ここ最近、ミシマさんのほうへ浮気気味になっており
「あんまりソワソワしないで~♪」と言われそうなのでまたダザイズム回帰。
ずっと前に図書館のリサイクル本からもらってきたまま他の本ばかり読んでて
ちょっと前にやっと読んだ。
そういや、もうすぐ命日の桜桃忌ですね。まだ行ったコトないけど。
今回はこの本。実は恥ずかしながら今さらだが。
- 斜陽 他1篇 (岩波文庫)/太宰 治
- ¥441
- Amazon.co.jp
オモシロイじゃん。「人間失格」よりももしかしたら好きかも。
敗戦直後の貴族家庭の人間のそれぞれの崩壊の物語で
滅びゆくものの哀しくも美しい姿を描いた作品。
ネタバレではないがところどころ印象に残った部分を引用してくから
これから読みたい人はあまり読まないでねん。
いや~、ひと昔の文学作品だけどそんなに難解でなくてしっかり読める。
そしてホントにかなしいながらもなんかキレイだ。
これを書いてる時は太宰本人曰く、半狂乱状態だったらしいけど。
なんかねえ、うまく言えないすけど、その登場人物の堕ちてゆくさまがまるで
砂時計の砂が上から下へサラサラと落ちてゆくような静かでせつない堕ち方に
見えるのよねえ。
この話の中に主人公の弟が出てきて、のちに自殺しちゃうんだけど、
残した手記に書いてることがひとつひとつ共感できるんだ。
これが太宰文学の醍醐味
以下引用
「論理は所詮、論理への愛である。生きている人間への愛ではない」
→少年法、多数決主義、競争社会肯定を連想したな。
「僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を早熟だと噂した。僕がなまけものの振りを
して見せたら、人々は僕をなまけものだと噂した。僕が小説を書けない振りをしたら
人々は僕が書けないのだと噂した。(中略) 僕が冷淡を装って見せたら人々は僕を
冷淡なヤツだと噂した。けれども僕が本当に苦しくて思わず呻いた時、人々は僕を
苦しい振りを装ってると噂した。
どうも食い違う。結局、自殺するよりほかに仕様がないのじゃないか。このように苦し
んでも、ただ自殺で終わるだけなのだ。と思ったら声を放って泣いてしまった」
うおおおおお。感受性直撃。これに共感得る人多いでしょう?世間の的得すぎ!
「世間で良いと言われ、尊敬されているひとたちは、みな嘘つきで、にせものなのを
私は知っているんです」
「僕の自殺を非難し、あくまで生き伸びるべきであった、と僕になんの助力も与えず、
口先だけでしたり顔に批判する人は、陛下に菓物屋(くだもの)をおひらきなさるよう
平気でおすすめ出来るほどの大偉人にちがいございませぬ」
すごい・・・太宰に対して言いたいことを文学的に代弁してくれてるという人間が多い
のがとっても感じることが出来る。
「陛下に菓物屋」という例えのブラックさも上手い。
日本は大偉人が多いんだなー。無神経でキレイゴトならべる輩、多いもんなー。
他にも「死んでゆく人は美しい」とか「今世の中でいちばん美しいのは犠牲者」
とかいう表現もあるけど、なんかわかるなあ。
たしかにそうかもね。
「死」を覚悟しそれに委ねる人間て、もう目標とか希望という名の欲を追わないし
現世にしがみつこうとする悪足掻きもない。
そこにあるのは 0 (ゼロ) なんですよ。要するに「無」
太宰はそれを言いたかったのかなあ。
あとね、なんだかんだで生き残る人間てズルくて汚いヤツで、正直なヤツがバカみてるでしょ。
それにかんして「美しいのが犠牲者」って警告したんじゃないすかねえ。違う?
いやいや久々に脳ミソにビッグな衝撃と感動を受けた作品読みましたわ。
まだ読んでない人、これは絶対読んだほうがいいっす!
物語としても楽しめる。地方にある斜陽館も行きたくなってきたねえ。
今夜のもう一冊はコチラ。同じく今さらでスマンという本。
『雪国』
- 雪国 (角川文庫クラシックス)/川端 康成
- ¥340
- Amazon.co.jp
川端さんのはねえ、ずっと前に「みずうみ」読んだけど、ちょっとハマれなかったのよね。
今回違うのでリベンジ。こちらはなんとか理解できたつもり。
しかし、このオッサンの芸風も一歩間違えたら「ストーカー」とか「ロリコン」なんだけど。
文学と俗物というか反モラルのボーダーってビミョーだな。
ホントはカミュの「太陽の賛歌・カミュの手帖」って本が面白くて、それをもう1冊の
紹介にしようと思ってたのにアマゾンに画像がなかったんで「雪国」に差し替えました。
今夜は文学ナイトでござんした。
それでは ばいちゃ。