世の中半沢直樹が大ブーム。
会社の人もみんな見ているし、僕だって「篤姫」以降、堺雅人さんの演技力に圧倒されているので、毎週欠かさず見ている。
原作も累計200万部を超えたとか。
さて、そんな大人気ドラマなんだけど、ギモンが一つ。
半沢の同期の近藤の扱いだ。
ドラマ第1話で、近藤は過去の話として、配属先の支店で思うように業績を上げられず、支店長にいびり倒されて、揚句に病に倒れた描写がある。
その病の名前が『ストレス性統合失調症』。
・・・なんだそれ。
統合失調症の原因なんて、外因性なのか内因性なのか心因性なのか複合型なのか、いまだその結論は全く出ていなかったと思うのだが。
もちろんストレスも原因の一つとして研究はされているが、少なくとも『ストレス性』なんていうものは、僕の知っている限り存在しない。
ドラマを見ている限りにおいては、その後の近藤はストレスに追いやられて病気を再燃させそうなシーンはあったが、少なくとも統合失調症のような描写は見られない。
僕はここで、『ドラマ化にあたり、病名をよりインパクトが強いものに書き換えたか?』という疑いを持った。
現に、半沢と近藤は原作では剣道をやっていないし、花は専業主婦ではないし、大和田常務の出身銀行も変わっている。
とすれば、安易に統合失調症の名を使ったテレビ局が罪深いのだが、原作を読んでみたら実は病名は原作通りだった。("ストレス性"はドラマで付加されたワードだが)
池井戸潤が安易に統合失調症を小説に取り入れていたのだ。
ドラマではさらっと流されたが、原作では近藤の病態がより詳しく書かれている。
支店長にいびり倒されて統合失調症を患ったのはドラマと一致しているが、その後、半沢に対して
「人事部が電波で俺たちをコントロールする実験をしている」云々、いかにも統合失調症らしい言動があった。
この時点で、僕のようなメンヘラからすると、『やめてくれよ』と思うのだが、さらにおかしな描写が見られた。
いわゆる第2部にあたる『オレたち花のバブル組』では、近藤が出向先での人間関係に悩み、"抗鬱剤"を飲もうかどうか迷いつつ、妻にビールを勧められてそっちを飲むことにしているのである。
この時点で、池井戸潤は銀行業界には詳しいけれど、精神医学についてはまるで誤解していることが解る。
・統合失調症で抗鬱剤を、用いないわけではないけれど、決して主剤でない。
(統合失調症の主剤は抗精神病薬=メジャートランキライザーだ)
・抗鬱剤は頓服で飲む薬ではない。また、アルコールとの2択を迫られて、アルコールを選択するなど愚の骨頂。(抗不安薬=マイナートランキライザーだったら納得できるのだが)
そもそも原作では「治った」扱いされているが、時間軸と精神状態を見る限り投薬を続けるべき状態であり安易に「治った」と書かれても、と思う。
このような内容がさらっと書かれている小説が、既に200万部売れている。
多分、精神疾患に無縁な、大半の読者にとってこの描写は「どうでもいいこと」であり、僕のような指摘は「重箱の隅をつつく」行為に見えると思う。
だけど、「統合失調症ってストレスで発症するんだー」「1年休職すれば治るんだー」と誤解する人も少なからずいると思う。
統合失調症はそんな甘い疾患ではない。
(僕の患っているSADだって何年も治療を続け、未だ寛解止まりなのに)
池井戸潤は、元々ミステリー作家なんだから、精神医学についてもきちんとした知識を持ってほしいと思う。
持った上で、安易に「半沢直樹シリーズ」のような娯楽小説に、精神疾患を持ってこないでもらいたいと思う。
わざわざ「統合失調症」という具体的な名称を出さなくても、曖昧に「過労で倒れた」レベルの描写でもストーリーは成り立つはずだ。
僕のようなメンヘラブロガーが、直木賞作家にこのような物言いをつけるのは僭越かもしれないが、逆説的に言えば、直木賞作家だからこそ、こういう細かい部分もきちんとしてほしいのだ。
今回は池井戸ファンから叩かれそうなエントリではあるが、彼の作品は面白いがゆえに、書かずにはいられなかった。
どうかご容赦を。