なんだか今は石原良純と長嶋一茂がブレイクしているらしい。
毒舌キャラという位置づけで。
ふたりともとくに好きでも嫌いでもないし、腹が立つわけでもないの
だけれど、その毒舌キャラで売れているという部分にはなんとなく違和感がある。
これまでの毒舌キャラの定義っていうのはだいたい下積みが長かったり貧乏な
家で育ったりしてきたいわゆる苦労人だったイメージが強い。
だけど、良純と一茂はいってみればボンボン。
もちろん2世には2世なりの悩みや、過剰な期待などのプレッシャーなども
背負ってきただろうというのは認めるのだけれど、それでも双方ともに
親が有名だっただけに、派手な露出はなかったにせよ、かなり初期のほうから
名前は世間に知られていたようなと記憶している。
なので、ふたりが語る番組をまともに観たことはないのだけれど、たまに誰かの
番組にでて叫んだりしているのを聞いてもあまり説得力を感じなかったりする。
でも苦労人や大御所が毒舌キャラで続いてきただけに飽和状態になって、製作者側も
視聴者もストレートに正論っぽいことをいう毒舌キャラよりも、多少のおバカ要素が
入ったコメントをする方に新たなベクトルのニーズを求めてきたのかもしれない。
知名度はある良純と一茂だが、モノマネの対象としてはかなりニッチなキャラに
当たると思う。
でも、そんなふたりをマネているのがモノマネ芸人の神奈月である。
数年前からその目のつけどころが他と違うなあと思っていた。
神奈月って一番はじめにテレビにでたときはまだモノマネ芸じゃなかったと思う。
オレに記憶がどこかですり替わっていなければ、はじめて観たのは片岡鶴太郎が司会を
やっていた夕方の番組の素人が芸を披露するコーナーだったはず。
Tシャツに海水パンツ姿ででてきて、いきなりくるっと背を向け海パンをクイッと
オシリに食いこませ、その海パンに横から割り箸を差し込んで、おケツの筋肉で
バキッ!とへし折るというお下劣芸で画面に登場した。
それが会場でウケて、結果その回で優勝し賞金を獲得したのだけれど
司会の鶴太郎が大爆笑しながら、
「オレ、こんなケツ男に賞金やりたくねえよ!」
といっていた。
モノマネは一切してなかったと思う。
その後、ちょくちょくテレビに登場した際はモノマネを披露していたが、どちらかと
いえばモノマネというよりも形態模写芸人という印象。
本人の動きやクセを大袈裟に演じて笑いにもってゆくような芸風。
声などはあまり似ていると思わなかった。
それからすこしたったあとは形態模写よりもモノマネ寄りの芸になった印象だが
なんとなく大雑把といったところ。
まだどこか形態模写の名残が感じられた。
だけど、萩原流行のマネあたりから、だんだん大雑把から本格的になってきた
ように感じた。
「顔」も「声」も「しゃべり方、動き方」もすべてがひとつにまとまって似てきていて
驚いた。
昔はとりあえず動きを大袈裟にマネしたり、メイクやコスプレやカツラの小道具の
勢いでモノマネしている位置づけだったのに、今ではもう完全に「本格派モノマネ芸人」
として番組制作サイドからも扱われている。
意識している視聴者の声をあまり耳にしないが、これについてオレはけっこうすごい
ことだなあと神奈月を見直している。
そのへんの講師や教育者がよく
「自分にできることやその範囲をすこしずつでも広げていけばなんでもできるようになる」
とかいった類の教訓を口にしている。
そういう偉そうな肩書の人たちがそんなことをいってもそれを信じようと思わないけど
神奈月の芸の軌跡をみていると、たしかにもしかしたらなんでもできるようになってゆくのかな
と珍しく考えたりもしてみた今日このごろである。