イニシエーション・ラブ | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

Side-A


 

 

 

 

Side-B

 

集合住宅のひとり暮らしになってからは1度も利用したことはないが、もし店屋物の出前を頼んだら

返却時は器をしっかり洗って返すくらいの几帳面な性格ではあると自覚している。

 

だけど中学生時代、たまに急いでいたり、ど忘れとかしたりして、近所のレンタルビデオ屋で借りた

ビデオテープを巻き戻すの忘れたままレジに返却したりして、気づいた店員から、

「お客様、次回からは巻き戻してのご返却お願いいたします。」

といわれてしまったことも、1、2回ほどあった。

 

「巻き戻し」……

音楽においても映像においても、今の時代この言葉はもはや過去の無形文化財のような言葉だ。

だけど昔は当たり前だった。

 

映像はビデオテープからDVD,ブルーレイへと移行し、音楽はカセットテープからCD、DLへと移行していった。

 

カセットテープはCDに比べると厚みがあるため、かさばったりしたが、A面が終わったら一度取り出して

B面にひっくりかえしてまた再生するという手間がある意味で愛敬であり、時代の味があった気がする。

 

 

ごく当たり前のことだが、収録している曲の多い2枚組にアルバムとかは、1枚目を聞き終えたら、それを

取り出して、今度は別の2枚目を聴く流れである。

つまり、2枚目を聴きに入っている時、1枚目はまったく稼働しておらず完全に休んでいる状態である。

 

だけどカセットテープのA面B面の再生はちょっと異なる。

A面の曲が流れている間、B面も動いているのだ。

A面の曲が終わり、ひっくり返してB面の曲が流れている時もA面は動いているのだ。

 

‘曲が聴こえてこないだけであって、再生されていないほうの面も同時にテープは動いている’

と、まあここではそれだけいっておこう。

 

先日、映画の「イニシエーション・ラブ」を観てみた。

 

 

 

 

結論から先に書くと、面白かった。

 

オレの場合、先に原作を読んでいたので、世間やメディアが騒いでいたように、このテのトリックモノは

どう転んでも映像化は不可能だろうと思い、それを確認する意味も含めて観賞してみたのだが、

堤監督はじめ製作スタッフにたいして、「お見事!」「してやられた!」のひとことに尽きる。

 

ここまで原作の世界観を壊すこともなく、映像化にあたってまったく異なるストーリーへと変えてしまうこともなく、当然オチも変えてしまうことなく映画化したのは素晴らしい。

 

長い作品の中でまさに‘一点’だけを原作からアレンジしただけで、完全に原作に忠実な映像作品へと

変えている。

 

まだ観ていない人、これから観ようと考えている方もたくさんいいると思うので、今なんとかネタバレにならないよう、細心の注意を払い、作品の核となるトリックについてかなり遠回しに説明している(汗)

 

原作、映画に共通する演出にからめて、今回の記事も前回書いた原作小説レビューのリブログを

A面、今書いている最新記事をB面と設定させてもらったが、B面の冒頭で書いたカセットテープが

映画本編の冒頭映像にも映り流れる。

 

このカセットテープのシーン、なんでもないようなシーンであるが実は……

いや、感性が鋭い人はなんとなく感じ取ってしまうかもしれないから、いうのはやめておこう(笑)

 

この作品における時代背景はカセットテープが全盛である昭和なのだが、それも作者がなんとなく

懐かしいから昭和にしたのではなく、‘昭和じゃなければならなかった’のだ。

厳密にいえば平成初頭でもいい。

だけど、カセットテープはなければならなかったのだ。

もし、映画を観てもこの意味が不明だったら、そのあとに小説を最後の解説まで読んでもらえれば

すべてわかる。

 

ストーリー解説に関しては、もう本当に原作に忠実でほぼ変わらないから、ここでまた書くと

小説読んだ時に書いた記事と重複するので、記事冒頭の‘A面’のリブログ、あるいはクリック

してアマゾン解説で(笑)

 

でもまあ、せっかくなんでちょこっとだけ所感でも。

 

ヒロイン役といえる前田敦子。

観ていてなんとなくギコチナイ印象だったんだけど、もしあれが不器用で純粋な女の子としての

演技だとしたら、すごいのかもしれない。

 

そして、前田敦子演じるマユの彼氏となるタッくん。

これまた原作のイメージを損なわないキャストなんだけれど、映画における‘Side-A’に出てくる

最初のタッくん。

ビジュアルだとか体形だとかじゃなく、そのダメっぷりと、ダサさを見て、まるでオレじゃん!って

親近感を持った男子はけっこう多いんじゃないかね。

 

甘酸っぱいラブストーリーが最後に一転してミステリーに変わる衝撃。というフレコミは既に映画会社がいっているから問題ないんだけど、とにかくこの作品は小説も映画もヘタの踏み込んだ記事を書けない

作品なので、とりあえずこのくらいに。

 

でも、最後にひとつだけ。

 

この作品は本当におススメなのでまだ観ていない人にはとくに観てもらいたいと思う。

とくにオレみたいな「美男美女が付き合うラブストーリーなんて興味ないもーん!」という

タイプの人には。

「ああ、こういう作品っていうのがあるんだ!」と感心はすると思う。

 

しかし、小説も映画も両方観た者の意見として、まだどちらも観ていないという方には

‘自分には活字と映像とどちらが相性いいか?’

ということをじっくり考えてから、映画を先に観るか小説を先に読むかを慎重に選んで頂きたい。

 

いつものオレなら、「とにかくまずは小説を読め!」といっているところだが、今回は皮肉でも嫌味

でもなんでもなく、純粋にそう思う。

 

活字を追うのが苦手!!っていう人は、ヘタにチャレンジしたりインテリぶったりせずに、素直に

映像から入るべし。

 

無理に活字で読んで、中途半端に仕掛けを理解してしまったまま読み終えたあと、映像を観ても

驚きや感動が半減するリスクがある。

 

本を読みなれていて、とくに推理モノとかはぜったいに1ページもとばさないで読むという人は

小説から入っていいと思う。

 

この作品は面白い。

だから、小説⇔映画の順番をヘタに間違えて観賞した結果、「よくわからない」「つまらない」

という意見が噴出するのは避けたい。と、制作スタッフでもないオレが危惧している(爆)

 

ただ、個人的な見解を書くと、小説も映像作品にも造詣がある人間が両方観たとしても、順番に

関係なく、あとから味わった作品のほうは途中で興味がちょっと薄れる。

 

それは作品の質が悪いからではない。むしろその逆。

ともに素晴らしい作品であるうえ、そういった仕掛けのある構成だからこそ避けれない流れだから。

 

なので、‘騙された’と思って是非一度、ごらんになってみて頂きたい。

映画が先か?

小説が先か?

 

 

今回の記事で書いたカセットテープの件の意味もきっとわかることでしょう。