大御所へとなりつつある有吉は見たくない | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

先々週だったか、休日また例によって同級生のところのバイトに

いった。

夜、帰りの車の中のテレビで某若手男性アイドルグループのひとり

が画面にでていた。

「○○ー○○」というグループのひとりである。

離れた現場からリモートで他の出演者とやりとりをしている様子だった。

 

それを観た同級生がひとこといった。

「『○○ー○○』ってジャ×ーズだよね? この人全然かっこよくないじゃん!」

 

まったく同感だった。

これは嫉妬や僻みとかでもなんでもない。

不細工までいかないとしても、同じ男性目線でみてまったくかっこいいと

思えないのだ。

なんとなく少しの間観ていたけれど、とくにしゃべりが巧いというわけでも

なかった。純粋に平均レベルの男子という感じだ。

 

「オレもそう思う。てか、最近のアイドルグループってグループのひとりだから

なんとかそこに違和感なくいるけれど、単独でみたらまったくかっこよくない

男子って他にもけっこういるよね」

と返すオレ。

 

すると、友人が

「あれだね、ジャ×ーさんも(存命中は)けっこう高齢だったから、人を選ぶにしても

もうかなり目が悪くなっていたのかもしれないね」

と答えた。

 

笑いそうになったが、ちょっとよく考えてみればその可能性はたしかに

否定できないなと思えてきた。

輪郭や髪型だけで遠くから見ればイイ男というのはいくらかいると思う。

 

この○○ー○○のメンバーに限らず芸能界全体で捉えても、2枚目キャラで

あつかわれているが、「この男」どこがかっこいいの?というような男性芸能人は

多い。セット売りでの誤魔化しや、雰囲気だけ、などなど。

 

もちろん男性芸能人に限らず女性芸能人にも同じことがいえるけれど、

テレビの向こう側で行われている共演者によるちやほやされる具合と、

テレビのこちら側で観ている自分たちの「この人どこかかっこいいの?」

「どこがかわいいの?」という温度差がとてつもなく離れて感じることは

多い。

 

なによりもスタジオの演者が総出で2枚目として持ち上げているような

空気にものすごい違和感を感じる。演出だとしてもだ。

 

かなり昔、お笑い芸人のパンサーの向井がファンから王子様と呼ばれて

いたころ、サンデージャポンのゲストによばれ、案の定司会の爆笑問題から

「ファンの間では王子様と呼ばれている……」と紹介されていたが、

当時レギュラーだった西川史子だけがその紹介について、

「え~?この人そんなかっこいですかあ??」と何度もいっていた。

このときはテレビの向こうにいる西川史子に拍手を送ったものである。

スタジオだけの連帯感や空気で盛り上がるのではなく、しっかりと視聴者も

巻き込んでくれたなと。

 

今はこうやって事務所絡みやイメージの問題で美男美女という位置づけに

されているタレントに、外見や性格をつっこめる人が少ない。

 

昔はちょっといたのだ。

いくらか前の有吉弘行がそうだった。

 

プロポーションだけでもてはやされているグラビアアイドルをコテンパンに

貶したりしていた。

有吉は好きでも嫌いでもないが、そういう他のタレントがやっていない

ことをやるスタイルは爽快ではあった。

とにかく発信源不明の人気と評判をもつタレントについてヨイショしないのが

面白かった。

 

それが面白かった理由は芸能界ピラミッドにおいて、有吉のポジションが

ちょうど中間あたりにあったからだとオレは考える。

 

実績のないまったく無名のタレントがそんなことをいったら、生意気だとか

礼儀知らずだとかいうことで速攻芸能界から干されると思うし、視聴者からも

嫌われると思う。

そもそも無名にタレントにそのようなテレビ出演の場が与えられないのは

いうまでもない。

 

またピラミッドの頂上近辺、つまり大御所にいたとすれば、自分より売れていない

者や若手をいじるのはたとえバラエティの演出だとしても捉え方によっては

権力をつかったいじめ的に視聴者には映ってしまう。

単純に演出であっても、お笑いは下の者が自分より立場の強いものをディスったり

するから面白いのである。

まだ若いころのダウンタウン浜田が大御所につっこみを入れたり、はたいたり

していたように。

 

ちょっと前の有吉は今のような超売れっ子ではないけれど、オレらくらいの

世代には電波少年のユーラシア大陸横断ヒッチハイクで十分有名であり、

そのヒッチハイクでも半年間苦労し、また一度消えていた間も苦労していた

ということをしっていたから、オレらとしても「いいたいことをいえる資格ある中堅」

という認識であった。

 

だけど最近たまに有吉が出演している番組を目にすると、仲の良い芸人たちに

たいする扱いはそのままだけれど、やはり「かっこいいとされている」「かわいいと

されている」若い売り出し中の男女タレントにたいする触れ方はかなり丸く無難に

なってしまったように見える。

 

昔だったら容赦なく、かっこよくない男性アイドルには

「君、べつにイイ男じゃないから!」とか

若くてプロポーションだけがとりえのグラビアアイドルとかに

「おまえの体になんてキョーミねえよ!」とかくらいいってくれそうなイメージだったが

今そういうゲストにたいする発言とかを観てみると、

「あ~、ダメだよ、○○くん~、いい男なんだからそんなことしちゃあ!」

とか

「××ちゃん、大丈夫なのぉ??」

とか、

かなり毒を抜かれたヨイショが目立つようになってきてしまってように思える。

 

 

これはもう昔と違って、有吉が総合MCとかを務めるのが当たり前のような

ポジションとして定着してきているからだと思う。

 

ヒッチハイクの話題の勢いでだけで一発屋として活動していた猿岩石のころと違い、

ここまで自他ともに認めるような大物になってしまうと、猿岩石時代とは比べものに

ならないほどの業界人やタレントと接して、いろんな現場で仕事をともにしないと

いけないから、もうやたらと毒を吐くことはできなくなってしまったんではないかと

悲しくなる。

有吉は誰もが想像できないような苦労をしてきたけれど、決して芸能界の

大御所ではなかったから、数々の毒舌も許されたし、それが面白かったのである。

 

「かりそめ天国」では昔のそんな有吉がまだ生きているように映る。

スタジオゲストがいないからである。

基本仲がとても良いからこそだろうが、アンジャッシュ渡部についてはよく

冗談で悪態をついている。

あの渡部にたいする姿勢をジャ×ーズや、女性アイドルグループ、

雰囲気だけ2枚目の男性タレントとかにも同じようにやり続けてほしい。

 

そういえば、当時まだ独身だった某女性タレントに冗談で「いきおくれ」というあだ名を

つけたら女性タレントがマジで泣いてしまい、楽屋に謝りにゆき、その後共演NGに

されたというようなエピソードも怒り新党時代に笑いながら話していたのを思いだした。

タレントとしての有吉にはいつまでもそういうやや強めの毒があるポジションでいて

欲しいと個人的には思う。

 

でも芸能界に限らず、ステージがあがればあがるほどむやみに人をいじれない立場に

なるのかなあとは痛感する。

もしオレが有吉の立場だとしてもあそこまで各局から重宝されてしまったら、やはり

ヘタに力になる事務所のタレントとカイジれなくなるかなと考える。

 

ポジションバランスって難しい。

人気者をユーモアまじえに揶揄するにしても、自身が実績ナシだと単純に生意気な

礼儀しらずだとされるし、逆に自身がそれなりの地位にいたら上からのハラスメントと

して捉えられてしまう。