描かれています。
↓各商品毎に特徴が説明されています。
↓各商品の生産担当企業が明記されています。
2) 単品パンフレット
4.商標と特許
1)商標
"ALUTOOL"は1997年に商標登録されています。
そして、10年後の2008年に商標権は終了しています。
2)特許
新潟県作業工具協同組合がALUTOOLで特許を取得しています。
『軽合金製ペンチ』という名称で特開平8-276368として1995年4月出願、1996年10月公開になっています。
特許名称と添付図、出願時期より、涌井製作所が生産を担当したペンチ⑦に関するものと思います。
出願が涌井製作所では無く、新潟県作業工具協同組合になっているのが興味深いところです。
発明者に3名の方が登録されていて、涌井製作所と相伍工業、相場産業の当時の社長さんの名前と思います。
実は、パンフレットに『意匠登録出願済』と書かれていて、握り部のウエーブ加工等のALUTOOLデザインのことかと思い、特許情報ページ(実用新案、意匠、商標も)で検索したら、ペンチ特許がヒットしたものです。(肝心の意匠登録は見つかりませんでした)
J-PlatPatの検索欄に『新潟県作業工具協同組合』と打ち込むとペンチ特許が表示されます。
↑PDF版の最初のページだけ掲載。(右下のペンチ写真は比較のために後から追加)
5.各種情報
★新潟県作業工具協同組合のホームページ/HP
・現在のHP…最近は更新されていないようです。(加盟企業だけは最新にしてある模様)
・2002年12月時点のHP…2002年当時は加入企業が約2倍あり、ALUTOOL立上げ直後の状態も分かりますので、当時の燕三条工具業界の情報が詰まっているこちらの方が読み応えがあります。
*Internet Archiveによる過去ログですので、立ち上がりに時間が掛かります。
*ところどころで写真が開かない場合がありますが、ページ上部のバーコードような掲載年月を変更することで表示される場合があります。
【2002年12月HPは工具生産の一大拠点である燕三条を理解するための超一級資料だと思いますので、ハンドツールがお好きな方はじっくりと読み込むことをお勧めします】
下表はコンビレンチとスパナに関する2003年4月時点でのサイズ毎の製造メーカー一覧です。
コレクションを進めるにあたって、とても役に立っています。(事業撤退や廃業により既に存在しない企業/ブランドも掲載されています)
NARITA/NRNの存在もこの一覧表で知りました。
↑コンビレンチ
↓スパナ
コンビレンチとスパナ以外のハンドツールについても同じ一覧表がこちらに載っています。
★組合加入企業
2000年頃の組合加入企業リストです。
赤枠で囲った12社が継続加入していて、さらに(株)東亜インターシステムが新たに加わり、2021年現在は加入13社と理解しています。
ちなみに、ALUTOOL生産に関わった10社の内、2社(相伍工業、涌井製作所)は倒産しています。
★燕三条ブランド
コンビレンチに関する燕三条ブランド(メーカー&商社)をまとめた私のブログは、こちら。
全部で33のブランドを掲載しています。
6.技術レポート
アルミ鍛造による作業工具の開発…『鍛造技報』1996年3月号
7.グッドデザイン賞
過去にグッドデザイン賞を受賞したハンドツール(コンビレンチ絡み)は、全部で5点あります。ALUTOOLを除く4点を紹介します。
1) 1997年 外国商品賞…Snap-on SOEX&SRSシリーズ
2) 2008年 旭金属工業レボウェーブシリーズ
3) 2011年 台湾/Ultra-light multi-material wrench
Metal Industries Research & Development Centre
このデザイン、好きです。
保守的なデザインばかりのコンビレンチの中で、まさしく群を抜く存在です。
2011年時点で販売予定となっていますが、本当に販売されたのでしょうか?
物色中です。
4) 2014年 TONE次世代工具シリーズ
2013年に発売されたTONE次世代工具シリーズ(ラチェットハンドルとレンチ類)が受賞。
この回、終わり


































































