朝になり涼も拓もごそごそしだしたので
静香は まだ眠りの中にいる淳を起こさない様に階下に下りた

丸ちゃんも雅恵(丸ちゃんの奥さん)も起きていた
丸ちゃんが電話で話している声が聞こえる
とっても張り詰めた空気が朝の光に照らされていた
静香は一瞬…平田の家からだと思った
“はい!朝方ですか…勿論ですよ!署名します!はい!ご苦労様です~”
盗み聞きするつもりはなかったのだが…
階段の途中で足が止まってしまったその時 涼が『ママ~』と叫んだ
雅恵が気付き…
『おはよう~静香ちゃん』と安心感いっぱいの笑顔を見せた
『おはようございます』
『涼君 おはようございます!おばさんと顔洗いに行こう~ウサちゃんにも朝の挨拶して来ようか?』その誘いに涼は大喜びで ついて行った
静香は拓を抱いて丸ちゃんのいる居間に入った
『おぅ!おはよう~眠れたか?』
『おはようございます…知らない内に寝てました…結構図太いのかも…』
ふたりは笑った
一瞬 間が空いた
静香は拓のオムツを交換していた
その時 丸ちゃんは いずれ耳に入る事だからといって話し始めた
『南の石黒さん 知ってるベ~石黒さんの母さん、親父さんの頭 カチ割って 殺してしまったわ…』
日常の出来事を話すかの様にストレートに話す丸ちゃんの言葉に静香の手も心も
震え停止した
そんな話はどこか都会の出来事だと…
理解出来ずにいた
丸ちゃんは石黒一家を知っている静香に
耳を塞がずに現実を聞く様にと話を続けた
昨晩 南麓郷地区の寄り合いで麦刈り作業の手まがい順番の話で集まり酒も酌み交わしていた
石黒の親父さんは酒をたらふく呑んで帰宅した
石黒の長男夫婦はわけあり 嫁さんの実家で暮らしていて 長男だけが農作業に石黒に通っていた
その理由とは…
親父さんが酒癖が悪く 酒を呑むと嫁さんに ちょっかいを出す
その程度をある日越えてしまった
ある夜…いつもの様に
呑んでいた親父さんは酒の力に任せて
嫁さんの布団の中に入って来た
その夜 長男は不在でおばさんは婦人会の旅行に1泊で出掛けていて不在…
つまり石黒家には嫁さんと親父さんのふたりだけだった
麓郷でも有名な仲の良い嫁姑だった
それは静香も知るところである
石黒のおばさんは長男夫婦が出て行った事を悲しく残念ではならなかった
落胆は想像以上である
毎日 農作業に来るのは息子だけ…おばさんは元気がなかったと同じ南の農事組合長が話していた
また長男夫婦が家を出てから親父さんの
酒の量も増えた
寄り合いでも農家仲間に暴言を吐き 暴力を振るう おばさんは謝り歩く日々だった
また おばさんも被害者で 宅飲みしている親父さんに暴力を振るわれいつも顔は腫れ上がりいつも下を向いて歩いていた
組合長もどうにかならないものか?と動きだそうとしていた矢先であった
事件の夜 帰宅した親父さんは珍しくおとなしく寝ていた…
いつもより早く帰って行った石黒の親父さんは 珍しく問題行動も起こさず逆に胸騒ぎをおぼえた組合長が石黒宅に電話を入れた
『ありがとうございます…帰って来て直ぐに床につきました 寝てます…大丈夫です…』
組合長もその言葉に安心したという…
周りが止めても飲むのを止めず体格がよい石黒の親父さんに殴られては堪らないと
最近は皆 知らない顔をする様になっていた…
📖次回予告✏️
組合長には帰宅後 直ぐに寝た事を伝えたおばさんだったが…
真相は 無言でサンドバッグの様におばさんを殴り その後 力尽きた様に 床に入り寝た親父さん…

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