昔の暮らしにあった、体をいたわる知恵

痛いところがあると、思わずそこに手を当てる。
お腹が痛いときには、お腹に手を置く。
子どもがぶつけたところを、お母さんがそっとさする。
私たちは昔から、そんなことを自然にしてきました。
治療や処置のことを「手当て」と言います。
「手を当てていたことから、この言葉が生まれた」
と紹介されることもありますが、語源には諸説あるようです。
でも、手を当ててもらったときに、
なんとなくホッとした経験がある方は多いのではないでしょうか。
今回は、昔の暮らしの中にあった「手当て」をのぞいてみましょう。
💫「罨法」って知っていますか?
今回の「へぇ!からだの言葉」は、
罨法(あんぽう)
です。
あまり聞き慣れない言葉ですよね。
罨法とは、体の一部を温めたり冷やしたりして、
痛みや不快感をやわらげるために行われるケアのこと。
温めるものを温罨法(おんあんぽう)、
冷やすものを冷罨法(れいあんぽう)と呼びます。
温かいタオルを当てたり、
冷たいものを当てたりすることも、その考え方につながります。
昔の「手当て」にも、この温める・冷やすという知恵がたくさん登場します。

💫えっ、豆腐や里芋まで? 昔ながらの手当て
薬や医療用品が今ほど身近ではなかった時代、
人々は食べ物や植物など、身の回りにあるものを使って体をいたわってきました。
驚いたのがその種類の多さです。
代表的なものを少し見てみましょう。
| 昔ながらの手当て |
伝統的に使われてきた場面の例 |
| しょうが湿布 |
冷え、肩や腰のつらさなど |
| 里芋パスター |
腫れや炎症、関節のつらさなど |
| 青菜パスター |
発熱時、熱をもった腫れなど |
| 豆腐パスター |
発熱時、肌のほてりなど |
| こんにゃく湿布 |
冷え、お腹や腰のつらさなど |
| からしパスター |
咳・のど、胸のつらさなど |
| 大根おろしパスター |
熱をもった腫れ、のどのつらさなど |
| しょうが油 |
筋肉や関節のつらさ、冷えなど |
| 番茶・梅など |
のどや胃腸など、暮らしの中の手当て |
「熱が出たら豆腐?」
「腫れたところに里芋?」
今ではちょっと不思議に感じるものもありますよね。
ここで大切なのは、
これは昔からどのように使われてきたかというお話で、
これらが病気を治すという意味ではないことです。
すべての効果が、現在の医学で確認されているわけでもありません。
それでも、
身近にあるものを使って少しでも楽になるよう工夫してきたことを知ると、
昔の人と体との付き合い方が見えてきます。

💫こんにゃくを体に当てる?「こんにゃく湿布」
数ある昔ながらの手当ての中から、
今回はこんにゃく湿布をご紹介します。
こんにゃくを温め、タオルなどで包んで、
お腹や腰などを心地よく温める方法です。
考え方としてはとてもシンプル。
こんにゃくを治療薬として使うというより、
温かさを利用した昔ながらの温罨法の一つ
と考えると分かりやすいと思います。
やり方は、
こんにゃくを温める
↓
タオルでしっかり包む
↓
熱すぎないか確認する
↓
お腹や腰など、温めたいところへ
温かさが気持ちいいと感じる範囲で行います。
ここで気をつけたいのが低温やけど。
「熱くないから大丈夫」と思っていても、
同じ場所を長時間温め続けることで、
皮膚の深いところまでやけどすることがあります。
心地よい温度に調整し、皮膚の状態を確認しながら使いましょう。

💫こんにゃく湿布と、びわの葉
こんにゃく湿布には、
びわの葉を一緒に使う方法も伝えられています。
びわの葉は昔から、お茶にしたり、温めて体に当てたりと、
暮らしの中の手当てに使われてきました。
こんにゃく湿布では、
びわの葉を体に当て、その上から温めたこんにゃくをのせて、
じんわり温める方法もあります。
昔から、びわの葉が体の中の不要なものを吸い取ってくれる、
いわゆる「毒出し」の手当てとしても伝えられてきたそうです。
実際に使っていると、
びわの葉の色が少しずつ変わっていくのも興味深いところです。
葉の状態を見ながら、私は2〜3回ほど使って、新しい葉に替えていました。
そして、この手当ては私自身にとっても、とても思い出深いものです。
私は22歳のとき、左の卵巣のう腫が見つかり、のう腫の摘出手術を受けました。
そして42歳ごろ、今度は反対側にも卵巣のう腫ができました。
そのとき、自分の体のために取り入れていた手当ての一つが、
このこんにゃく湿布とびわの葉でした。
22歳のときとは違い、
このときは手術には至らず、その後の経過を見ていくことができました。
私にとって「手当て」は、本で知った昔の知恵だけではありません。
自分の体に実際に手をかけ、向き合ってきた経験でもあります。

💫昔の知恵と、今の暮らし
昔ながらの手当てを調べてみると、本当にたくさんの方法があります。
温める。
冷やす。
手を当てる。
身近な植物や食べ物を使う。
そこには、
今とは違った形で自分や家族の体をいたわってきた暮らしの知恵があります。
私は、昔から伝えられてきたものも、
現代になって分かってきたことも、
どちらか一方だけではなく、いろいろ知っていたいと思っています。
そして、自分の体に合うものを考え、選んでいく。
もちろん、
強い痛みや高熱、息苦しさなど、
いつもと違う症状があるときには、必要な医療の力を借りることも大切です。
自分でできることを知っている。
そして、必要なときには人の力も借りる。
それも「手当て」の一つなのかもしれません。
💫からだメモ
「手当て」という言葉には、なんだか温かさがあります。
痛いところに手を当てる。
冷えたら温める。
疲れたら休ませる。
特別なことをする前に、まず自分の体に少し手をかけてあげる。
昔から伝えられてきた知恵の中には、
今の暮らしにも生かせるヒントがたくさんありそうです🍃
