【祝】日本ボロ宿紀行 ドラマ化 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

年末年始のテレビ番組構成はやはり特別ドラマや映画の地上波放送が

目立っていた。

 

暮れや正月は日本的な匂いが漂う空気なこともあり、それにあわせて

か映画や再放送含むドラマにおいて横溝正史の金田一シリーズの放送が多かった

気もする。

 

別記事で書くと思うので今ここでは詳しく書かないが映画の「八ツ墓村」もやっていたし、

NHKのBSでは「獄門島」のドラマの再放送もやっていた。

そしてクリスマスにはドラマ「犬神家の一族」。

 

年末ぎりぎりの日ならともかく、まだクリスマスというお祭りの真っ只中に「犬神家」

みたいな作品をやるフジテレビの感覚もおどろいたが、横溝作品じゃないけれど

元旦の夜から地上波で映画「HK/変態仮面」(少年ジャンプ連載漫画原作)を地上波

放送するtvkにも驚いた。

改めてしったけど、西郷どんと、パンツ被っている変態は同じ役者なんだな(笑)

 

で、話はクリスマスに放送していた犬神家の一族なんだけど、観ている限り、ロケ地

などは忠実に1作目と同じ現場だったり、アレンジして違うところになっていたりした。

 

冒頭で金田一が歩きながら登場するシーン、

あの街のロケ地は1作目の映画と異なり、長野県の奈良井宿が現場になっていた。

作品の中で事件が起きた架空の街「那須市」とはややイメージが異なりはするが、

雰囲気的に奈良井宿があっていたというスタッフの気持ちは理解できるし、オレ自身も

奈良井宿へはいったことがあるので、その風景をまたみることができたのはちょっと

嬉しかった。

 

それともうひとつ、あの薄味となったリメイクの中で評価できた点は、金田一が逗留して

いた「那須ホテル」のロケ地が、1作目の映画とまったく同じ望月宿の「井出野屋旅館」

だったことである。

 

今は亡き市川崑監督が数年前にも映画で「犬神家」をセルフリメイクしたが、そのときの

「那須ホテル」は1作目と異なり、スタジオに再現されたセットだった。

 

製作の企画があがった当初は、前作同様に同じ宿を「那須ホテル」としてロケ地にする

予定で、クランクイン前に実際スタッフがロケハンにもきたのだが、市川監督がもう高齢な

うえ、体調もあまりよくなく、遠い長野までロケに来るのが厳しかったため、近場のスタジオの

ホテル内を再現したというエピソードはたしかに聞いた記憶がある。

 

そのイメージを引きずってしまってか、今後リメイクがあっても、もう1作目の宿がロケ地

として使用されないと思い込んでいたふしがあった。

だが先日のリメイクでははじめの映画と同じように使用されていた部分はよかった。

外観が映ったときには、ハッとした。

 

若き石坂浩二や島田陽子がでていた映画の「犬神家」は、ずっと昔にもたぶん一度みて

いるんだろうけど、そのころはあまりロケ地とかそういうことに興味は向かなかった。

だけど、石坂演じる金田一が宿泊した那須ホテルは、個性的な造形の宿だなあというのは

ぼんやりと感じていた。

 

それからずっとあとになり、同僚から「ケンさんは好きそう」だと教えられたサイトの

画像の中で改めて那須ホテルに再会する。

そこでそのロケ地は「井出野屋旅館」という名の長野にある旅館だとしることとなる。

 

そのサイトとは、このブログのブックマークにも昔から登録しているが「日本ボロ宿紀行」。

書籍化もされている。

 

 

 

著者の上明戸聡さんは、各地のレトロな宿に泊まりそのルポを書いている。

かつてアメブロでも別名でレトロ系の記事を書いておられてて、1、2回ではあるがそこで

コメントのやりとりをさせていただいたことがあった。

 

そんな上明戸さんのサイトと書籍の中で、犬神家で金田一が泊まったホテルとして

長野の望月宿が紹介されていたのである。

 

それをみてから改めてずっと訪問したいと焦がれていた。

スポーツカー好きの中学生が、おこずかいでは絶対買えないスポーツカーに憧れ

すぎるあまり、毎晩雑誌に載っているその写真を見つめつづけるように、サイトで

井出野屋旅館の昔ながらの佇まいや部屋の様子を見続けていた。

 

そして、しばらく経ってから強引に時間と費用をつくり、ひとりで現地まで泊まりに

いったのだ。

宿に到着して、ガラス戸をあけたとき目の前にあった那須ホテルそのままの光景には

感動せずにいられなかった。

 

このブログではファンの人も多い沢木耕太郎の「深夜特急」を読んで刺激をうけ、

海外にすっとんでゆく若者のように、オレも上明戸さんのサイトや書籍をみて、

「この宿、この温泉にゆかずにいられない!」

と思って出向いた場所のひとつがその井出野屋旅館。

もうひとつが日帰り入浴だが、熱海の福島屋旅館である。

 

そんな「日本ボロ宿紀行」が、テレ東の深夜枠でドラマ化されるらしい。

ご本人のブログをのぞいてみたら、久々更新されててそれが告知されていて

驚いた。

 

 

 

告知をみたところ、おそらくあのグルメドラマ枠。

「孤独のグルメ」「ワカコ酒」「忘却のサチコ」などやっていた時間帯。

 

ロードムービー調のドラマ仕立てにするようである。

 

サイトと書籍で紹介された宿がロケ地となってストーリーに織り交ぜながら

紹介されるような構成だと思われる。

 

これまで自分がいった宿が映るかもしれないという楽しみがある。

また、これからゆきたくなる宿の参考にもなる。

 

ただ、同時に懸念されるのは秘湯の俗化と同じように、知る人ぞ知る穴場的な

ひなびた宿だったのに急にミーハー客が押し寄せるようになってしまう可能性もあること。

それだけがちょっと心配。

 

ボロ宿紀行の件とは別に、昔ながらのレトロな雰囲気や歴史があるからといって、

それが素晴らしい経営をしているとは限らない。

それで足元を見て、通常のホテルよりイイ料金をとる宿もある。

そういう宿がブームに便乗してしまうのもやや不安。

 

でも、これらはボロ宿を愛しているからこその不安である。

 

オレはボロ宿が好き。

ボロとかいわないまでも、家庭的でこじんまりとした宿が好き。

 

このブログでも何度も書いているが、基本ひとりで温泉旅行にいったらホテルには

泊まらない。

家族経営の小さな宿がいい。

 

井出野屋旅館がそうだったように、風呂が温泉じゃなくとも宿の構造にそれなりの

雰囲気があればそれでよい。

 

周囲に観光スポットがなくとも宿に情緒があればそれでいい。

逆に周囲に惑わすものがない一軒家のほうが、宿の情緒が際立つというものだ。

 

そういうわけでこのドラマ化においては喜びと不安がそれぞれ存在するけど、

それでもやはりこういう世界観に目を向けられたということについては

ひとつの嬉しい事実であることに違いない。

 

オレも自分の世界観をもっと発信し続けていれば、いつどこでどうなるか

わからないな、とは思わせていただいた。