【ふたつの誕生日】

4月14日   涼一   1歳

4月28日   静香  22歳

こんなに平和で いいのだろうか?


麓郷の地に春が芽吹きはじめた頃
涼は1歳の誕生日を迎えた
色んな事があったのに ここまで成長してくれてありがとう
一升餅を背負い ささやかながら誕生会なるものを開催した

富良野の父も気に止めてくれていたのだが
…まだ平田家の者には会いたくないと検診で富良野に行った時に涼に何か買ってやって欲しいとお祝いをくれた
その顔は悲しげに思えた

人を傷付けるのは ほんの一瞬だが その傷が癒えるには その何十倍もの時間がかかる

静香達の独立を願っていただけに その落胆は大きかった

静香は7月に生まれ来る赤ちゃんと涼を
支えに農作業と家事を頑張る毎日をおくっていた


涼の1歳の誕生日も義母は仕事に行ったが静香に『今日は畑に出なくていいよ!』
と言った 驚く言葉だった
山部から1日休みを貰ったといって由里子が来た

『ケーキを焼きましょう』と由里子は
微笑む…でも
『お姉さん うちにはオーブンは ないですよ』と静香は話す

大丈夫だと由里子は応えた

『お姉さん…どうやって?』不思議顔の
静香に

『物は使いようよ!材料は買ってきたしね』なかなか 種を明かさない

『朋美~涼くんを頼むわよ』と居間にいる長女に言う由里子
『わかってるょ~』キャッキャッ…と
じゃれ合う声が既に聞こえていた

由里子は圧力鍋ならここにもあるはずだと静香に訊ねる
『あります❗️ご飯を炊く時 たまに使うので…』時々電気炊飯器で炊くより美味しく炊けるので使用していた
『圧力鍋でスポンジケーキが焼けるんですか?』
由里子は返事の代わりに微笑むと得意気に作りはじめた
静香は言われるままに動くのみ…

『はい!卵を割って…卵黄と卵白を分けてね』奮闘の結果 見事にスポンジケーキが焼き上がった

『すご~い!凄いです❗️』
そして『小百合さんも居たならもっと楽しいのにね』と話す
スポンジケーキに生クリームを塗りデコレーションしながら 色んな話をした
『静香ちゃん、聞いていいかな?』
静香は何だろう?『こわい~』と言いながら由里子の質問を待った
由里子は突然目に涙を浮かべて…言葉に詰まっている様だった

『お姉さん?』

『ごめん!ごめん!』ひと息入れて…

『静香ちゃん どうして?あんなにあなたを いじめて富良野のお父さんまで怒らせた 母や小百合を思いやれるの?淳は家族が増えても家を出る事は問題ないと言ったんでしょ?富良野の街で4人で暮らした方が楽だろうに…小百合の事も仲が良くなった事に…どうして?と聞く事もないと思って…黙っていたけど…』まだ由里子の話しは 続きそうなので椅子を勧めた
由里子はざっくり椅子に腰を下ろし
『小百合は姉の私が言うのも妙なんだけど…凄いあまのじゃくでしょ…何故って?』

由里子は 今の平田家の現状を長女としては嬉しいけれど…本当は静香が我慢しているからなのでは ないか?と心配していた
静香は穏やかに 話した


 佐々木さんの死は自分にとって最終決断となった出来事だった
こんなに素敵な仕事を淳から奪っても
その先に良い事も幸せも無いんじゃないか…そう思った

静香の妊娠を知って家族全員で応援してくれる由里子の家族をみて 由里子の様な家庭を築きたいと思った
本人次第ではあるが 涼やお腹の子に農業を繋げる事が出来たら素敵な事だと思った
その事が自分の姑に対する感情や小百合に対する感情…また好き嫌いや いじめの為に断ち切られ事は悲し過ぎると思った


小百合とは小百合の結婚が決まった頃から色々話をする様になり小百合の気持ちを理解して許し合えてから仲良くなるのに時間はかからなかった 

義母とは未だに わかり合えない部分が正直 多い…一生 わかり合えないかも知れない けれど 分かろうとしないでいるのと
わかり合おうとしているのでは 大きな違いがあって 以前とは違い
考えが違う時『なんで?ありえない💢』と思うのではなく…
どうして?義母がその様な考えになり
その様な言動をするのか?と思える様に なって来た
『先の事は わからないですけどね』と
静香は締めくくった
その話しに由里子は涙を隠さずに…
静香を抱きしめた

📖次回予告✏️
『静香ちゃん ありがとう!…』

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