【ふたつの誕生日】
『静香ちゃん ありがとう!…ずっと母や
小百合を見ていた私だから言える事だけど あのふたりはこの1年で変わった…
小百合の場合 結婚だけが理由じゃない!静香ちゃんの影響ね!あのこの目は本当に優しい目になった 感謝してるのよ』と
由里子もまた優しい眼差しで静香に語る

今日は淳もバイトが休みで 自畑の作業を朝の内に済ませて 布礼別(ふれべつ)の
祖母の家に一升餅を取りに行っていた
『お姉さん…どうにか 頑張れそうです 改めてよろしくお願いします』ふたりは微笑んだ
その時 居間から朋美の絶叫が…
『静香ちゃ~ん!涼君。うんち臭い ギョア~』
『ごめん!ごめん!今~行くね~』
夜に一升餅を2つに分けて涼の体の前後に背おわす まだ ひとりで歩くまでいってない涼には荷が重い 支えきれない
まして歩くなど無理…
手を貸してどうにか 立たせた
この頃 涼はまだ つかまり立ちとつたい歩きが やっとだった
いつもより 少しご馳走を作って 初手作りケーキを食べた
由里子は義母の帰りを待たずに帰って行った
『やっぱり嫁いだら嫁ぎ先が家なのよね…落ち着くの…』と言っていた
『静香ちゃんも いつか この家じゃないと眠れないとか 出先から早く帰りたい~そんな風に思える家に なったら いいね!』
静香もそう思える日がきて欲しいと感じた
そして そう思える家にするのは自分なのだと思った
涼の誕生日の後は…
早だし人参の間引きなどに追われる毎日で~

自畑の手があけば 由里子の家 淳はバイト 義父は森林会社 義母は青果会社と各々がんばる毎日である
4月28日 静香は22歳を迎えた
取り立てて何もしなかったが 仲間達から誕生日カードやヌイグルミ付きの電報が届いた
笑えるのだが 相談したかの様に全員文面が…
【静香!生まれてきてくれて ありがとう!】だった

世間はG.W…農家には無関係な事
静香は今日も やっと少し生え揃ったビート畑や人参畑の中~ビール麦の中~小麦畑の中に立っていた
ハイエースの後部座席を 涼の遊び場に
改良して 最近は同伴出勤~
静香が畑の端から帰って来るのをミニカーや積み木で遊びながら待っている
静香は車に戻ると車を移動して次の畝に進む
昼休みも以前とは違う
時には1時間半
時には2時間 ゆっくり取る
凄く気持ちの良いお天気の日には 草むらにハイキングシートを敷き
お弁当を食べた後 涼とふたりで空を仰ぐ…
1歳過ぎの男の子ならじっとなどしていない けれど涼は 静香と一緒に仰向けになる
『涼!気持ちいいねぇ~おなかも いっぱい~空がきれいだね』と話しかけると何やら返事をする
そんな事をしているので 時が経ってる事も忘れる
涼が時にはそのまま寝てしまって…静香も zzZ

風が気持ちいいから…と風のせいにする
気がついたら午後2時なんて事もある
まぁ~いいじゃないか
そう 急ぐ事もないと~名もなき大木が呟く
焦る事はないさ!とリス達が木の実を手に微笑む
みな この大地の生き物
時間など人間が勝手に決めた法則
太陽が昇れば 動きだし
沈めば寝たらいい…
そんなアバウトな世界なんだよ‼️
本当は~
こんな贅沢な刻を過ごせるのも この麓郷だから~
もっとゆっくり…もっとゆっくり…と
大木が…リスたちが静香を誘惑する
叱られたら 風のせいにすればいい…
とっても心地よい風だったから…
📖次回予告✏️
22歳の地図【こんにちは 赤ちゃん】
“拓よ!拓…自分の道は自分で切り開いて欲しいから…届け出は3人で行くよ!絶対に 淳と私と 涼で…今度は誰にも邪魔させない!”

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