百田尚樹「輝く夜」他 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

         

輝く夜 (講談社文庫)/百田 尚樹
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           このコラムは、著者が独自で興味をもった

           件に基づいて、著者が自らの身を野に放ち、


           世のため、人のため、公序良俗、安寧秩序を


           それほど気にせず、この世のあらゆる事どもを


           徹底的でもなく、調査および評価する娯楽ブログ


           である。

           

           (今回の作者に合わせた某番組風w)



人間は誰しも非力だと改めて感じ、しょせん誰も助けてくれないという気持ちになる時期は

誰にもあると思う。オレもある。何回も。


そんな精神状況の時は、街中を歩いていて、歩道の真ん中であおむけにひっくり返ってバタバタと

もがいているカナブンや蝉をひろって植え込みに逃がしてやるように助けたくなる。そのまま放っておいたら無神経な歩行者にプチっと踏んづけられそうなカナブンや蝉。


もうなんというか、「藁にもすがる」ではないが「虫にもすがりたい」という気持ちにすらなるのだ。

もちろん、選挙権を得てからもう15年以上たつような年齢になって、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」や

「鶴の恩返し」のように、助けたカナブンや蝉が、美しい人間の女性の姿になって、恩返しをするために。夜中にオレのワンルームの部屋に来てマンションの扉をノックするかもなんていうファンタジーなぞ夢見ていない。


これが往年のドリフのコントならば、加藤が昼間に弱っている蝶を助けて

その日の夜、助けられた蝶が人間の女性に姿を変え、加藤のもとに御礼に現れるというケース。

(人間化した蝶の役は松本伊代などのアイドルが多い)

それを見て羨ましがる志村もマネして何か虫を助けようとするが、弱っている昆虫が害虫っぽい

のばっかしかおらず、やむをえずそれを助ける。そしたら、その虫も夜中に志村のもとを訪れるが

演じているのは変なメイクした研ナ○コとかっていうこともある。


実際に何かオレのためになる恩返しをしてくれるなら、害虫を助けてもいいし、現れる精が

研ナ○コだってかまわん。

でも虫を一匹助けたところでなにも見返りがおきないのが現実なのだ。


それでも、本当に心が弱っている時は一日一善ではないが、なにかいいことをして、その見返りを

期待したくなる。

虫が助けてくれるなんて思わん。でも、虫を助けた自分の姿を、神さまか、どこかの優しい人かが

見ていてくれたら、その人(神)経由で何か幸せを与えてくれるんじゃないかと期待したくなる。

そんな意見に共感してくれる人、いるだろうか? いねえか!(爆)


今回、紹介する百田氏の本も、いくつかの短編を集めた話だが、いい人をメインにとりあげた

涙が出る話ばかり。


すこしベタで現実離れはしてるものの一番初めの話が好きだった。


クリスマスイブの夜に、七年間働いた会社をリストラされた主人公の女性…

自分自身の厳しい立場でありながら、困っている人を放っておけない彼女は、

町を歩いている途中にみたホームレスの男性を助ける。

それによって彼女に訪れたモノとは……


情報元は忘れたし、事実だったか創作だったかも忘れたが、昔こんな話を聞いたことがある。


多くの人が行き交う歩道の端に、とある汚らしい格好のホームレスがいた、

周囲にはオシャレなスーツで着飾ったビジネスマンや、一流企業のOLがたくさんあるいているが

誰もそのホームレスに関心をよせす相手にもせず、むしろ汚物を見るような視線を投げて無視しながら、通り過ぎていった。

ある時、ひとりの貧乏な男性がその道を通った時、ホームレスに気付き、、自分もおカネは無いだろうと思われるのに、懐から小銭を出してホームレスに渡し、励ましの言葉をかけた。


数日後、その貧乏な男性はその通りを歩いている周りのだれよりも出世して、おカネ持ちになった。


貧乏男性が助けたホームレスは、実は世界的な大企業の社長だった。

好奇心旺盛で人間の本当の部分を見極めるのが好きな社長は、高層ビルの高いところからなんかより、低いところでいろんな人間の本性や反応を観察することが好きで、週に数日、わざと汚い

格好でホームレスを装って行き交う人々を観察していたのだ。

ホームレスのふりをした社長は、行き交うスーツの人々を見て、誰もが身なりはかっこつけてる

のに、困った人を見てみぬふりをするということを知った。

だけど、そんな中、唯一、そんな自分を心配して声をかけてきたのが、その貧乏男性だった。


社長は、そんな男性の中身を評価し、また感動して、自分の会社に入れた。

そして男性の人生はバラ色になった。


というお話。


出来過ぎてはいるし、よくある話でもないけど、そういう世の中があっていいと思う。

百田氏のこの短編集はそんなようなことを連想させる話が数話つまっている。


正直、オレは電車の中やバスの中で本を読んでて、涙がこぼれそうになり

「やばい!」と思って耐えたというような本を読んだことはまだないのだが、

今回はなんとなくタイミングやツボの問題もあって、電車の中で涙が「ブワッ」とあふれそうになり

これ以上は‘継読不可’と判断し、本をパタっと閉じた。


読んだ人全員がという事は無いと思うが、くる人はくる作品だと思う。

けっこうおススメ。


ちなみに百田氏に関しては、現在、都知事選関連の発言にて物議をかもしているが

作品と発言はまったく別のものとして考えているので、今回紹介させていただいた。


あと、話題になっている「海賊と呼ばれた男」とか言う本に関しては、批判はしないが

どちらかというと、「偉人伝」「ビジネス関連」の色が強いイメージを受けるので、批判はしないが、

小説とはちょっと違うかなと思うので読んでいないのであしからず。



今週のもう一冊。

芥川賞作家、吉田修一の「春、バーニーズで」

春、バーニーズで/文藝春秋
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ご当地小説というのもけっこうあって、これも我が地元寄りの作品だと知って読んでみた。

スタジオジブリの「耳をすませば」と同様、この小説で主人公が住む町もオレにとってなじみ深い

「聖蹟桜ヶ丘」だ。


ただ、作品としては正直な個人の感想を言うと、ちょっと普通だったかな。

吉田修一は他に「初恋温泉」も読んだけど、一番良かったのは「さよなら渓谷」かな。

映画は見とらんけどね。