出版契約の更新拒絶に法65条3項にいう「正当な理由」があるか否かが争われた事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

著作権コンサルタントが伝えたいこと

著作権やコンテンツビジネスに関する法律相談をお受けしています。
http://www.kls-law.org/
無料メール相談もお受けしています。
http://www.kls-law.org/klsc-ameba.html

出版契約の更新拒絶に法65条3項にいう「正当な理由」があるか否かが争われた事例

 

▶平成23年11月24日 大阪地方裁判所[平成21(ワ)20132]▶平成25年8月29日大阪高等裁判所[平成24(ネ)12]

2 争点2(本件更新拒絶に正当な理由があるか等)について

(1)ア 本件出版契約3条の規定は,本件出版契約の終了時期を平成21年12月31日と定めるとともに,契約当事者双方から異議がないときは,さらに当初の合意期間である10年間の期間を延長する旨を定めているところ,契約当事者である被告P3は,上記終了時期の前である平成21年12月11日頃,原告T機器に対し,本件出版契約の更新について異議を述べる本件更新拒絶をしている。

イ ところで,本件出版契約は,上記の記載によれば,共有に係る著作権の利用契約であるということができるところ,著作権法65条2項は「共有著作権は,その共有者全員の合意によらなければ,行使することができない。」と規定しているから,本件出版契約3条の更新条項に照らした場合に合意に対する消極的意思の表明とでもいうべき,著作権の共有者のうちの一人である被告P3がなした本件更新拒絶は,被告P3が共有著作権の過半数に達しない持分を有するにすぎない者であるけれども,本件出版契約の更新を妨げる効果を持ち得るものである。

しかし,著作権法65条3項は,さらに「・・・各共有者は,正当な理由がない限り,・・・前項の合意の成立を妨げることができない。」と規定しているから,上記被告P3のした本件更新拒絶が有効であるといえるためには,その更新拒絶には著作権法65条3項にいう「正当な理由」があることが必要であると解される(なお,上記記載のとおり,原告P1,同P2,被告P3及び乙事件原告P4の有する共有著作権の対象が,本件検査用紙1ないし3については,質問項目以外のどの範囲にまで及ぶものであるかを必ずしも確定できているわけではないし,また本件検査用紙4については,原告P1,被告P3及び乙事件原告P4以外の共有者の存在がうかがえないではないが,少なくとも本件に現れた,これらの者が本件各検査用紙について著作権の持分権を有することは当事者間に争いがない。そして,本件出版契約の更新を拒絶したのは,被告P3だけであるから,本件においては,被告P3のした本件更新拒絶に正当な理由があるか否かだけを判断すれば足りる。)。

(略)

(5) 以上のとおり,被告P3らが,本件更新拒絶の「正当な理由」を基礎付ける事実と主張する諸事実は,いずれもそのような評価を基礎付ける事実としては不十分であって,これはすべての事実関係を併せ考えても同じである。

したがって,被告P3がした本件更新拒絶は有効なものとは認められないから,本件出版契約は同契約3条の規定により更新されて存続しているものと認められ,その結果,原告T機器は,本件出版契約に基づき本件各検査用紙を出版,販売する権利を有することが認められる。

[控訴審同旨]

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/